真夜中のHappyBirthday2月8日、冨岡の誕生日は俺も冨岡も仕事だが、翌日は揃って休みだったので仕事が終わったらうちに来る約束になっていた。昼までの勤務を終えて自宅に帰った俺は夜8時までの勤務を終えてからうちに来る冨岡を迎えるための準備の真っ最中だ。俺も冨岡も甘い物が特別好きというわけではないのでホールケーキを買ったところで処理に困るだろうとホテルのレストランでテイクアウト出来るケーキを2つ買ってきている。甘すぎないのできっとお2人でも食べやすいと思いますとカットケーキにも乗せられるくらいの小さなバースデープレートを作ってくれた甘露寺が勧めてくれたので大丈夫だろう。
「あれ、メッセージ来てる。」
夕飯の準備を終えてリビングに戻って来たらテーブルの上のスマホが光っていた。メッセージアプリを起動すれば送り主はもうすぐ仕事を終えてここに来るはずの冨岡。なんとなく内容を察することが出来てしまって溜め息と共にトーク画面を開く。新人が起こしたトラブルに巻き込まれてしまったために時間通りに上がれないことと、時間が遅くなるから今日訪ねるのはやめたほうがいいかという問いかけのメッセージが送られてきているトーク画面に、時間が遅くなることへの了解と遅くなっても良いからおいでというメッセージを送っておく。見る時間は無いだろうがメッセージを送ってきているので帰るときにはスマホを確認するだろう。トラブルの対処で忙しいだろうにその合間を縫ってメッセージを送ってくれただけで、冨岡が俺との約束を気にかけていてくれたことがわかる。夜ふかしは苦じゃないし時間が遅くなってもここに来てくれるだけで充分だ。
「遅くなってしまってすまない。」
「冨岡のせいじゃないだろ?謝ることなんてないよ。お疲れ様。」
冨岡がうちに来たのは23時を回った頃だった。疲れているだろうと先に風呂に向かわせてキッチンに向かう。お腹は空いていると言っていたが誕生日の祝いのために作った料理ではこの時間に食べるには重たいだろう。冷蔵庫に有った鮭フレークを使って簡単に2人分のお茶漬けを作る。
「…食べずに待っていてくれたのか?」
「あー…まぁ、1人で食べるより2人で食べたほうが美味しいだろ。」
申し訳無さそうな顔をする冨岡に、俺が一緒に食べたかったのと言って頭を撫でてやる。俺様が腕によりをかけて準備した料理は明日にしようなと言えば、楽しみにしていると冨岡が笑った。
「なぁ、こんな時間だけどケーキ食べられる?」
「ふふっ。ケーキも買ってくれたんだな。宇髄が買ってくれたケーキ食べたい。」
夜遅くにケーキなんて子供の頃には出来なかったと冨岡が笑うからもう1つ子供には出来ない楽しみを準備してやることにした。
「これは?」
「アイリッシュコーヒー。こんな時間にケーキとお酒なんていかにも大人の楽しみだろ?義勇、誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」
時計が示す時間は23時59分。
ホットカクテルが入ったマグカップをカツンと打ち鳴らした。