余裕こきすぎた! もしかして、とその気配に気付いたのは夏の終わり頃だった。昔から人から向けられる好意には敏感で、「ないな」と思ったらなんとなく距離を置いたりした。そして珍しく「ありかも」と思えたのが、親友の部活の先輩である三井寿という男だった。
親友の部活の先輩なので、俺たち二人の接点は薄いはずだった。けれど、屋上で昼寝をしている時、購買で昼メシを買ってる時などによく出くわした。今思えばあれは、三井さんが意図的に俺に会いに来ていたのかもしれない。
俺は三井さんのことを「ありかも」とは思ったが、すごく好きかと訊かれたらそこまでではないと思っていた。なので好意に気付いていても、思わせぶりな素振りすらしていなかった。だけど好きだと伝えられたら、その想いに応える覚悟はしていた。三井さんとなら付き合ってもいいし、キスだって出来る。
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