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    kaminaroy14

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    kaminaroy14

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    不思議な感じを出そうとして撃沈したコンスタンの語り系物語

    #コンスタン
    constantan

    とある鬼の話し【コンスタンの語り】






    (降りしきる雨の音)




    (揺れる明かりのパチパチとした鳴き声)




    (退屈そうな息遣い)





    暫くは止みそうに無いな。
    一つ、暇潰しに物語を聞かせてやろう。



    (向けられた視線のが3つ。待ってました!と言う眼差しと、暇だし聞いてやるよと言う視線と、怖い話は止してくれ!と言う視線。
    あと二人居たが、一人は敵が来ないか警戒したまま洞窟の入り口を睨み付け、もう一人は洞窟の入り口辺りで涙を流す空を眺めながら煙を揺らしていた。)



    あれは、俺が真っ白な平たい雪原を歩いているときの事だ。
    雪は見飽きるほど見てきたが、その日の雪はいつもと違っていた。
    休憩に数日滞在していた村を出るとき、そこの村長にこの先には暫くは村はおろか人の住む場所など無い、と伝え聞いていが進む先に足跡が見えた。
    その足跡は、崖下の方からやって来て俺の向かおうとしていた場所とは違う方へ伸びている。
    あちらの方には森と険しい山があるだけで何もない。
    足の大きさは、俺と同じくらい…男性だろうか。
    赤黒い跡を残しながら、転々と迷わずまっすぐ人の気の無い道無き道を進んでいた。

    怪我をした光霊がいるのかと思った俺は、目的地とはそれるがその足跡の進む先へと向かう。
    雪は確か、最後に降っていたのは2日前。
    足跡と血が残るにはその後の出来事ではならない。
    平原はいつしか森に姿を変え、平坦だった道は傾斜を増していく。
    足跡は変わらず山を進むが、時折血だまりを作り傾斜を転がっていた。
    数が増える訳ではないその跡を追いながら、

    随分と衰弱してきているようだ。
    何者かに追われるでもなく何処へ行くつもりだ?

    ふと視線をあげると小屋を一つ見つけた。
    足跡もそちらの方へと向かっている。
    坂道を上りきると、そこが朽ち果てた集落であることがわかった。
    村は無いとは聞いていたが…。
    いや、この人の居ないこれを村と呼ぶかは人それぞれか。等と思いながら足跡の主の行方を探す。
    朽ち果てて暫くはたっているようだ。
    性別のわからない骸が幾つも転がっている。
    俺が足を止めたのは、辛うじて家らしい形を保っている小屋の前。
    引き摺るような血のあとは奥へと続いていた。

    俺はわざとらしくコンコンと壁を叩き、扉をなくした玄関を抜ける。ギイギイと大袈裟に軋む床を無視して進むと、そこには足跡の主がいた。
    暗がりに力無く座り込んでいたソイツは俺をまっすぐに見詰め、そして青く澄んだ瞳は静かに伏せられた。

    主はまだ生きていたと安堵するも、近寄り治療してやろうと思って確認した体は光霊のそれではなかった。
    下半身こそ俺と変わらないが、爪は鋭く、黒い毛皮を着込み、唇から覗く牙と、頭から痛々しく伸びた角。

    暗鬼。

    俺が微かに身を引いたことに、黒いそれはくつくつと笑って、こう言った「俺を殺しに来たのか?」と。
    暗鬼が公用語を話すことに驚いたが、それよりも彼に敵意も殺意も無いことの方が驚いた。
    「好きにしたら良い」と、続けるものだからこちらとしても彼にその様な感情を抱く理由も無く、鞄から水と包帯を取り出して彼を治療した。
    「何をしている」「次の瞬間お前を殺すかもしれないぞ」「余計なことをするな」彼は口々に俺の行動を制する事を口走ったが、最早指一つ動かすことが億劫になっている彼に俺を止めることはできなかった。

    そして、俺が満足する頃には辺りは暗く雪に音を吸われた外界は不気味なほど静かだった。

    「ここで何をしている?」
    俺が問いかけると、青い瞳がゆっくりとこちらに向けられ、ゆっくりと逸らされ……左右で形を歪ませた口元が言いづらそうに「人を待っている」と、告げた。
    「元々此処に住んでいた。一月ほど前に暗鬼が雪崩れ込んできて、村人が逃げ惑う中俺と彼女は引き離された。此処は彼女との約束の教会だ。きっとまた来る…」ぽつりぽつりと続ける横顔を見ていると、彼が暗鬼であることを忘れそうになる。
    何故その様な姿に…?聞くと彼はわからないと首を振る。暗鬼に襲われて、目が醒めたらこうなっていたと。
    「ただ、日に日に意識が遠退いていくんだ。彼女の顔さえ歪んで行く。小鳥のような声も…深い海の底に消えていってしまうんだ」
    暗鬼は寂しそうに語る。
    「彼女の名前だけが、俺の記憶」
    首から下げた金の美しい指輪を愛しそう青の双眼が見詰めた。宝石が一粒あしらわれたそれは恐らく結婚指輪だ。
    「君の全てを奪われる前に、俺は……」
    その言葉を言い切る前に、がくんっと彼から力が抜けるのを感じ、慌てて近寄ったが寝息が聞こえてきて睡魔に拐われたのだと知る。
    こちらに敵意はないとはいえ気を張っていたのだろう。限界に達し急に電池が切れたのだ。
    俺は、そのまま彼の横で休むことにした。




    (不思議な出会いに期待を膨らませる眼差しが、それで?それで?と促す。)

    (怖い話ではないと察した一人は興味を示しながら、手元の茶を啜る。)


    (一人は変わらず警戒を続け、その見張りを続ける男に声をかけるもう一人。そして、煙草を無くしこちらの話題を聞きに来た男が一人。)


    (それぞれを見渡し、俺は物語を続ける)





    翌朝、眠る暗鬼をそこに置いたまま集落の回りを探索した。畑であった場所には実りの名残があり、ありがたく頂戴する。
    近くには小さな水源があり住みやすそうではあったが、人が戻らないと言うことはそれだけ人成らざる者がこの辺りを行き来するのだろうと察した。
    集落へと戻ると、暗鬼の姿が見当たらず彼の残した足跡を頼りに探す。あの傷でそう遠くへは行けないだろうし、何より彼は『待っている』のだ。
    目的はすぐ近くの花畑に転がっていた。
    1面のスノードロップが咲いた恐ろしさを感じる美しい空間に、黒い塊がごろりと。

     近寄ると鉄臭いそれはギョロりとこちらを捉え「まだ、居たノカ……」と、昨日よりも獣の様に膨れ上がった姿で唸るように呟く。瞳に昨日のような美しさは無く、どこか濁ったような赤い色へと変化していた。
    だが、変わらず敵意はない。

    「彼女と、研究を……シテ、毎日雪でも、枯れぬ花をツくっタ。これハ、俺達の、愛のカたチだ」

    のそりと体を持ち上げると、大型の熊ほどの暗鬼が花畑を見渡す。
    「花はシロいか、それトも、アカいか、くロイか。シロ、シロ……シ、シシシ」焦点の合わない瞳が、恐らく俺を見ていた。
    辺りを見渡し、真っ白なスノードロップが辺りを埋め尽くしている。「美しい白だ」告げると暗鬼は「嗚呼……」と、だけ呟いて集落の方へと地を鳴らしながら向かってしまった。
    色の概念が失われたのか、はたまた全く違う色に見えているのか。それは今の俺にはもうわからないが、声色には『良かった』といった感情を感じた。

    その夜も彼と過ごすことにした。

    何故?といわれると、そうだな『好奇心』だ。

    俺の愛用のスケッチブックには初めて彼と会ったときの姿や眠る姿、美しい瞳が変わっていく様が書き記されていく。そして、獣となってもまだ、彼が彼である事への好奇心は押さえきれなかった。

     翌日、目を覚ますと巨体は横に転がったまま「シシ死…記オク、カノ女は…死…」と、譫言のように呟いていた。
    俺が起きた気配を察知すると、不気味なほど真っ赤な瞳がこちらをじっと見つめてきた。

    「マダ、イタノか。俺が、はまだ、俺カ?」

    問い掛けられると俺は答えに困る。俺を数日の同居人として認識しているのを見ると彼は彼だが、意識の混濁加減は彼としてみるには姿も相まって異質なものだった。
    「たぶんな」と、だけ答え、その時の彼の姿をもしっかりと書き残してある。
    時折苦しそうに唸る彼は蝕まれていく理性に抗っているようで、俺には見えない何かと何か話しているようだった。

     俺はスケッチを終えると近くの水源に向かい、飲み水の確保と体を軽く洗い流すことにした。前日と同じように、朽ちた畑に自生した作物を拝借し、口へと運ぶ。
    みずみずしい野菜はこの寒さで凍りつかぬよう糖度が高くなり甘く美味い。
    飯盒の中に混めと野菜、そして多めの水をいれて粥の様にして頂いた。
    食事を終え、干し肉を食みながら後片付けをしていると集落の方からターン、ターンと物騒な音が響き渡る。

    俺には聞きなれた銃声だ。

    集落の方を気にしながらも後片付けを終え、荷物を背中に担いだときだった。
    すぐ後ろの茂みから二人の人影が表れる。集落の方から来たようだ。騎士の様な風貌の女性と、銃を抱えた軍人の様な風貌の男性。
    「ハンターか…。この辺りは危険だ、立ち去れ」女が俺に声をかける。「忠告ありがとう」短い会話。
    明らかに俺に警戒している。
    集落に向けて歩き出す俺を「待て」と、止めた。
    俺はそれを聞き入れた。

    「住み着いているのか?」
    「休むには過ごしやすい」
    「ここから少し南にいけば村がある」
    「俺はそこから来た」
    「ならば休んだばかりだろう。何をしている」
    「俺が休むのにアンタ等の許可でもいるのか?」
    「まて、答えろ!」

    また歩き出す俺に苛立ちを露にする女を止めたのは横に居た男だ。
    暫く雪が降らず足跡の増えた集落に戻ってくると、拠点として小屋の違和感に気付き駆け寄った。
    中を覗くと充満した鉄の臭いと、まだ赤い鮮血。
    「死んだのか」ギイギイと床をきしませながら歩みより銃弾を受け、脳天に槍を受けた獣を撫でる。

    まだ温かい。

    彼を確実に仕留めた槍をに違和感を感じて見てみると、チェーンに絡まった指輪……いや、ネックレスに指輪を通したものがかけられている。
    一瞬彼の物かと思ったがそれにはあまりに不自然で、この槍の持ち主のものだろうと察する。調べればやはり彼の首には彼の物がまだ下がっていた。

    「そうか」

    俺はその彼の指輪を見て確信した。


    その日、まだ日が高い内に山を降りた。
    帰り道は雪が降らなかったので迷うこと無く下山できた、開けた平原は数日の間に雪が降ったらしく歩いてきた足跡がすっかり消えていて、柔らかい粉雪はダイヤモンドダストとなってキラキラと輝いていた。
    随分と長い寄り道だったと思いつつも、本来の目的へと足を動かす。
    その時、自分の背後でターンと1度銃声が響いた気がして振り返る。
    雪山はそれを最後に静かに佇むだけだった。



    (話し終えると、二つの眼差しは不思議そうに続きを待つ。)



    なに、これで物語はおしまいだ。


    (告げると、それはそれは不服そうにされた。)



    (「騎士の女性は?」「軍の男性は?」「指輪はどういう事だ?」思い思いに質問が投げられた。)



    ふふ、さぁ、何だったんだろうな。


    (「オラ、雨止んだぞ、またお天道さんが機嫌損ねる前に巨像に帰るぞ」見張りを続けていた男が入口で声を張る。「ん、バートン。荷物こんだけだったか?あ、おい、タキ。お前の尻の下のそれだ。お前が運べよ」赤い髪を揺らして同じく大きな声が響く。「あ?やだよこんな重いの。」細身の男が荷物を蹴るので、それを俺がひょいと持ち上げる)


    喧嘩してないで帰るぞ。


    (「お、悪ぃね♡︎」調子良くお礼を言われて、鼻であしらってやった。「コンスタン、僕、後でスケッチブックみたいな」銀の柔らかい髪を揺らして隣にやって来る。「僕も、見てみたいかも。話す暗鬼」暗鬼にたいして強く興味を持つ少年も挟むように隣を歩く。)


    そうだな、巨像に帰ったら荷物を漁ってみようか。


    (消えた焚き火が崩れる音)


    (五人分の足音と、雨のかおり)


    (暗鬼と光霊。その時は不思議でしかなかったが、今なら分かる。彼はノラやスーモアと言う存在と、恐らく同じになりかけ、失敗した存在なのだと。もう、あんなに悲しくも美しい出会いが起こらぬよう、彼等と共に歩まねばならない。)


    (遠退く足音)



    (洞窟の側の朽ちた集落に目をやる。家は木に踏み潰され、家だったのかもわからない。)


    (その集落の家の一つ)


    (獣と人の骸が重なりあっていた)


    (そして、静かに風がそこを通り抜けるだけ。)



    END
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