月輪の刃あの時確かに自分の体は消えた。まるで鬼のように消えて逝ったはずなのに。
どうしてまた生きているのか。
月にかざした手は欠損もなく、最期に見た手よりやや小さいように見える。
それもそのはず。ここは藤襲山だ。ただ七日間生き残るための最終選抜が行われた場所だ。
時が戻れるのならもっと前に戻りたかった。出来ればあの夜に。ただ、今からでもまだ間に合う。思い残すことは何もない。ならばやることはやはり一つだけ。
日輪刀ではないただの飾りの刀一本。全集中の呼吸も使えず、ただ鬼を斬るだけで致命傷も与えられない刀。
たかが刀。そう思っていた。どうせ今回も、と。
息を吸い、そして吐き出す。まるで笛を吹いた時のような音。あの時は気にも止めなかったが、いざ自分でやると不思議なものだった。
6862