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    ジャンルもカプもごちゃごちゃ
    2023-11-15 xに投稿した作品の移動が完了?

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    先黒 マエゴル 4人をあの部屋にぶち込んだけど本番はしてない 色々読み返しはしたけど設定まわりはフィーリングです 続きが思いつかなかったのでぶつ切りで終わってます

    先生、黒服、マエストロ、ゴルコンダとデカルコマニーの4人、あるいは5人は突然同じ部屋へ連れてこられた。
    といっても、何者かに腕を捕まれ、無理やり引っ張られてきただとか、頭を殴られ、気絶させられた後運ばれてきただとか、そういうことではない。
    4人は別々の場所にいて別々のことをしていたはずなのに、仮眠から目覚めたら、パソコンの画面から顔を上げたら―何気ない動作をした次の瞬間にはこの場所に立っていたのだ。
    頭をのせていたはずのクッションも、両手を置いていたはずのキーボードも消え失せて。
    部屋は成人男性と成人男性の姿をしたモノが4人立っていても余裕があるくらいの広さだ。
    多少手足を折り曲げれば、4人が同時に床に寝転ぶことも可能だろう。
    そして、部屋には1人で使うには持て余しそうな大きなベッドが2つと、ドアが1つしかない。
    4人で一緒にドアノブを引っ張っても、肩で押してもビクともしなかったドアの上にはこう書かれたプレートが掲げられている―「SEXしないと出られない部屋」


    「何なのこの部屋は!どうしてこんな目に!」
    両手を握りしめ、宙に向かって先生が叫ぶ。
    時計がないので正確な時間は分からないが、4人がこの部屋に閉じ込められてから数十分が経っただろう。
    さきほどの先生の叫びも、5回目か6回目になる。
    先生、黒服、マエストロは部屋の中央あたりに座り、ゴルコンダとデカルコマニーは壁にそってゆっくりと歩きながら、あちこち視線を向けて、あるいは手で直接触れながら、部屋を観察していた。
    「私にはやらなきゃいけない仕事も生徒との約束もあるのに!」
    これも、既に何度か叫んだことだ。
    「まあまあ、落ち着いてください、先生。叫んでも出られるものではありませんから。むしろ、いつ出られるのか分からないのですから、体力を無駄に使わない方がいいでしょう」
    黒服がそう言ったが、その落ち着いた様子がかえって先生をますます興奮させる。
    「私のタブレットもカードもどこかに行っちゃったのに落ち着いてられるわけないでしょ!デカグラマトンとか、ミメシスとか、あなたたちの訳の分からないものであのドアを壊してよ!」
    「訳の分からないもの……ですか。あれらは私たちが崇高へと辿り着くための道筋……あるいは手段です。先生にはぜひそれを理解していただきたいのですが……。それはともかく、デカグラマトンに関しては、私はそれらを管理しているわけではなく、観察し、研究しているだけですから、ここへ呼び出したりはできません。
    それに、誰かに助けを求めようにも、先生と同じく、携帯やパソコンなど、私の持っていたはずのものはどこかへ消えてしまいましたし、この部屋が一体どこにあるものなのかも分かりませんし……。
    あなたの能力は使えないのですよね、ゴルコンダ?」
    ゴルコンダが足を止め、黒服と先生を振り返る。
    「ええ。私の能力はあくまでもテクストを付与するもの……解釈というものはそもそも存在しないものに対しては出来ませんからね。
    たとえば、ヘイローを破壊する爆弾ですが……言うまでもなく、爆弾はそもそも人間の体を傷つけ、命を奪う能力を持ったものです。
    ここには武器の類はおろか、本来の用途でないにせよ、そういったものになりうるもの……先のとがったものだとか、それなりに重さがあって手に持って何かにぶつけられるものすらありません。
    まあ、通常ならばそれと到底結びつかないようなテクストを付与することも可能といえば可能でしょうが……なかなか骨が折れることでしょうね」
    「じゃあ、マエストロは……」
    「我々は、崇高を共に目指す同志であり、それぞれ異なる才や能力を持った尊敬すべき者であり、互いの理解者となりうる者だ……それをこのように低俗で悪趣味な部屋に閉じ込めるなど我々への侮辱に他ならない。
    私も一刻も早くこの部屋を出たいところだが……私たちの作品をここへ呼ぶことはできそうにない。私たちの作品はそれぞれが生み出された場所と深く結びついているからな。こんな場所では新たに作品を生み出すこともできない。……すまない、先生」
    「そうなんだ……」
    マエストロも先生も、うつむき、肩を落とす。
    ゴルコンダはそんな2人を見ながら―といっても、ゴルコンダは後ろを向いているので、正確にはデカルコマニーに自分の入った額縁をそちらへ向かせながら、不思議そうに言う。
    「……私はもう少しこの部屋を調べていたいのですが……皆様はすぐにでもこの部屋を出たいのですよね?ならばあのプレートに書かれたことを実践するというのは駄目なのですか?」
    「え?」
    「何?」
    先生とマエストロは思わずゴルコンダを見る。
    「プレートの隣に電光掲示板のようなものがあります。そこには、2分の0と表示されていますから、おそらくあれが2分の2になればドアが開くのでしょう。単純に考えれば、私たちはちょうど4人なので2人組が2つ作れますから、それぞれが性行為をすればよいということなのでしょう。あのドアを破壊するよりも、ずっと時間も労力もかからないと思いますが」
    「いや、それはそうなんだけど……」
    先生が眉を寄せる。
    先生も、おそらく他の2人もこの部屋がそういう仕組みであることは予想している。
    しかし、今までゲマトリアは、直接的にも間接的にも生徒たちを悲しませ、苦しめ、傷つけてきた。
    先生自身に対してもそうだ。
    愛情がなくてもSEXを行える人間もいるだろうが、自分はそうではない。
    なので、あまり彼らと積極的にそういうことはしたくない。
    また、個人的な感情を抜きにしても、
    「そもそも、あなたたちゲマトリアにその……そういう行為はできるの?」
    「実は、私はさきほどからそこに興味を持っているのです。この部屋を作り出した者は、どうやら私たちにも性行為は可能だと考えているようです。ですが、私たちに生殖活動というものは必要ありませんから、当然そのための器官もありません。ですが……」
    ゴルコンダとデカルコマニーは先生に近づき、しゃがむ。
    もしゴルコンダが前を向いていたならば、先生と目を合わせるような形になる。
    「それでも私たちはヒトに近い姿をとっているわけですから、私たちに生殖器があるというテクストを付与することも不可能ではないかもしれません。そうすれば、性行為が可能になるのではないでしょうか?私たちには私たちすら知らなかった可能性があるかもしれない……私はこれを実に興味深いと感じます。そう思いませんか、先生?」
    「わ……私に聞かれても……」
    いつも通り落ち着いた雰囲気で、しかし滔々と語るゴルコンダの様子からは大きな熱が感じられ、それに気圧されながら先生が言う。
    ゴルコンダが立ち上がる。
    「そうですか、それは残念です。……マエストロはこの部屋に強い拒否感を持っているようですし、私も自分の考えを押しつけるつもりはありません。黒服、あなたはいかがですか?」
    「私は……そうですね……」
    そこで、黒服はちらりと先生を見る。
    「……?」
    先生には何故自分が見られたのか分からない。
    だが、胸の奥で何か嫌な予感が生まれた。
    「ゴルコンダ、実は私はあなたの疑問の答えを知っています。とはいえこれが、私だけではなく、ゲマトリア全体に当てはまるのかは分かりませんが」
    「ほう。というと?」
    「私は……体を重ねたことがあるのです。先生と」
    「黒服!?何を言ってるの!?」
    先生が黒服の肩を掴む。
    「何!?」
    マエストロも驚きの声を上げる。
    「できればその時のことについて詳しく教えていただきたいのですが……あなたのプライベートに踏み込んでしまうことになりますね」
    「ええ、そうですね。私と先生だけの秘密ということで。ククッ……。まあ、そういうことですので、私はあのプレートの言葉に従うこと自体には特に不満はありません。私にも、この部屋を出てやらなければならないことが色々とありますので。ですが、他の人に見られながらというにはどうにも……。私にも羞恥心というものがありますので。クククッ……」
    黒服は冗談なのか本気なのか分からないことを言う。
    「く……黒服……あなた、何を……」
    先生は、黒服になぜあんなこと言ったのか問い詰めたいし、文句をぶつけてやりたいし、他の2人に対して弁明をしたいのだが、怒りと羞恥と困惑で全く言葉がまとまらない。
    マエストロはまだ驚きから抜け出せないようで、
    「黒服……?先生……?まことか……?」
    と黒服と先生を交互に見ている。
    「でしたら、もしプレートの言葉に従うとして、その時は黒服と先生、マエストロと私で分かれるということでよろしいでしょうか?」
    「私は構いませんよ」
    「ちょっと待って!私と黒服はたしかに……そういうことをしたことはあるけど、それだけで、別に恋人でもなんでもないし……」
    「おや、そうなのですか?たしかに、性行為というのは互いに恋愛感情を抱いた人間がするというイメージが強いものの、そうとも限らないことは私も知っています。ですが、私には先生が誰彼ともなく肉体関係を持つ方には思えません。ならば何故……?」
    「そ……それは……」
    「先生は大人の男性ですから、当然そういう欲求が……つまりは性的な欲求があります。それをぶつける先として、生徒ではなく、むしろ生徒に危害を加えたことのある私は、色々と気を遣う必要もなく、むしろストレス発散にもなってちょうどいいんでしょう。私も、私しか知らない先生の顔があるというのは……なかなか気分が良いですしね。ククッ」
    「なるほど」
    「黒服、あなたは黙ってて!」
    「ゴルコンダもマエストロも口は固いですよ。生徒のところへ行って我々の関係を言いふらすようなことはしませんから、安心してください」
    「そういうことじゃない!」
    「それに、先生もこの部屋から早く出たいのでしょう?ですが、我々はほとんど手は尽くしたと思います。あと試すことといえば、プレートの言葉に従うことくらいでしょう。ならば、既にそういう行為をしたことのある相手の方が色々と都合がいいと思いませんか?それとも、先生は私ではなく2人のどちらかの方がよいのでしょうか?それは妬けますね……ククッ……」
    「なっ……違う!」
    「でしたら、何がご不満なのですか?」
    「私が1番あなたに文句を言いたいのは、あなたが勝手に私たちのことを2人に話したことだよ!あなたもそれは分かってるでしょ!」
    「さて、それはどうでしょう……ククク……」
    「あなたは……!」


    先生と黒服の2人はずっと、先生が何かを言ったのを、黒服がはぐらかしたりからかったりして、余計に先生を怒らせたり、たまに黒服がまともな返事をして先生が言葉に詰まったりするのを繰り返している。
    おそらく黒服は先生の反応を楽しんでいるのだろう。
    もうゴルコンダが口を挟むことはできなさそうなので、マエストロに声をかけることにした。
    マエストロはまださきほどの突然の黒服の告白を飲み込めてないようで、賑やかに会話をする黒服と先生を黙って見つめている。
    「マエストロ」
    「……っ!なんだ?」
    「私は自分の考えをあなたに押しつけるつもりはないと言いましたが、私の個人的な興味を抜きにしても、やはりこの部屋から出るにはプレートの言葉に従うのが1番だと思います。黒服の言った通り、私たちは取れる手段はほとんど取ってしまいましたし」
    「……」
    マエストロもそのことは分かっているのだろう。
    何も言い返さない。
    「それに……」
    とゴルコンダはマエストロの隣に座る。
    そして、マエストロの下腹部に―ヒトならば生殖器官があるであろう場所に触れた。
    「ゴルコンダ……!?」
    「マエストロ。私たちはそれぞれが異なる姿を持ち、異なるテクストを持っている。そんな私たちが体を重ねた時、それぞれのテクストはどうなるのでしょう?混ざり合うのでしょうか?反発するのでしょうか?それとも、何の影響も受けることはないのでしょうか?また、性行為をするために、私たちに新たなテクストをつけ足すとすれば、それもその時にはどうなるのでしょう?
    それに、考えてみれば、私はあなたがあなたの姿をどう作り上げたのか、その全てを見たことがありません。
    私は知りたいのです。この世界に無数に存在し、我々を取り囲む記号と解釈というもののことを、あなたのことを、私のことを、もっと。そうすれば、私は記号と解釈について、新しい発見を得られるかもしれません。あなたも、何か新しいインスピレーションが得られるかもしれません。私たちの得た発見やインスピレーションは新たな作品を生み出し、私たちは崇高へより近づけるかもしれません。
    同じゲマトリアとして、表現者として、私と共に、未知の領域へ踏み込み、それを探求してはみませんか、マエストロ」
    マエストロには、ゴルコンダが部屋を出るためにもっともらしいことを言っているわけではないことが分かる。
    ゴルコンダは本気で、未知なる行為に関心を持ち、それにマエストロと共に挑戦したいと思っている。
    マエストロのこの部屋の創造者の思惑にのりたくないという気持ちは揺るがないが、崇高を目指す同志であり、尊敬すべき表現者であるゴルコンダからの、それぞれの表現を高められるかもしれない可能性を共に試してみないかという誘いは―とても魅力的だった。
    「……ゴルコンダ……」
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