それぞれが悪魔と天使の設定でキスから関係が始まるじゅゆあなたは6時間以内に8RTされたら、それぞれが悪魔と天使の設定でキスから関係が始まる👾🦀に落ちましたのじゅゆの、漫画または小説を書きます。
「アダムとイヴって知ってるか?」
突然の質問に遊星は目を瞬かせた。質問の主はいつも通りゆったり大樹に身を任せて寝転んでいる。手入れをしていた剣を鞘に戻した後顔を上げ、寝転んでいる相手…十代を見れば彼は口に弧を浮かべながら遊星を見ていた。
「…それは勿論。神の『愛し子』ですよね?」
「それから?」
「…楽園の追放者」
「それから?」
「ええと、土から生まれた存在がアダムで、アダムの肋骨から創造されたのがイヴ…でしたっけ」
「それから?」
「……これ以上は」
追撃のように深く聞かれればとうとう遊星が白旗をあげた。持っていた剣を膝に下ろし、隣の人物に質問の意図を聞こうと口を開く。
「急にどうしたんですか?」
「いや?どこまで知ってるのかな~って思っただけだぜ」
「…」
半眼になり飄々とした態度の十代に向けて溜め息を溢す。
この不思議な天使に出会ったのは数百年前だった。
遊星は天使にしては珍しく勤勉であった。
天使は上位三隊から下位三隊にかけての位があり、下位になればなるほど自由奔放な性格の天使がいる。生まれたばかりなら尚更だ。天真爛漫、その文字が如く同期の皆は自らの行いたい行動をとっていた。その中で遊星は異質の子供だった。自分の意思で考え、動く子供だったのだ。したいように動くのではなく、目的があるから動く。そうした行動は上位天使に驚かれるものだった。そのせいか一介天使(エンジェル)からの昇格は早く、今では中位三隊の内の一隊、能天使(エクスシア)の役割を与えられている。
この役職は主に悪魔との戦いにおいて前線を担う者だ。神の意向に背くことはせず、全ては神の為に注ぐ忠実なる部下、それが能天使。悪魔との接触が多いせいか、堕天してしまう天使が多いが遊星は一度たりとも信念を揺らがされたことがない。戦う事は好きではないが、一介天使だった頃を思えばこちらの方が天職な気がした。
魔界との全面戦争が始まり、終る頃には大勢いた同胞達が少なくなっていた。それに悲しむ暇もなく天啓の元、日々を戦で過ごしてきた。ようやっと休める日が増えた頃、遊星は安寧を求めて天界の深く入り組んだ森へと羽を休めたのだった。
そこは神聖な気が充満した土地だった。下手をすれば一介天使などではこのエネルギーに耐えられず、発狂してしまうかもしれない。しかし遊星にとってこの森の空気は安らぎを覚えるのに充分だった。決して小さくはない規模の森を散策していく内に明けた空間に出る。中央には光に反射して美しく光る湖が見え、奥には大樹が聳え立っていた。
「…?」
大樹の側に、小屋のような建築物が建っている。不思議に思い、近づく遊星に後ろから声がかかった。
「珍しい。こんな所に何の用だ?」
「!?」
能天使になってから気配に敏感になっていた遊星は、自分が背後をとられる事に酷く驚いた。振り返れば遊星の様子を眺める天使の姿があった。しかしその背中には天使の象徴である白い翼が存在しない。あえて見えないようにしているのだろうか。
「…お前は、誰だ」
警戒しながら腰に携えている剣の柄に手を添える。そんな遊星を見た天使は自分は何も持っていないと両手を上げた。
「…」
丸腰の相手に向ける剣を持っていない遊星は警戒を消さないまま、手を下ろした。質問の答えを貰う為に視線を天使に向ける。
「俺は十代。ここに幽閉されてる天使さ」
「幽閉?」
「そうそう」
「どうして」
「あれ?キミ、知りたい天使なのか?」
ぱちくりと二、三回瞬きした十代と名乗った天使は遊星をまじまじ見た後、困ったように眉を寄せた。どうやら彼にとっても遊星は珍しい天使のようだ。
「話したくないのなら別に構わないが」
「いいや。言ってもいいけど…これを知るということは、キミにとって不利になる可能性が高いぞ?」
「構わない」
「ぶはっ即答かよっ。…いいぜ、気に入った」
笑った十代は立ち話も何だし、と小屋へ勧めてきたが遊星はそれを断り、話を促した。
「そっか?ならあそこに場所を変えるか」
指で示したのは湖の近場に生えた大木。それならば…頷いた遊星は十代と共に大木の根本に座った。
「改めて。オレは上位三隊の内が一人智天使(ケルビム)の十代だ」
自己紹介してくる天使、十代に遊星が驚いて固まってしまった。そんな遊星の様子が面白かったのか十代が大きく口を開けて笑い始める。
「ははっ………あー面白いな、キミ」
「す、すみません、まさか上位三隊の方だとは露知らず」
「いーよいーよ。さっきも言ったけど、俺幽閉されてて職失ってるもんだからさ」
瞼に浮かんだ涙を拭いながら笑い続ける十代に遊星は申し訳なさで縮こまるしかなかった。
「それで、その…幽閉とは?」
「あっそうだな、それの説明をしねぇとな」
相手がどれだけ上位の天使であったとしても、そうなった理由を知りたい。遊星は失礼と知りつつも先を促した。
「俺が智天使ってさっき言ったよな?その字が如くまぁ、他の天使よりか知識を持ってる訳だ」
少ししか話していないが、とても知識人とは思えない様相の十代の説明に生返事しか返せない。そんな遊星に気づいたのか、十代がからかい気味に頭に触れそうになり…止めた。
「?」
自身の手をぼんやり眺めた後、何事もなかったように手を納めてしまう十代に遊星は不思議がる。
「俺はな、天使としてあるまじき思考になったんだよ。仕事を重ねていく内に『神は本当に絶対なのか』ってね」
「…!?」
流石の物言いに遊星は瞠目するしかなく、十代をまじまじと見つめた。苦笑を溢した十代は空を仰いで大樹に寝そべった。
「だってよ?神の決めた御意志だからって言って人の運命を終わりにしていい訳じゃないだろ?」
「…」
十代の言っている意味が解らず首を傾げた遊星に例を出してくれる。
「例えばだ。これから先新しい学生生活が始まるって人間がいるとするだろ?でもソイツは神の御意志が決まったせいでその生涯をその日で終えるんだ。おかしくないか?」
「ですが神の御心なのですよね?来世は充分な生活が確定してるじゃないですか」
「そりゃ来世での話だ。その人間のじゃない。その人間だった奴が輪廻転生を経て生まれ変わった別人の話だ。死んだ元々の人間はどうなる?これから先の人生はどうなる?」
ちらりと遊星を見た十代の視線は空に向けられた。
遊星はといえば考えもしなかった思考に驚いた。人間についての人生を考えた事がなかったからだ。
「残された家族は?友人は?………そんな事を考えるようになった。そしてそんな思考は『堕天』への足掛けになった」
手を空に伸ばした十代は空気を掴み、そのまま掌で顔を覆ってしまった。乾いた笑いは皮肉を込めていそうだった。
「流石に『智天使』が堕天となっちゃ天界にとって良くなくってな。だからここで幽閉されてるって訳だ」
下級の天使ならば堕天した所で処分するのが常だ。しかし智天使ともなれば失えば天界にとっての痛手になる。神が悩んだ末の処置なのだろう。
「俺が羽根出してないのに不審がっただろ?…色が黒く変色してるんだ。だから隠してる」
遊星が気になっていた翼の件はどうやら堕天が原因のようだった。納得した遊星は、先程の十代の行動もその一環なのだろうかと予測した。試しに十代に向けて手を差し伸べてみる。
「おっと。俺に触るなよ。もしかしたら伝染するかもしれねぇからな」
予測通り、十代は遊星から離れた。さて、と十代は立ち上がり、遊星を見下ろした。
「キミが聞きたいことは言った。もう俺に用事はないだろう?ここが気に入ったっていうなら好きなだけ居ればいい」
要件だけ伝えた十代はそのまま踵を返した。
「ぁっ」
遊星は思わず十代の服の裾を掴んだ。急に止められた反動で十代が後ろに傾く。
「わっ」
「ぅ!」
遊星も十代も突然の出来事に受け身をとれず、ぶつかってしまった。先に遊星が前に倒れ、その上に十代が倒れ込む。幸いというべきか、十代は翼を隠している為、そこまでの痛さが遊星には無かった。翼は骨格がゴツゴツしていて当たると地味に痛いのだ。寧ろ痛いのは十代の方だった。
「ぃってぇ~…!?キミ、大丈夫か?!」
何が起きたのか解らず背中を擦っていた十代だったが、下にいる遊星に気づいて素早く退いた。