けたたましい警報音が、敵襲を報せる。
エマージェンシーコールを受けたキースと俺は、ジャックから指示された場所に向かって即刻出動した。すでにタワー内は酷く被害を受けているようで、セルを逃げ出したアンノウンたちも各所で『ヒーロー』たちに苦戦を強いていた。
「おいディノ、ちょっとスピード落とせ」
「うん」
後ろから聞こえるキースの呼びかけに肯定の意思を示したが、あいにく俺の足は止まってくれそうになかった。
脱走者。告げられたその言葉が、頭からずっと離れない。タワーから逃走した日の記憶が断片的にフラッシュバックする。
(ちがう、)
通り過ぎる視界に映る荒らされたタワー内が、傷ついた仲間たちが、制圧されるアンノウンたちが、俺の頭の中に残るゼロの記憶と重なって、呼吸が浅くなっていく。苦しい。けれど、立ち止まるわけにはいかない。
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