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    oda_r2111

    雑多に
    メインジャンルは一応FO4、ポケモン、JIN-ROH、今僕あたり

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    oda_r2111

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    キメラナナオくんが生まれてから記憶を戻すまでのお話

    ##ピプデバ関連

    まっくらな やみ。
    たくさんのけはいが
    ちかづいたり はなれたり。
    ここは どこ。
    わたしは だれ。
    だれか わたしを みつけて。
    わたしを


    あいして。




    --- pip-boy device VS-70 ---
       --- ready... ---



    私は廃工場で生まれた。

    「でかいオモチャ」「新作」「ポンコツ」、それらが私の名前だった。

    ここには御主人様と、賑やかなお兄さん達と、何体かの小さいロボットと、意地悪なpip-boyがいた。御主人様は機械のメンテナンスが得意で、私や、他のロボット達を作ったり修理したりしてくれる。

    私は御主人様の命令で、お兄さん達と廃墟を漁ったり、小さな家に住んでいる人間から食べ物を奪ったりして過ごしていた。たくさんの物を集めれば御主人様が褒めてくれる。だから、埃まみれになったりピッチフォークで叩かれたりしても頑張った。

    物が集められなかった日は、意地悪なpip-boyに暴力を振るわれる。あいつは私に優しくしてくれないし、いつも御主人様の隣にいるから大嫌い。だから私はうんとたくさんの物を集めて、あいつよりも役に立つことを証明して、御主人様に気に入ってもらうんだ。

    御主人様は、あのpip-boyデバイスにはしないけど、私のことは殴ったり、電撃を浴びせたり、柔らかいところに杭を刺したりした。御主人様は「他人が痛がる姿は極上だ。だが人間相手じゃこうは出来ない。何度でも作り直せて痛覚も感情もあるお前はまさに俺が求めていたものだ」と言っていた。私が痛がれば御主人様が喜んでくれる。これは私だけに出来ることだから、辛いけど嬉しかった。

    お兄さん達は私の身体を女の人のように扱った。外装を外して素肌を晒すのは恥ずかしかったし連続で相手をするのは大変だったけど、お兄さん達が喜んでくれるから我慢できた。

    嵐が来ていて外に出られない日は広い作業場に呼び出されて、他のロボット達と戦うように命令された。御主人様もお兄さん達も、私達が傷つけ合う姿を見て楽しんでいる。戦いはどちらかが動けなくなるまで終わらなかった。私も何度か動けなくなってしまったけど、そのたび御主人様が新しい身体に作り直してくれた。



    今日は、いつもより大きめの居住地を襲うためにお出かけをしていた。こういう所は警備がしっかりしていることがあるから、まずは私だけが偵察に出る。ひとつ、ひときわ大きくて綺麗な家があった。あの中なら物がいっぱいありそう。私は物陰に隠れながら、少しずつその家に近寄っていった。

    右脚がなにかに引っかかった気がした。その瞬間、耳障りなアラームが辺りに響く。なんだこの音!どうやったら消せる!?

    すぐに逃げればよかったのに。
    狼狽えている私の目の前に、人影が飛び出してきた。こんなに素早く動ける人間は見たことがない。
    「貴様、目的は?」
    大きな武器を突きつけられる。相手は私よりも小柄な女の子だった。今の私には戦闘用のロボットのパーツが付いている。これなら勝てるかもしれない。そう思って飛びかかったと同時に、頭に強い衝撃を受けた。仰向けに倒れた私に、女の子が馬乗りになってくる。反撃しようと動くよりも先に、手足を千切られる。
    やめろ!痛い!痛い!私に痛いことをしていいのは御主人様だけなのに!
    「我々に害がないと判れば元に戻してやる。そうでないなら、残念だが命の保証はない」
    女の子は鋭い目で私を睨みつけていたけど、まとっていた殺意をだんだんと無くしていった。
    「………お前、ナナオか?」
    何を言っているんだろう。私は「ポンコツ」だ。知り合いのふりをして私を味方にしようとしているのか?そんな手に乗るものか。

    結局私は女の子に捕まってしまい、何人かの人間に監視されながら居住地に軟禁された。私たちのお家は人間たちに知られていたみたいで、「あの略奪者がついに我々を標的にしたのか」と話していた。女の子は「今まで傍観していたが、こうなっては許しておけない」と言っていなくなってしまった。私のお家に行ったに違いない。御主人様が心配で死にそうだったけど、あんな小さい子ひとりでみんなに勝てるものか。お家には戦闘用のロボットもいるし、意地悪なpip-boyデバイスも、戦いが大好きなお兄さん達もいるんだ。きっと御主人様達が勝って、私を迎えに来てくれる。


    夜が明けて、女の子が帰ってきた。煤と血の臭いがする。ざわざわとした気持ちの悪い感情がこみ上げてくる。
    「殺したの?」
    女の子が無表情で私を見る。
    「殺したんだ!みんなを!大好きだったのに!家族だったのに!!」
    女の子の表情が一気に険しくなる。そして、近くの戸棚からアルバムを取り出してきた。
    「返してよ!私の家族を!!」
    「あれは家族じゃない!思い出せナナオ!お前の家族はこの二人だ、それ以外にはいない!」
    ツーショット写真を何枚か見せつけられる。
    男の人、女の人、pip-boyデバイス。どれも知らない顔。この二人が私の家族とはどういうことだろう、私は御主人様に作られて初めて生を受けたのに。
    女の子が何を言っているのか理解できなかったけど、悲しみと怒りが混ざったような表情を見ていると何も言えなくなった。



    女の子はロータと名乗った。私はロータの「予備として持ち出しておいた」らしい人型の四肢を装着され、彼女と旅を始めた。私の新しい身体を作ってくれる場所があるらしい。そんなものに興味は無かったけど、あの家で四肢をもがれて軟禁されたまま死ぬのは嫌だったので仕方なくロータの提案に従った。ロータは私に献身的だったけど、家族を殺した憎き敵だ。復讐してやりたい。そして、私はこの四肢を貰ったまま逃げ出して自由になるんだ。

    チャンスは何度でも訪れた。ロータは私を信用しているようで、けっこう無防備に睡眠をとる。そのときにナイフでコアを突いてやれば簡単に殺せる。…そのはずなのに、彼女の寝顔を見ていると何故か「ここで旅をやめてはいけない」「大事な何かを忘れているようだ」という気持ちになり、コアが不快な熱を持ち、涙が止まらなくなる。そうしているうちに殺意は消え、翌朝を迎える。

    ある夜、私はまた同じようにロータの寝顔を見つめていた。細い首に手をかけ、ぎりぎりと力を強める。細く開かれたロータの目が私を見つめる。「ここまでか」という彼女の呟きを聞き、はっと我に返る。何か大変なことをしてしまった気がする。私は今、大切な友達を殺そうとしたんだ。…友達?
    ぼろぼろと涙を流す私の頭をロータが撫でてくれる。誰かが私の頭を撫でるビジョンが浮かぶ。
    『あんたがいてくれて退屈しなかったよ』
    『ナナオは優秀だな!さすがは最先端のアンドロイドだ』
    懐かしい声を思い出す。カザムマスター。ジムナ。僕の大切な人だったけど、もう会うことはできない。そういえば、ジムナのお墓を見つけたときも、カザムマスターを看取ったときも、ロータは今みたいに僕を慰めてくれていた。そんなロータに、僕はなんて恐ろしいことをしようとしていたのだろう。
    「ロータ、ごめん、僕…」
    ロータは僕をきつく抱きしめてくれた。その温かさで、さらに涙が溢れてしまう。
    「ナナオ……おかえり」
    その声は震えていた。


    旅を始めて以来、初めて僕たちは寄り添って眠った。


    〈終〉
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