三つ葉は大空の夢を見るか それは、妙な依頼だった。
この国を治める魔術師(ウィザード)がお抱えの工作員(エージェント)ではなく、わざわざフリーランスの雲雀を指定しての依頼。
皺の刻まれた表情は笑みが浮かび、優しげな眼差しはローブを脱ぎ捨て普通の服を纏えばただの老人に見えただろう男は、だが国のために汚い事を裏でやってきた人間だ。
神の采配、などと崇められている人間がわざわざ自分を指定してきた。だが詳細は語られず、あるものを有るところに運んでほしいとだけ。
普通ならば蹴ってもおかしくない依頼だが、雲雀がそれを受けたのは報酬が破格だったことと、こういった依頼にありがちな協力者という群れを押しつけられなかった事だ。
指定の場に向かい、渡されたリングを支柱にはめ込むと目の前の柵が鈍い音を立てて開いていく。継ぎ目など一切見当たらなかった壁は立派な扉として雲雀を待ち構えている。
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