🕶🐈⬛_
「っ…、ふ、…ンっ」
雰囲気に酔って、お互い見つめあって、多分きっと、そうだろうって瞼を閉じて口に触れる感覚を待った。待った通り、 柔いそれが押し付けられて、じんわりと幸福感が身体を支配する。イメージ通りの『恋人』らしいことをしていると思うと、羞恥心で熱がおさまらない。けれど、それでもどうしようもなく幸せで、どうにかなりそうだった。気づいたら啄むような動きになって、お互いがお互いを求め合っていて、満たされた。ふぅ、と息をついて少し呼吸を整えて。また彼と目が合った時、ふ、と口角を上げて微笑まれると忘れていた羞恥心が顔をのぞかせてきて思わず俯いてしまった。手が頬に触れて、ああ、来る、と思ってぎゅっと目を閉じて再び、あの幸福感の温もりを待っていた。
「、ぁ……っ、!?」
唇を割って、咥内にぬるり、と生温かな舌が、入ってくる。驚きで目を開ければ目を細めた彼の目とあってどうにもできない。逃げられないようにか背後に腕は回っていて無理そうだった。じゅる、と舌をきつく吸われると頭頂辺りまでかける刺激が感じられた。驚きか快感か分からないけど、身体が震える。己より厚めの舌が好き勝手に咥内を舐め回すのに、何も出来なくて空いた口から母音しか出なくて、彼の胸元にしがみつくしかできないでいた。
「ぁ…、……はあっ、…ん、…っぁ、」
苦しくて、息を整えたくて、だのにそれも全て食べてしまうようなただただ、這いずり回った舌に体内の空気の全てを食われた。頭がぼんやりしてきた時、やっと解放されて、くたり、と身体が倒れそうになるのを、慌てて支えた彼が、少し大きい手を頭にぽん、と2、3回ほどバウンドさせた。必然的に胸に頭を預ける状態になる。
「初めてだったけどどうだった?」
ゆっくりした時間を一緒に過ごしてきた中で、初めてそれらしい事をしたと思う。けど、改めて感想を求められると反応に困る。落ち着かせるためか、何度かぽんぽんと撫でられるとまぶたが重くなる。
「…きもちよかった、…から、」
「うん」
「次も、……していーよ、」
出来れば次はもう少しゆっくりしたいかもしれない。と、そこまではもう眠気で意識が保ってられなくて口にできなかった。
瞼を閉じる前、幸せそうに口角をあげた顔がこっちを見つめてありがとう、と言った気がした。
それも夢かもしれない。
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