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    r0und94

    @r0und94

    94/半ロナ

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    r0und94

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    セフレやってる読切半ロナが兄貴と会う話

    この間の新刊(https://privatter.net/p/9155240)と繋がってるけどこれ単体でも読めます。

    #半ロナ
    half-lona

    この後きっちり有言実行した 今日は用事があるから会えない、と電話してきた相手が街中を彷徨いている姿を見かけたとき、半田は自分の顔がじわじわと歪むのを自覚した。
     別に誘いを断られたこと自体はどうとも思っていない。あれで相手は名の知れた男だからしょっちゅう仕事が舞い込んでくるし、依頼があれば、もしくは本人が「何だそれ面白そう」と興味を惹かれたら全国津々浦々どこへでも飛び出していく質なので、誘ったその日に予定が空いていることの方が珍しい。
     ただ、仕事で予定が合わないとき、あの男はこちらが尋ねてもいない仕事の内容について楽しそうに喋ってくるのが常だった。もちろん依頼人のプライバシーには抵触しない範囲のことしか話さないのだが、常日頃から非合法的手段を用いた情報収集に余念の無い半田にかかれば断片的な情報である程度の依頼内容を察することができた。だからロナルドがいつどこにいようと、何をしていようと大方のことは把握している、のだが。
     今回に限って、ロナルドは詳しいことは何も言わなかった。それだけでも結構な異変なのだが、なんとあの男が、珍しく言葉を濁したのである。
    『その、用事があるから、今日はちょっと厳しい、かもしんねぇ』
     普段であれば無理なら無理とはっきり言う男が、何か喉に詰まっているかの様にもどかしそうな顔をしていた。これは絶対に何かがおかしい。ロナルドのことを四六時中監視している半田でなくとも違和感を覚えるほど、あからさまに様子が変だった。
     しかし、その場で詳しいことを追求する前にロナルドは電話を切ってしまった。それから何度かかけ直してみたが、電源を切っているのか故意に無視しているのか、応答は無い。
     これはひょっとするとロナルドの身に何かがあったのではないか。動揺した半田は、ロナルドのスマートフォンを利用した位置情報を追うのも忘れて家を飛び出した。真っ青になって、ひとまずロナルドの本拠地である個人事務所へ駆けつけようとした、その途中で見慣れた赤い外套を見かけて冒頭に戻る次第である。
     呆気なく見つかった探し人に、半田は何故か胸の奥がじっとりと焦げ付く様な心地がした。今すぐロナルドの元へ行って 人騒がせなことをするな、と怒鳴りつけてやりたい気がする。だが、ロナルドが誰かと相対しているのに気付いたので、半田は咄嗟に近くの建物の影に身を潜めた。
    「……仕事、ではないのか?」
     てっきり依頼人か何かかと思ったが、相手は派手な衣装に身を包んでいた。しかもよく見ればロナルドの赤い外套とデザインがよく似ている、気がする。
     そこまで観察して、半田の脳裏にとある退治人の情報がピックアップされた。退治人レッド・バレット。新横浜を拠点に活躍する売れっ子の退治人で、確か、退治人ロナルドの兄だと公言している。ただし兄弟だと主張しているのは兄のレッド・バレットの方だけで、弟であるはずのロナルドはこの件に関してだけは固く口を閉ざし続けている。
     それはまあ、別にどうでもいいのだが。問題はロナルドの表情だ。いつも太々しいまでに尊大でキザに振る舞う男が、能面の様にうつろな顔でレッド・バレットの前に立ち尽くしている。
     あの、退治人ロナルドが。立っているだけで忌々しいほど存在感を放つ男が、まるで糸の切れた人形みたいに覇気のない姿をしている。
    「────」
     半田の中で、何かが ぶつり、と切れた。
     あとはもう、後先を考える余裕も無かった。その場を蹴る様に飛び出して、距離を詰めて、ロナルドの肩を背後から抱き寄せる。半田の接近に気付いたレッド・バレットが驚いた風に目を見開く。ついで、油の切れた人形よろしく ぎぎぎ、とぎこちない動きで振り向いたロナルドが、ぽかんと口を開いて、「ほァ、」と間抜けな声を上げた。無様な反応に少しだけ溜飲が下がる。
    「へ、あ、……おま、なんで、」
    「人の誘いを断っておいて浮気とはいい度胸だな」
     ロナルドが余計なことを言う前に、わざと煽る様なセリフを吐く。嘘をつくのは苦手なので我ながら随分と棒読みになってしまった気がするが、レッド・バレットのにこやかな笑みを強ばらせるには十分だった。
    「えー、あー……何じゃ、もしかしてデートの約束があったんか? そんなら邪魔するのも悪いし、兄ちゃんはそろそろお暇しようかの」
    「? 微笑ましそうな顔すんなムカつく」
    「……そこの彼氏さんも、その、すまんな。うちの弟はほんのちょーっと反抗期気味なだけで心根は優しいええ子なんじゃ。どうかよろしく頼む」
    「……」
     てっきり何かしら文句を言われるものだと思っていたのだが、レッド・バレットは若干動揺しつつも半田の存在を受け入れた。まさかすんなり許容されると思っていなかったので、半田は思わず無言になってしまった。
    流石にロナルドの兄を前にして、実は自分たちに肉体関係はあっても交際関係どころか友人関係未満に過ぎない、などとは口が裂けても言えない。しかし自分がロナルドの彼氏としてよろしくされるのもかなり違和感があった。嘘に嘘を重ねるなんて、半田には完全にキャパオーバー状態だ。まさか今からロナルドの彼氏として演技しなければならないのだろうか。何だその鬼畜なミッションは。
     想定外の事態にとうとう半田が知恵熱を出しかけたときだった。それまで大人しく肩を抱かれていたロナルドが、するり、と腕を組んできた。半田の首筋を柔らかい髪の毛がくすぐる。鼻先を掠めたロナルドの匂いに、半田は思わず息を呑んだ。
    「……ま、ともかくそういうこった。俺らはもう行く」
    「お、おう。……なあ、ところで次の休みは一緒に飯でもどうじゃ? 何ならそこの彼氏さんも一緒に、」
    「次の休みは頭痛になる用事があっからパス」
    「せめてバレない嘘をつく努力ぐらいしてくれんか⁉︎」
     全力で吠えるレッド・バレットを尻目に、ロナルドは回れ右をして躊躇いなくその場を後にした。腕を組んでいた半田も当然ながら引きずられる様にして共にその場を離れることとなった。ちらりと後方を確認すると、「何でじゃ……昔はにーににーにってあんなに可愛かったのに今はちっとも会ってくれん……」と打ちひしがれるレッド・バレットの姿が見えた気がして、半田は咄嗟に目を逸らす。
     もしかすると自分は余計なことをしてしまったのかもしれない、と今更になって反省した。もし次に顔を合わせることがあったら、せめてもの詫びに自分の収集したロナルドの秘蔵写真でも進呈しようかと思う。だが、哀愁漂う兄の姿も、罪悪感に駆られる半田の内心も知らず、事の発端たるロナルドは更に爆弾を落とした。
    「なあ半田、さっきのあいつの顔、見たか?」
    「……は?」
     一体何の話だ、と聞こうとした瞬間、ロナルドはいきなり半田の首筋に抱き付いて、伸び上がる様にキスをした。
     頬をくすぐる髪の毛の感触と、かさついた唇の温もりに くらり、と目眩がする。幸い周囲に人気はなかったが、仮にも天下の往来で何をしているんだ! と目で問えば、ロナルドはニィッと唇を吊り上げて微笑んだ。
    「あのレッド・バレットが、俺に彼氏がいるって思い込んで動揺したんだぜ! あいつのあんな間抜けヅラは初めてだ!」
    「……」
    「いやーお前ほんっと最高だわ。感激しすぎてお前に抱き付いてキスしてやりたくなった。なんだったら礼にもっとサービスしてやるけど、お前って今晩は暇だよな?」
    「…………」
     そのとき半田の胸中には諸々の言語化しがたい感情が渦巻いて嵐を巻き起こしたが、最終的にとある結論に至った。

     よし、とりあえずこいつは今夜絶対泣かそう。
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    r0und94

    INFO【アンソロ寄稿のお知らせ(サンプル付)】
    2022/12/11 半ロナオンリーにて半ロナ学生アンソロジー「放課後の運命論」に参加させていただきました!
    ◯は夏を担当させていただいております〜。高1の頃のまだ距離感が掴めきれてない半ロナだよ! 全年齢で初々しい感じの二人だよ!!
    よろしくお願いいたします〜
    おれたちの夏はこれからだ!!(冒頭サンプル)「お前らはもう高校生になったんだから分かってるだろうが、休み中は羽目を外しすぎるなよー。ああそれと、期末で補習になった奴は特別課題を出すから職員室に各自取りに行くように」
     今日はここまで、と担任が話を切り上げたのを合図に教室から一斉に同級生たちが引き上げていく。明日からの予定について騒ぎ立てる声は、一夏を謳歌する蝉時雨にどこか似ていた。
    (どいつもこいつも、何でこんなに夏が好きなんだ?)
     級友たちがはしゃぎ回るのを、半田は窓際の席に座ったまま他人事の様に眺めていた。
     昔から夏は得意になれない。体質のせいで日に焼けると肌が火傷したみたいに痛むし、夏場の剣道の稽古は道着のせいで軽い地獄だ。それに、夜が短くなるせいで母と過ごす時間が少なくなってしまう。嫌いとまでは言わないが、好きになれる要素が少ないからどうしても気が重たくなる季節だ。
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