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    wakaranai_99

    @wakaranai_99

    壁打ち妄想

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    wakaranai_99

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    ##文

    TSFモノコツコツ、コツコツ、硬い地面をヒールが鳴らす音。HELIOSのタワー内の職員は比率として女性スタッフは少ない。そして、大半が研究者でありヒーロー達との階層とは別だ。今期のヒーローは男性のみだったこともあり、それに拍車を掛けている。
     そんな中、トレーニングを終えたアキラはその音に女教官リリー・マックイーンを思い浮かべ身震いした。前述した理由の通り、考えつくのは彼女しかない。しかし、予想外にも異なる声が耳に届いた。

    「ブラッド~やっぱりヒール履くのって辛いなぁ…」
    「よろけるのならキースの腕に掴まっておけ」
    「えぇ……オレが?ディノは全体重預けてくるから重いんだよ」

    ……なんだ、あの三人か。安心したのかアキラの口から吐き出された言葉に緊張していた空気が軽くなる。あまりに自然に出されたディノの単語や、彼らの声音はアキラの頭には残らなかった。決して彼の知能に問題があるわけではない。身体を動かしたことによる疲労と自身のメンターの名前で早合点してしまった事が原因だった。
    それならば隠れているのも馬鹿馬鹿しい。むしろブラッドへ力を誇示したくなり、アキラは得意気に声を掛けた。

    「おーいブラッ、ドッッッ!?!?」

    アキラは思ってもいなかった光景に仰天した。目の前から歩いてきていたのは三人の見慣れない女性達。アキラと同身長ほどで見た目幾ばくか年上の、それにエリオスの制服を着ている。間違いなくブラッドを含めた彼らではない。そう分かると急に恥ずかしくなり、顔が熱を帯びてきた。

    「ひ、人違いでしたっ!すみません……」

    先ほど聞こえていた賑やかだった会話の様子も音を無くしていた。見知らぬ男が声を掛けてきたのなら当然だ。裏返った謝罪の言葉は静かな中でか細く響き、更に羞恥は増す。一刻も立ち去ってしまいたい気持ちでいっぱいになった。

    「ああ、待って」

    脱兎の如く逃げようとするも、薄桃色の髪をした女性が人畜無害そうな表情で手を伸ばしてくる。手首のアクセサリーが少し髪に触れた。ぎこちない足取りで近づきにっこりと笑いかけられ笑顔が可愛いと思ってしまったり。

    「トレーニング終わりかな?お疲れ様!」
    「ちょっ、」
    「頑張ってるね~よしよし」

    そう言ってわしわしと頭を撫でられる。困惑するアキラに反して強引な手のひらは止まらず、称賛の言葉と共に嬉々として撫で続けていた。
    自身を天才だと自称するアキラだが、年上の女性というのはやんちゃなシオン、鬼教官のリリーと偏ったリソースしか持ち合わせていない。女性の扱いは不馴れだった。
    止めろと言い出すことも逃げることも出来ず、ただ彼女のペースに巻き込まれている。

    「黙ってるけど撫でられるの嫌だったのか」
    「年上に慣れてねぇだけだよ。確かこの子のは怖ぁ~いメンターなんだって。ほら」
    「おい」
    「あはは、だから褒められ慣れてないのかな~。可愛い~~!」

    いつの間に側に寄ってきた彼女の友人なのか、ダウナーな雰囲気の女にアキラは肩を抱かれた。初対面だというのに近すぎる距離感。肘の辺りに柔らかい感触。着崩したシャツから肉の谷間が見えるのが無防備でパッと目を離した。
    あからさまに外方を向いたせいで二人ともニヤニヤと口元を歪ませているのが視界に入り、揶揄っているのだと認識する。思わず振り払って赤面した顔で叫んだ。

    「オイッ!あんたらオレのことバカにしてんのか!?」
    「いい加減にしろ」

    二人を静観していた女がアキラがキレたのを切っ掛けに拳を振り下ろした。ごつんという鈍い音にアキラはぎょっとする。

    「いてっ、拳骨は痛いって。ちょっと調子に乗りすぎたか……?まあ可愛がってるルーキーだもんなっ、怒るのも無理ないか」
    「つまんねぇの。どうせ直ぐバレるもんだしいいじゃねぇか」
    「はぁ……つまらん嘘をついて虐めるな」

    冷ややかな光が消え、顔にかかっている髪を耳にかけた。

    「アキラ。突然の事で理解できるかはお前次第だが、長々と話すよりも論より証拠というものだろう。俺のIDカードで察しろ」
    「は?」

    呆然と目の前に見せつけられたIDカードにはBrad.Beamsの名が記されていた。第13期メンターリーダー、そしてアキラのメンターの名だ。カードの写真と黒髪ロングの女性を見比べる。キリリとした眉、アメジスト色の瞳は親戚と言われたら納得するレベルに似通っていた。
    しかし、根本が可笑しい。身体を改めてまじまじと見てみるまでもなく曲線的な女性のシルエットをしていて声も大人びた色をしている。それにアキラを馬鹿にしてきた二人の仲間を信じきれるわけがなかった。
     むすっとした顔を直すことなく大口を開けて話した。

    「……流石にバカにしすぎだろ。こんなもん、信じられる訳」
    「オスカーに確認させたらどうだ?」

    もう一人のメンターの名が出てきた事でアキラは固まった。だんだん真実味を帯びてきた不安に口からまたしても「へ?」と間抜けな声が零れる。蚊帳の外にいるアキラを尻目に三人は乗り気だった。

    「……キースにしては名案だな。効率的だ」
    「驚いてんじゃねーよ。あーあ、真面目に提案したのに小言付きなんだもん」
    「じゃあ行こっか!レッツゴーゴー!」
    「そうだな」
    「ええ~聞こえていらっしゃらない……?」
    「あ、肩貸して」

    目の前で繰り広げられる茶番をボーッと眺めていると話が終わったのか自称ブラッドだと言う女がヒールをタンと鳴らした。

    「アキラ、行くぞ」

     サウスの部屋に突撃したアキラ含む四人はびっくりした様子のオスカーから出迎えの挨拶を受けダイニングテーブルの椅子に着席する。その言葉にウィルは動揺せざるを得なかった。幼馴染みに女性が三人。呼ばれた人物などいないのだ。

    「すみません。オスカーさん、これはどういうことですか?」
    「俺からもよろしく頼む」

     事象を説明するため助力を求めるブラッドの指示を了承し、状況が飲み込めないルーキーに慌てて話しだした。──性別は一定期間変化すること。サブスタンス能力を持つことの副作用だということ。
     そのためお前たちも起こることだと。にわかに信じがたいことにいきなり説明されたウィルはおろかアキラも頭を抱えた。噛み砕き、伝え、一部を補足しつつ。二人は何とか理解した。……全く納得はできないが。

    「ありがとうございました。でも、それを公にしないのはどうしてですか?」
    「特に悪影響がないからだ。ヒーローに成らなければ関係がなく、インパクトはあるが流布する意味がない」

     そうと言われればとウィルは頷いた。何か質問はとブラッドが問うと、不安そうに自身もそうなることへの不安を口から吐露する。至極当然の悩みに一息いれた。勿論エリオス側からルーキーに向けての説明会は準備している話をすると僅かながら安心したようだった。

    「式典では説明しづらいからな。今回アキラ君に偶然話すことになっちゃったけど、俺らもフェイスとジュニアに説明する時の参考にするよ」
    「周りの人間が女になって面白いだけだから大丈夫だぞ~。ちなみにオスカーは色々デカい」
    「下品な話をルーキーの面前でするな。……これから各チームのメジャーヒーローと打ち合わせ予定だ。失礼する」

     二人はそこまで深刻に考えなくてもよいと宥める。そんなキースの下ネタにテンパったオスカーが大きく返事をすると、立ち上がりブラッドたちは出て行った。


    「……うわぁあああ!」
    「アキラ!?」
    「めちゃくちゃムカつく!!!」

     フラストレーションが溜まっていたのが爆発したことでアキラは獣のように哮り立った。本当にブラッドだったのは重々理解し、口を挟まぬようにしていたが、アキラからすれば騙されたと感じ行き場のない怒りを抱いた。

    「いや、急に叫んでごめん。シャワー入ってくる……」
    「そっか……」

     しかし、周りの二人は事情も知らないでただ驚かされただけだ。関係ないことだったなと謝った。そして、トレーニング終わりだったのを思い出し、さっぱり洗い流そうとシャワールームに向かった。

    「どうしたんだろう。アキラ」
    「あの様子だと大方キースさんが何かしたのが筋だが。あの人は悪ふざけが過ぎるから」
    「あはは……」



    「ふぁっっっっっく!!!」
     一方、ウエストの研修チームではジュニアの怒声が響いていた。
    「おチビちゃんうるさい」
    「そうだぞ~」
    「これが叫ばずにいられるかっての!何でんなことになんだよコラぁ!」
     不機嫌顔で注意するフェイスと、怒りと混乱が入り交じった感情をぶつけるジュニア。こちらのルーキーも反応が芳しくない。

     元々キースとディノは一緒にブリーフィングルームに向かうつもりだった。あらかじめ説明し、無用な混乱を引き起こすよりも公式に集会をする方が収拾をつけやすい。しかし、形式的な会議で人員が多くても無意味だ。
     最初に、不審な女をキースとディノだと信じさせることは成功した。入室すると同時に向けられる視線に微笑むと、怪しまれないよう名前とIDを提示する。身分を証明したディノはルーキー二人にサブスタンスの仕組みを伝え、今の状況だ。どうしたものかとキースをチラリと伺う。
    「なんか大事みたいになってるなぁ……」
    「そりゃまぁオレも初めは嫌だったし。ぎゃーぎゃー喚くんなら、ウィルみたいに不満吐き出させりゃいいだろ?」
    「そういうもんか」
     ディノはあまり共感はできなかったようで首を傾げた。過去にジェイから説明を受けた時にディノ以外がそういう反応だったのは記憶しているものの、キースは休暇を貰えることに喜んでいたはずだ。しかし、不満解消はさせるべきだ、とアドバイスを聞いて二人に訊いてみることにした。
    「ええと、二人とも納得いかないようだな……。何か気に食わないこととか──」
    「ぜーっっっんぶに決まってんだろ!サブスタンスで色々起こったけど、今度は女になるとかまじかよ!?」
     ジュニアは言葉に被せるよう食いぎみに話す。サブスタンスがもたらす様々な効果を経験してきたけれど、今回は理不尽だと言った。発端が既に埋め込まれた能力を発動させる為のモノだからそう感じさせるのも仕方ない。
    「それだけで気色わりーのに、ディノの話からすると親父もなってたのかとか冷静に考えちまってお、おれ……」
     クレッシェンドからデクレッシェンドに移り変わったように言葉尻が沈んでいく。複雑な感情なのだろう。三人の間になんともいえない雰囲気が流れ出す。
    「うわ、これは流石におチビちゃんに同情するよ」
    「ま、まあそんな期間長くないもんな?ほら、博士から説明ある時にでも聞いてみれば、例外があった~……とか」
    「う、うん?そうかも?」
     フェイスも近親が『ヒーロー』〈つまりはブラッドのことだ。〉であり、ミラクルトリオと呼ばれる三人の内二人が目の前でそういう状況になってるのだから既に想像の範疇だった。ディノの思い出の一部になっている大好きなお兄ちゃんと慕う小さなフェイス。あんなに想っていたのだから今だとしても憧憬の対象の兄が崩れてしまう胸中はジュニアと同様に酷く傷ついてしまっているだろう。
     ディノは幼少から研究部と関わりがあるので口をあまり開かず相槌を打つ程度にした。正直そういった例は見聞きしなかった。キースの優しい嘘だ。
     その場しのぎの慰めの言葉を適当に捻り出したせいかキースは最終的にジュニアのトレーニングに付き合わされる約束を取り付けられることになった。ついでに今夜はハンバーグらしい。吹っ切れていつものジュニアになったことを安心したディノはフェイスにも改めて訊く。
    「フェイスはどう?」
    「そうだなぁ……さっき悪影響は無いって言ってたじゃん。 ぼかして聞くけど血って出るの?」
    「状況としてはあり得る、けれど俺が知ってる限りは無かったよ」
     男としては少々恥ずかしい内容に苦笑いしつつ答える。フェイスは至って冷静で逆にこちらが動揺してしまいそうだ。女性経験豊富だと余裕が生まれるのか。
     一先ずはブラッドから連絡が来るまで自由時間を取ることにする。リビングで待機しようかとも考えたがゲンナリしているキースを見て何とかしてやろうとディノは自室に入った。 放置するのは可哀想だしな。誰かを喜ばせようとするサプライズ精神を刺激され、とてもワクワクした。
    「キースが喜ぶモノか……」
     アルコール?今は勤務時間内だ良くない。ビリヤード?一緒に遊ぶなんていつもと変わらない。チアガールの格好?女装ですらないものに笑いどころが無い。
    「どうしよう」
     キースの好きなモノといえば何なのか。酒、煙草は勿論だが、復帰以前の彼はそれ自体に中毒と言えるほど欲してはいなかった。具体的な物が思い付かずディノは不安になった。親友だというのに知らない自分がこれまで自分勝手な思い込みの喜びを押し付けていたのかもしれないことが。
     だが、そこでへこたれるディノではない。だったら聞けばいいこと。アカデミーでもキースのことを知る為に奔走したぐらいだ。
    「お~い。ディノ」
    「わっ!」
     電子扉はゆっくり開きその間からキースが顔を覗かせる。ちょっとした悪戯気分で影から飛び出した。
    「うわ~……ってガキじゃあるまいし。それより、ブラッドから集合命令」
     わざとらしく驚いた風を装った後、先ほどの様相以上に面倒臭がる顔がディノを急かした。早いな、と一瞬浮かんだ思いは二方のメジャーヒーローの顔を思いだし消えた。

     体が変化したのは今日の朝。事前に分かっている


    埋め込まれたサブスタンス準拠でTS発生だとディノさん辺りの問題がきっつい。アカデミー時代があぼーん。イクリプス側はシリウスは無しで。
    周期はノヴァさんの計らいで調整したものの、ちょっとずれる時期があると興奮する。
    会話苦手すぎ……地の分も酷いな。聴牌!
    カドスト読めてないから矛盾もあるかも
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