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    WhiteLeafMILK

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    WhiteLeafMILK

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    海に行くドラエル!!!!!!!!!
    ちゅうはしてる

    じり、と熱が肌を焼く感覚がして、エルメは部屋の中でベッドに倒れ込んでいた。鉄の日になるような情緒ではないが、ドイツの夏に慣れているエルメにとってはイギリスの夏は酷く暑い。この時期に視察に来るんじゃなかった。ともぞもぞと熱がこもり切りになっている裸の体を持て余していれば、無遠慮に扉が開かれる。
    「やはりな……」
    「なぁにドライゼ。俺は今機嫌が悪いんだ」
    「準備しろエルメ、避暑に行っていいと上から許可を取った」
    「ちょっと待ってよ、俺達は視察に……」
     ドライゼは素早く扉を閉めるとエルメに向かって外出届を押しつけてくる。
    「マスターや教官との情報交換は終わった。帰るまでは自由にしていいとのことだ」
    「授業は」
    「それも許可を取ってある」
     早く準備しろとばかりに急かされながら、エルメはドライゼに言われたものを入れていく。着替えと、タオル、日焼け止め。水着はと聞けば、道中で調達すると言われた。そもそもドイツでは湖水浴が基本だったが、イギリスにそんないい場所があるのだろうか。とにかく、上官であるドライゼがいいというのであれば、自分は拒む必要などない。カバンに詰め込んだ荷物を持ってドライゼについていき、小さな車に乗り込む。ラフな格好に着替えているためか、どこか新鮮な気もちで、エルメは通り過ぎていく景色をぼんやりと眺めていた。
    「ここは……」
    「イギリスの海だ」
    「ちょっと騒がしいね」
    「まあ、仕方ないだろう」
     早く行くぞ、とドライゼに急かされながら、エルメは途中で買ったパーカーのフードをかぶる。男二人で、人の多いビーチだなんて…… そうは思うものの、久しぶりの休暇はやはり少し心が弾んだ。ビーチの近くにずらりと並ぶ小屋に荷物を入れて、貴重品を金庫の中に入れる。水着に着替えた二人がビーチへと歩いて行けば、泳ぐというよりもカヤックを漕いでいる人の方が多い様に見えた。
    「俺たちにとってはさほど冷たく感じないけど、こっちの人は慣れてないのかな」
    「どうだろうな」
    「あの、ドライゼ……?」
    「なんだ」
    「どうして俺は手を握られているんだい?」
     パーカーのフードを深くかぶりつつ、エルメは握られた手を見つめる。小屋から出てきたときからずっと握られていた手に、柄にもなくどくどくと心臓が跳ねている。エルメが指摘すると、ドライゼ自身も予想外だったのか慌てて手が離れていった。
     気まずい空気になりつつも、浜辺まで行けば涼しい海風が頬を撫でていく。波打ち際に歩み寄れば足元の砂を海水がさらっていく。冷たい水に体の熱が冷えていく、まだわずかに赤い顔をしているドライゼの方を振り向いて、エルメは身をかがめてひんやりとした海水をドライゼの顔に向けて飛ばした。
    「ふふ、びっくりした?」
    「エルメ……お前というやつは」
    「あはは、ほら、ドライゼも来なよ。思ったより気持ちいいよ」
    「その前にパーカーを脱いでおけ。濡れたら困るだろう」
     ドライゼの言葉に、エルメはわずかにむっとした表情を浮かべるものの、水しぶきで僅かに濡れているパーカーの裾をみて思いなおしたらしい。エルメは自分が波と戯れている間にドライゼが敷いたビニールシートのところまで歩いていくと、ターコイズブルーのパーカーを脱いで丁寧に畳み、ドライゼの着ていた灰色のパーカーに並べて置いた。大き目のビニールシートには水着と一緒に買った昼食に空気の入っていない浮き輪。じっとドライゼを見ていれば、エルメの言わんことを察したらしいドライゼが浮き輪を広げて空気を入れ始めた。
    「こんなことをせずとも、泳げるんじゃないのか」
    「どうだろう。湖では浮けても海水じゃ違うかもしれないじゃない?」
    「ハァ……お前の事だから問題ないとは思うが、波に流されて遠くに行くんじゃないぞ」
    「ゴーストやジグじゃないんだから、そんなことしないよ」
     ドライゼから浮き輪を受け取り、小脇に抱えたエルメは、ほんの少しむっとした表情を浮かべながら海へと向かっていく。ちらちらとドライゼの様子を伺いつつ腰のあたりまで海に浸かったエルメは、こもっていたじわじわと体にこもっていた熱が冷たい海水でほどけていく感触に息をついた。
    「あぁ、気持ちいいな」
    「少しは体調がよくなったみたいでなによりだ」
    「別に、夏バテなんてしてないよ。ただ、ドイツの夏よりもイギリスの方が暑いんだなと思っただけ」
     エルメが身を任せた浮き輪の紐を手繰り寄せながら、ドライゼは苦笑いをこぼす。ちらりと一瞬視線をむけるものの、エルメはそのままドライゼに引っ張られて、波に揺られながらドライゼの背中に海水を浴びせた。
     真上にある太陽の熱を感じながら、エルメは前を歩くドライゼをぼんやりと見つめる。マスターの手によって召銃される前よりも随分と人間らしくなったな、と思うが、それでも軍では相変わらず鉄のようにふるまっているドライゼは、今もエルメにとっては面白い観察対象になっている。昔の彼だったら、暑さにばてているエルメに気を回すことはあっただろうか……
    「変わったよね。ドライゼ」
    「急にどうした」
    「マスターに再召銃されてから、ちょっと柔らかくなったなぁと思ったんだ。前の君なら、こんな風に海に連れて行ってはくれなかったでしょ」
    「それは……そうだな……」
    「まあ前の俺だったら、誘いに乗ったりはしなかっただろうね」
     振り返ったドライゼに微笑んで、二人とも変わったってことだね。と笑いながら立ち上がって、視線を合わせる。ちらりと周囲を一瞥したエルメは手招きをしてドライゼを呼び寄せると近くに来たドライゼの唇の端をぺろりと舐めた。
    「ッ……!?」
    「うわっ」
     動揺したドライゼとぶつかって、エルメの体が大きく揺らぐ。大きな水しぶきを上げながら、二人の体が海中へと一瞬沈んで、すぐに浮き上がった。頭までびしょ濡れになって、顔に流れてくる海水を払って目を見合わせる。
    「そんなに驚くことだった?」
    「エルメ……お前と言うやつは……」
    「わ、わっ……ドライゼ、君ちょっと意地悪くなったんじゃない」
     ドライゼからデコピンをされたエルメは少し不満そうな顔をして浮き輪に体を預けた。拗ねているのか、とドライゼが聞けば、拗ねていない。と返事をするエルメはドライゼに浮き輪を引っ張られて、時々目の前の背中に海水を投げつけた。
    「……指がふやけてきたな」
    「随分長いこと海に入ってたからね」
    「もう少しすれば日も暮れてくるだろう。戻るぞ」
    「jawohl」
     エルメがわざとらしく堅苦しい返事をすれば、複雑そうな顔をしながらもドライゼは浜辺へと戻っていく。あれほど暑かった日差しも、熱が落ち着いてきている様子で、エルメは水にぬれた体が風で冷える感覚を楽しんでいた。
    「ねえドライゼ」
    「なんだ」
    「今日は帰るの?」
    「いいや、ここで泊って帰るぞ」
    「そっか」
     小屋に戻ってシャワーを浴びれば、着替えもせずに食事の下ごしらえをしているドライゼが目に入る。半乾きの頭にタオルをかぶったまま後ろからそぅっと近づいて、「わっ!」と声をかけてみれば、予想していたのか、呆れた表情のドライゼが振り返る。
    「ちゃんと髪を拭いてこい」
    「後でちゃんとやるよ。それより、ドライゼも早くシャワー浴びておいで」
    「……わかった」
     ぽすんとソファーに座ったエルメは、ドライゼが差し出してきたカフェオレに口をつける。下ごしらえは終わったらしい。ぽんぽんと頭を撫でるドライゼの手のひらが冷えていて、どうせなら一緒に入った方がよかったかな。とエルメは独り言ちた。

    「おかえり、ドライゼ」
    「エルメ……その格好はなんだ」
    「あっためてあげようと思って」
    「またからかうつもりだろう」
     ドライゼがシャワー室から出てきたタイミングを見計らって、布団を身にまとったエルメは手を広げて彼を迎える。下着一枚だけの姿にこめかみを抑えたドライゼがエルメの腕を定位置に戻した。
    「からかうつもりじゃないよ」
     エルメがドライゼに抱き着くと、どくどくとドライゼの胸が早鐘を打っていることに気付いてしまう。ちらりと顔を上げて、目があって、わずかに染まった頬とエメラルドグリーンの瞳が近づいて、エルメは身動きが取れなくなった。
     目を閉じると柔らかいぬくもりが触れる。目を閉じる余裕もなく、唇を開かれて、舌が入りこんできた。じわりとエルメの体に熱がくすぶって、もどかしくなる。ドライゼの胸を軽く押して抵抗の意を示せば、あっさりと温もりは離れていった。
    「は、ぁ……」
    「すまない……食事の準備をしよう」
    「うん……」
     何か言いたいと思いつつも、恥ずかしい気持ちが先行してしまい、そのままエルメはドライゼに促されるまま、手を引かれて部屋に戻っていく。ソファーに座って、いつも通りの会話をしながら夕食をとる。寝る間際になって、ダブルベッドであることに、ドライゼが渋い顔を浮かべた。
    「……俺は別に大丈夫だよ。ドライゼも、寝相は悪くないだろ?」
    「確かにそうだが……」
    「じゃあほら、気にすることないよ」
    「……」
    「もう、じれったいな」
     じっとベッドの前で固まっているドライゼの後ろから、エルメが背を押すようにしてベッドにもつれ込んで倒れ込む。ぎしりと苦し気な音を立てるものの、どうにか耐えきったベッドの上で、エルメはドライゼの額にキスを落とす。
    「今日はありがとう」
    「……あの暑さが堪える気持ちはわかるからな」
    「ふふ、ジグは我慢するかもしれないけれど、ゴーストはばてちゃうかも」
     確かにな、とエルメに言葉にドライゼが同意する。他愛ない話をしているうちに、エルメは眠気にいざなわれてしまいそうになって、必死に意識をとどめようとドライゼの胸元に顔を寄せた。
    「Nachti」
    「ん……おやすみ、ドライゼ……」
     男二人で引っ付いて寝る。確実に暑いだろうはずなのだが、空調のせいで、空気の熱さは感じられない。打ち寄せる波の音と、すぐ近くで聞こえる鼓動の音を聞きながら、エルメは疲れた体をそのまま睡魔へとゆだねていった。
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