【伊弉冉一二三という男は女性が好きである】【伊弉冉一二三という男は女性が好きである】
「常々思っていたのですよ。伊弉冉一二三というホストは女性が好きなのかということを」
「そんなにも僕のことを考えてくれていたのかい? 嬉しいよ」
幻太郎は一二三のたわごとを聞き流してブランデーを流し込む。強烈な甘い香りと熱が喉を焼き、思考が少しクリアになった。
彼のテリトリーで、無防備な身を晒して好き勝手な管を巻く。高揚感と羞恥心で頭の中身が煮えてしまいそうだった。
「女性のことを――とりわけ自分の客を大切にしているのは認めましょう。だがそれは果たして好き……心惹かれていると言ってよいものでしょうか。愛って、もっと身勝手なものだと思うのです」
「へぇ」
一二三は足を組み替えて興味深そうに幻太郎の話に耳を傾けている。余裕ぶった態度にささやかな苛立ちを覚えた幻太郎は口元に薄笑いを浮かべて整ったかんばせを睨む。
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