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    KIKYOU_1004

    経験、礼儀、教養浅めの、生まれたて夢女です。

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    KIKYOU_1004

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    二色マナとハナミちゃんの出会い

    よたよたとした足取りで懸命に走る人間

    なぜ気になってしまったのだろうか

    きっと人間の抱える小さな花を見たからだ

    でなければ、滅ぼすべき愚かな人間の児に目を向けるなんてことは有り得ない

    あまつさえ、その後を追ってしまうなんて

    「ハッハッハッ、、ッ、ケホ、、ハッハッ」

    もたついた足と切れた息を気にもとめず人間は走り続けている

    やがて森の中に続くけもの道へと差し掛かった

    険しい坂と生い茂る草で人を寄せつけないその道に躊躇いもなく入っていく

    「えっと・・・あった」

    たどり着いたのは廃村

    随分と森の奥深くへ来ていたようだ

    人間はさらに奥へ進んでいく

    (こんなところで一体何をするのだろう)

    やがて息を切らして立ち止まったのは崩れ去った家屋横の小さな畑

    畑には何種類かの植物が静かに佇んでいる

    どの植物も青々しい葉をつけ、生き生きとしている

    (花を・・・育てているのですね)

    ゴソゴソとカバンを探る人間は嬉しそうな表情だ

    自然を愛する人間

    壊れていく星

    (・・・だが、足りない。この幼子だけで星を救うことはできない)

    「日当たりのいい場所・・・でほっといていいんだ、、切り戻し・・・」

    ブツブツと呟きながら大きな本の頁をめくる

    本来ならば1人でも人間を消す絶好のチャンス

    なのに何故か殺す気にはなれなかった

    ただの人間

    本当にただ植物が気になっただけ

    のはずだ

    ーーーーーー

    「ッッ、、ヒッ、フゥ、、グス」

    あれから何度かこの場所を訪れるようになった

    幼子の植えた植物たちが枯れていないか確認している

    という言い訳を誰にでもなく零しながら

    「すぐやらなきゃ・・・」

    目元をゴシゴシと強く擦り、青い葉を愛おしげに撫でた幼子はいつものように廃村を走り回る

    付近に川があるらしくそこから水を汲んで全ての植物に適量やる

    剪定、間引き、植え替えを拙い動きでこなし帰っていく幼子を毎度ぼーっと見つめていた

    「グス・・・ヒック・・・」

    今日も畑に植えられた花々を眺めている時に幼子は現れた

    いつもと違うのは頬に青アザをつけて足を引きずりながら泣いていたこと

    頬の傷は大きい

    大人にでもやられたのだろうか

    己の子に手を上げる愚かしい人間が稀にいる

    幼子はその恐怖に耐えられず泣いているのだろう

    それでもこの畑の様子を見に来たことに驚いた

    (この幼子の支えになっているのでしょうか、この花畑は)

    いくつもの花が咲き誇るここはもう立派な花畑だ

    初めの頃のただ廃れていた畑ではなくなっていた

    「あ、つぼみが増えてる・・・」

    目じりに雫を残しながらも花に笑いかける

    もうこの幼子から目を離すことは出来なかった

    ーーー

    ボロボロの村の畑に花を植え始めて、もう1年が過ぎようとしている

    色んな種類の花が増えてきてもう花畑と呼んでもいいくらいにキレイになった

    「今日はちょっと暑いな・・・」

    夏のはじまりそうなある日

    私は新しい苗を買った

    取り上げられないようにこっそり貯めていたお金

    町の人達のお手伝いをして手に入れた私だけのお金

    やっと新しい苗を買えるだけ貯まったのだ

    「またキレイになるなぁ、ふふ」

    学校や家の辛いことも悲しいこともあそこにいる間は全部忘れられる

    もっと頑張ろうって思える

    生き生きとした花たちを見ると元気になれる

    「そういえばいつからだっけ・・・?」

    私が世話していない間にも誰かが手入れをしているような

    花たちを見ていてくれているような気がしていた

    私が世話をしている時も何処かから視線を感じる

    嫌な感じはひとつもしないし、むしろ安心していた

    同じように花を可愛がってくれる人がいるんだと

    心が踊った

    「今日も頑張ろう・・・」

    緩む頬はぎゅっと抑えても、走る速さは上がっていった

    だから気にしていなかった

    いつもなら注意して周りを見るのに

    通り過ぎた脇道に誰がいたかなんて、気づいていなかった

    ーーーーーー

    私は愚かな人間が嫌いだ

    傲慢で利己的、偽りの感情

    星に、森に、植物に優しい人間なんてどの程度いるのか

    そんな人間が本当にいるのかと疑ってすらいた

    だからあの幼子を見ていて、希望を感じたのだ

    少し性急だったかもしれないと

    まだ見限るには早かったかもしれないと

    (甘い考えだったようですね・・・)

    「やめてよぉぉぉッ!」

    「アハハハハハハダッセェ!」

    「イケイケ!ぶっ壊せぇー!」

    泣き叫ぶ幼子と花畑を荒らす愚かな人間

    美しく咲いていた花々は見る影もなく散らされ、掘り返され、刻まれていった

    ふつふつと胸の奥に何かが湧き上がる感覚

    幼子の努力も、花々の命も全てを踏みつけにした愚児に対する強い怒り

    《あなた達のような愚かしい児が・・・!》

    「いっ!?痛い痛い!!頭が・・・!」

    《さらに愚かな人間を増やしていくのでしょうね》

    「何、やだ、助け、」

    グチャ

    ブチブチブチブチブチブチ

    「ヒッ・・・」

    「ば、バケモノ」

    「ギャァァァッ」

    《美しい星を蔑ろにして、貴方たちは増えていく・・・なんて傲慢なのか》

    頭を腕を足を胴を

    捻り

    引きちぎり

    潰す

    悲鳴が聞こえなくなるまで、そう時間はかからない

    「・・・」

    1人残った、残した幼子はバラバラになった児らを静かに見ていた

    「・・・もしかしていつもお花を見てくれていた人?」

    怯えるでもなく、ただ静かに問う幼子の視線はいつの間にかこちらを向いていた

    《気づいていたのですか》

    幼子は遠回しなこの応えの意味をしっかり理解したようだ

    血の海の中で、ぎこちなく笑った

    「あなたが見てくれたあとは、お花が元気だったの。それに私がお世話してる時もいたんでしょ?誰かが見てるきがしてたから」

    引き攣っているのでは無く、ただ不器用で穏やかな笑みだ

    だがすぐにその顔から温かさが消えた

    「でもお花畑ぐちゃぐちゃにされちゃった」

    《もう壊されることは無い。彼らは死んだのですから》

    「まだいるの・・・お父さんもお母さんも。見つかったらまたぐちゃぐちゃにされちゃう」

    ボロボロと大きな雫がこぼれ落ちていく

    だが幼子の表情は、悲哀ではない

    (憎悪・・・偽りのない強い純粋な負の感情。呪力も申し分ない)

    植物を愛し、慈しむ幼子と破壊され尽くした花畑を見やる

    偽物のようでこの子は真の人間に近いのかもしれない

    ならば我らの仲間に加えたい

    この呪力量、上手く扱えば強い駒になる

    そして何より惹かれてしまった

    この幼子の澄んだ慈愛と底の見えない深い憎悪に

    《あなたは父と母を、どうしたいのです?》

    「・・・ここをあの人たちが壊すなら、あの人たちが壊れればいい。あなたみたいに力が欲しい。お父さんもお母さんも壊してしまいたい」

    暗く沈んだ瞳にますます惹かれる気がする

    《・・・着いてくるといい。あなたの欲する力を私は与えられます》

    きっと漏瑚も気に入ってくれるでしょう

    仲間は多ければ多いほどいい

    きゅ、と服をつまんで着いてくる意思を示した幼子を抱えあげる

    「私強くなるね、お花も木も守れるように」

    《楽しみにしています》

    呪霊である私の腕の中で、血みどろの児はまた、ぎこちなく頬を吊り上げた
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