-あの頃の月と君と今夜-てんてけてんてん、にゃーん、にゃーん
聞き慣れた着信音。
だが、画面に映し出された名前は珍しい相手だった。
「悟飯」
『あ、ピッコロさん。こんばんは』
悟飯は頬を掻きながら目線を逸らす。
「どうした?というか、用があるならそちらに行くが」
『あ!や、いいんです。ただ、ちょっと、声が聞きたくて』
そんなものかと椅子に腰を下ろした。
何も言わず、悟飯の次の言葉を待つ俺に、悟飯はへへ、と嬉しそうに笑う。
『今、外ですか?』
「いや。部屋だ。さっきまで外にいたが」
『そうだったんですね。もう見ましたかね?今日、綺麗な満月ですよ』
画面の悟飯は窓枠に肘をつき天を仰いだ。
その言葉につられるように窓へ顔を向ける。
見上げた夜空に浮かぶ白い月。
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