『子犬のワルツ【1】』それは秋公演を数日後に控えた休日のことだった。
「あ、鳳。お前今、手が空いてるか?」
「はい。なんでしょう、白田組長。」
自主練をしていた稽古場の出入り口で、水を買いに出たところで鳳京士はクォーツ組長の白田美ツ騎に呼び止められた。
「今度の公演で使う小道具、取り寄せ注文してたやつがやっと届いたから、お前、街まで取りに行ってくれないか?」
「はい。喜んで。」
「その場で品物の確認をちゃんとして欲しいから、判るやつに行って欲しくてな。面倒だけど、頼む。」
「わかりました!この鳳にお任せください。」
白田に役目を任されて、鳳は胸を張って応える。
「あ、店の位置だけど、ちょっとわかりにくいとこに在ってな。発注するとき立花と行ったから、立花が知ってるから。今日は立花はすでに街に降りてるから待ち合わせして合流して向かってくれるか。」
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