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    Dochi_Kochi28

    @Dochi_Kochi28
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    Dochi_Kochi28

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    亜門さんとアキラさんの雨の話。

    買い物を済ませて、建物から出ようとした時、背の高い見慣れた顔が二人分の傘を持ってこちらに手を振っていた。
    なるほど、自動ドアの向こうは灰色の雲と雨模様。
    うかつだった。天気予報をあてにして折り畳み傘すら忘れていた自分に今更ながら気が付いた。柄にもなく、口をとがらせて差し出された傘を受け取る。

    やれやれ。雨は、きらいだ。
    父が死んだときも雨の中だった。そして3年前のあの時も雨だった。
    どうしても、3年前のあの日を思い出してしまう。
    もっとも、3年前にずっとあえなくなってしまった、と思って泣いていたら、戻ってきたのだけれども。

    持ってきてくれた傘をさしながら、上を見上げる。この状況に始めは違和感を覚えたものだが、今ではすっかり慣れてしまった。
    「用意がいいな。天気予報では降らないと言っていたのだが。」
    「空気のにおいが重い感じがして、な。それで迎えに来た。洗濯物は取りこんでおいたぞ。」
    「匂い、か。違うものなのか」
    「なんとなく、な。感覚が鋭くなったせいかもしれないが。」

    そういわれると、そうだ。三年前と今と、で違うこと。それは彼が半分喰種であること。彼の感覚は喰種としての感覚になっている。中でも目立つのは聴覚と嗅覚。二人でいるときは彼は気にしないが、私が帰ってきたとき、部屋のテレビの音量がやたら小さかったことがあった。それで聞こえるのか、と聞いてみたら、平気だ、と返された。

    「こういう時は、便利になったとは思うな。複雑な気分だが。」
    上から降ってきた言葉に、思考が引き戻される。
    ふと、言葉が口をついて出た。
    「・・・亜門上等。今、君は、つらくはないのか」
    「つらくない、と言えば嘘になるが、遠くにいるお前もすぐに見つけられるから、それは便利だと思う。」
    「そうか。」
    「そうだな。」

    そのあとは、パラパラと雨音を聞きながら、明日は晴れるといいな、だとか、買い忘れたものはないか、だとかたわいもない話を楽しんだ。

    彼が迎えに来てくれて、こうして話をしてくれるのなら、雨も悪くないのかもしれない。憂鬱に聞こえた雨音が、今では落ち着く音色に聞こえていた。
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