0歳
7月12日、父母の家庭に生まれる。
紫がかった赤い髪と3本の羽を持っていた。
マインと名付けられ一人っ子として育てられる。
3歳
仕事で父がいないことが多くほとんど女手ひとつ
で育てられる。といっても最低限のことしかされず 放置されることがほとんど。家ではいつも酒と煙草の匂いが充満していた。
7歳
獄校で優秀な成績をだし基本何事もすぐこなせた。
しかし生徒内での喧嘩や態度の悪さから孤立する。
そして母の浮気によって両親が離婚。
家でも一人で過ごすことが多くなる。
幼児の頃は周りとさほど変わらなかった羽もあまり
成長しなくなり馬鹿にされることが多くなる。
そのため羽を隠すように包帯を巻くようになる。
10歳
喧嘩、説教、喧嘩を繰り返す日々。
それでも成績は悪くないため退学などの大事にはな
らなかった。一人で本を読むことが好きだった。
父が再婚し新しい母親が来たが良く思われなかったのか言いがかりをつけて蹴られたり叩かれるようになる。
視界に入ってきて不快だった、いるだけで部屋が汚れるなど家にいても悪口を言われるけだったので外を一人で散歩することが多くなる。
この頃から自分自身の心を守るために弱音をはいた
り泣くことをやめる。
13歳
火に憑依したが間違えて引火してしまい身体の一部が燃えたが大事にはならなかった。火傷のあとは治ったがそれでも周りに醜いや寄るなと言われる。そんなやつらを見直すために火属性ものにしか憑依しなくなる。
15歳
父と母が口論になり母が出ていく。治まらない苛立ちを自分に向けられ殴られる。体格がよく背丈が大きいので当然昔から受けていた母のものよりも威力は大きいためそのままやられ殺されかける。ものが壊れたりぶつかったりする音を聞いて隣人や近くにいた人に助けられ父は捕まった。
独りになった。
17歳
憑依型だけでなく御守り型の資格もとり地球で過ご
すことが多くなる。しかし初めて担当する人間に馬
鹿にされ手を上げそうになるがこれも仕事だと自分に言い聞かせされるがままにされる。
この頃から煙草を吸い始め自分の気持ちを押し殺して生きるようになる。
20歳
重度のストレスから体調を崩しやすくなり常に不快感におそわれるようになる。そしてロエメヌを発症。運良く記憶は微かに残っていたのでそのまま地獄に戻る。
休息をとり治ったがやはり自分には御守り型は向いてないと憑依型メインになる。
食べることが出来なくなったり出来てもすぐ吐いたり過呼吸によくなったりと結構深刻な健康状態だった。たくさん食べることに少しトラウマができた。
27歳
色々憑いた結果爆発に落ち着く。しかしそれでもまだそんな全快ではない体には負担が大きいのかたまに熱にうなされるようになる。
前よりは少し体調もましになってきているので好きなことをしようとより詳しく地球のことを学んだり勉強したりするようになる。頭を動かすことは嫌いじゃない。
46歳
子供の頃から何かあるとやって来てた金麦畑で複数の大人にいじめられている子供を見つける。
かつての自分に重ね自分はそんな柄じゃないと思いつつも助ける。元々目付きも悪く喧嘩はしなれてるため相手の方から怯え逃げられる。半端な奴らはつまんねーな、とかつての治安の悪さに感心と呆れを覚える。
子供の方もどうせ自分を怖がりすぐ立ち去るだろうと思っていたがまるで正義のヒーローでも見たような目で見つめられしまいには弟子にしてください、と。
まったくそんなこと言われるとは思っておらずこの子供にわずかな好奇心がわき弟子までとはしないが学びたければ自分でどうすればいいか考えろと伝える。
この日からまだ幼い10歳の少年、カシタ・リウムに付きまとわれて生活するようになる。左右で違う藤と黄金の色をした綺麗な眼をした少年だった。
55歳
自分で考えろとは言ったがまさかここまでしつこく来られるとは思っておらずめんどくさいと思いつつしっかり教えることは教える。
カシタは獄校で憑依型を選択しているが想創型に本来なりたいらしく獄鳳校にも通っており大変とのこと。
飽きやすい性格だがやりたいことはとても熱中するので一生懸命なろうとする自分にはなかったものをみて俄然興味がわき容赦無しのスパルタ教育が始まる。
要領は悪くないが気分次第でやる気が変わりやすく度々自分の能力を使って集中力などを上げるなどサポートもしてあげた。カシタはもちろん家族がいるが精神面や自分の知らないところで一番支えてくれたのはマインだったと思う。
憑依型の薬を飲むのが嫌だと言うから味覚を鈍くしてやったら飯の味がしない!と文句を言われて謝りながらも笑ってしまい、その時初めて笑った顔を見たであろうカシタはあんな仏教面な先生が笑うなんてと驚き結局つられて笑ってしまったの良い思い出だった。表情筋のない化け物とでも思われていたのだろう。
カシタは特に飛ぶのが上手でいつも楽しそうに風と遊んでいた。
「先生は飛ばないの?」
純粋な特に本人には深い意味もない単純な疑問だろうがそれを訊かれて言葉がつまった。
「……俺は元々羽が無いからな」
嘘をついた。背中が少し痛かった。
60歳
カシタも無事資格をとって卒業して地獄で働くようになって数年が経った。憑依型のマインは地球にいることが多かったが昔とは違ってだいぶ負担の少ない生活を送っていた。
ある日、蛇便が来てカシタに子供が生まれた、という便りが届く。あぁそういえばアイツはもうすでに結婚してたんだっけな、と過去の記憶を遡りもうそんなに大人になったのか…と感じながら手紙を読み進めるとたまにはこっちに帰ってみないか、会って久しぶりに話がしてみたいとありめんどくさいと思いつつ子供の面を拝んでやるか、と地獄に帰ることにする。
会ってみるとカシタは昔のような小さい少年ではなく、もう自分の背丈を越えた一人の大人で、ガキの成長は早いなと思わず口に出すともうそんな子供扱いすんなよ先生と背中を軽く叩かれる。
初めて赤ん坊を見てまだ小さく泣くことしかできないような生き物だなという感想が出る。カシタと同じ左右で色の違う眼をしていてこの眼の色はコイツらの家系かと納得する。
透き通る橙と群青だった。
名前はバルというらしい。バル・リウム
そして話を聞くと仕事でいないことが多いので自分の変わりにコイツと遊んでやってほしいとのこと。
母親はバルを生んだときに亡くなってしまったらしい。
元々身体が弱かったそうだ。
どうせ地球に帰っても特に面白いこともないので了承する。
まさか親と子、二世代世話をするとは思ってなかった。
62歳
バルはもう言葉も結構言えるようになってきてやはりカシタの息子だからかずっとまいん、まいん、付いてくる。
少し、懐かしい感じがするがやはり一人静かに本も読ませてほしい。
68歳
バルが字を書くことが苦手なことが段々わかった。
その代わりに別の言語話すことや読むことは優れているらしい。俺とは違い他の悪魔と積極的に仲良くなろうとするがその気持ちが空回りしてなかなか友達ができない。器用なのか不器用なのかよくわからない。
地球を少し散歩してたら好奇心旺盛なバルは案の定すぐどっかにいなくなって迷子になった。カシタに似て飛ぶのも得意なんだろう。
やっと見つけたと思ったら2つの風船を持って「俺、これにする!」と言ってきた。
自分の眼の色と同じ色の風船だった。
迷子になってるとき何があったかわからないがしっかりとした目標が見つかったようでよかった。
まずいまずい言いながら薬を飲んでる姿が見られなくなるのは少し残念。
70歳
バルは自分の能力と知識を活かして色んな国へ遊びに行くようになった。俺は飛べないからと言い訳をしてその間は地獄へ戻ることにした。
カシタは忙しいがしっかり父親としてバルのことは可愛がっている。俺は全然会えないからもう先生のほうがバルに懐かれてるよなぁ~羨ましい~と酒で酔っぱらいながら愚痴を言っていたが、自分はそんな誰かに愛されるような環境ではなかったから、バルもお前も恵まれててよかったな。ともうすでに睡魔に負けて寝てるであろうカシタに告げる。
俺は、幸せな環境で暮らすべきではないのかもしれない。
こいつらに俺の不幸が移りませんように。
72歳
ある人間の家で暮らすことが多くなった。
バルもずいぶん賢くなったと思う。それでもまだまだ向上心があって真面目だな、と感じる。
まだ全然字を書くのは下手くそだが。
カシタもバルも負けず嫌いだがカシタはできないと拗ねて何もしなくなるタイプ、バルは弱音スイッチが入って泣くタイプ。どちらにしてもめんどくさい。
地獄でもカシタが俺のことをペラペラ喋ってるのか○○を教えて、ここはどうしたらいいと訊いてくる子供が寄ってくるようになった。
早くも遅くもすそいつの親がやって来て危ない人だから、と引き離すのもセットだが。
そういうのには慣れている。
簡単に人の印象を変えることはできない。
俺は良い人になれない。
80歳
バルも成人してカシタと3人で酒を交わした。
酔いやすいカシタにしつこく絡まれてバル困ったような顔をしてるがお互いに酔いがまわってるため楽しそうだった。2人はあまり年も離れていないので気も合うのだろう。
俺はあまり酔うことはないがそれでもいつもよりは意識が柔くなっていたと思う。
2人を見ているともし弟や子供がいたらこんな風なのだろうか、と感じる。
これからもコイツらを支えていけたらそれで俺の人生は充分なんだろうな。
95歳
バルもちゃんマイン離れして一人でしっかりできるようになってきてまた一人で過ごすことが多くなる。
ふと、かつて自分が過ごしていたあの家は今どうなっているのだろうと何となく気になった。
良い思い出なんてひとつもない、自分を苦しめた場所。
それでも今の自分を形成してるものには変わりはない。
もう何十年も経っていたがそこはかつてと変わらずにいた。
見慣れた風景。錆びた鉄と壁に染み付いた煙草の臭い。
昔からある傷痕と所々ある僅かな血の跡。
ここ一帯は元々治安は悪い方だがそれも悪化しもうほとんど人も住んでいないらしい。
少しためらいつつもドアに手をかける。開けようとしたが鼓動がどんどん早くなる。息も浅く荒くなり苦しい。じんわりと全身から嫌な汗が滲み出る。
耐えきれず手を離し、近くにしゃがみこんで息を整える。
深呼吸をして落ち着こうとするも脳に貼り付いたトラウマに思考を支配される。
この家は、俺に呪いをかけたのだろう、きっと一生消えない思い出としてこの身体の中に居続ける。
それでも
俺はもう違う。
変わった、と信じたい。
いつまでもこんなことで挫けるようなやつではないだろう、マイン。
自分にそう言い聞かせ、決心をしドアを開ける。
開けた瞬間、一気に空気が重くなった気がした。
肺に、嫌な空気が流れ込んでくる。
そしてゆっくりと足を踏み入れ中に入った。
奥へと進めば進むほど、鮮明に出来事が思い出され、ましてや今此処で実際に起きているような幻聴まで聞こえる。
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『ねぇ…見て!僕学校で頑張ったんだよ、ほら、母さん!』
『……うるっさいわねぇもう!!こっちは忙しいの!!わかって!!そんなことには構ってられないのよ!!』
『…ッ…わかりました…ごめんなさい…』
『チッなんだよこの汚ったねぇガキは!邪魔なんだけど?ねぇ早くどけよ、あんたは別に要らないんだからさぁ』
『け、けどママ』
『うるさいなぁ"!!何回言ったらわかるの!?あたしはあんたのママなんかじゃないんだよ!!それにさっきどけって言っただろ、何でまだいるんだよこのバカがッ!』
『ぅあ、まって、まってわかったよ、!別のところにいくから!まって殴らないで!!ごめんなさい!ごめんなさい!!』
『なんなんだよあのバカアマ!こっちは仕事で疲れてんのによォ!!!』
『と、父さん…どうしたの……ママは…』
『黙ってろ!!そんなの俺だって知りてぇわくそッ……あ"ー何でだよ!』
『あ、!まって、!!うぁ"、やめてくれ、て!!』
『うるせぇ!!……そうだ…!!そうだよ!!…元々お前がいたから!!お前のッ!!お前のせいでなァ!!俺の人生めちゃくちゃだよ!!どうしてくれるんだ!!!』
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お前のせいで人生めちゃくちゃ………か……
「……っそんなの俺の台詞だわバカ親父!!!!!」
いきなり大きい声を出したせいか屋根裏にでも住んでた生き物たちが走る音が聞こえる。
「いつもいつもうるせぇだの邪魔だの言ってよ!!俺はお前らのせいでそこに、ここにいたんだ!!!何でこっちが怒られなけゃいけねぇんだよ!!なんでっ、何で俺はこんなところに生まれなきゃいけなかったんだ!俺の何が、何が悪かったんだよ…くそっ……くそ……!」
高ぶる感情が抑えられず悔しいのか、わからないが、眼から、涙がこぼれ落ちる。止まる気配はなくむしろ今まで押さえてたものが一気に溢れてくる。
「ッいいか!?俺はこんなクソみてえな過去には負けねぇからな!!舐めるんじゃねぇよ!!もう世間知らずのガキじゃねぇからな!!」
久しぶりに大きな声で叫んだせいか、少し喉が痛い。
初めて、しっかりとした自分の思いを口に出したのかもしれない。
きっと俺は今日、過去に宣戦布告するために此処に来たんだ