『E級』自分の家族は亡くなり、何もかも失ったというのに、未だに生きている。命をかけてゲートに潜る必要も無くなった。
覚醒していない人間は目の前で感染し、頭を失う。自我の無いモンスターは共食いを始めたりもする。
旬は覚醒者の中で最弱で、瓦礫の山に隠れて、息を潜めた。
「………っ」
声を震わせながら、目を瞑って涙を流す。這いずる音が消えると、旬は瓦礫から飛び出し、違う場所へ移るために全力で走る。その音でモンスターは旬の方へと向き直し、猛スピードで這いずってくる。
「くそっ……!」
後ろを向いていてはスピードが落ちる。旬は只管に前を向いて走っていると、見覚えのある男が不思議な姿で立っていた。
「も、最上さん!?」
「―――――」
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