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    西縞りす汰

    @Valais_Tear

    短い小説と漫画やテンプレのまとめを置いています。

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    西縞りす汰

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    ネタがふってきたのでかきました。

    サブスクの女 『彼女いない歴=己の年齢』な俺は、二ヶ月前にサブスクに加入した。月額一万円、毎月好みの女の子に告白され、気が合えばデートに。気が合わない、または気に入らなくなったら、他の女の子にチェンジ可能。感動の恋愛体験が約束されたサブスクだ。
     デート代は毎月払ってる一万円から出されるので、その時の女の子が立て替えてくれる。なので財布を持っていく必要は無し。むしろ向こうから、喜んで飯を奢られるくらいだ。こんなにうまい話は、他にないだろう。
     金を払う、好みの女の子に告白される、デートorチェンジ。このサブスクに加入してから、ずっとその繰り返しだ。来月もまた、違う女の子に告白されるだろう。果たして次は、どんな美女が俺のもとにやってくるのか。
     期待に胸を膨らませながら、度数の高い酒をあおる。明日から月がかわる。スマホを片手に、サブスクのサイトを眺めた。よくよくみると、買い切りのプランもあるらしい。変わったサブスクではあるが、お陰で潤ってる部分もある。
    「これからも頼むぞ~?」
     そう呟いて画面をスワイプした後、俺はソファーに横たわった。酔っていたのか、それとも明日の女の子からの告白を想像してにやけてたのか、スマホを手からカーペットの上に落としたことに気づかなかった。

     月初め。大抵は俺の行く先に女の子が待ち受けていて、そこで「好きなんです」と言われる。それが今までのセオリーだった。
     けれども、今月は違った。ソファーで横たわる俺のそばに、見知らぬ女がいる。彼女は俺が夕べ落としたスマホを握りしめながら、俺の寝顔をじっと観察していた。
    「コウタさん」
     俺の名を呼ぶ彼女のスタイルは良い。ただ、前髪が長いせいで、顔がよく見えない。
    「ふふ、かわいい。だーいすき」
     猫なで声で彼女が俺に愛を告げる。目をこすって上半身を起こすと、彼女の肌が異様に白いことがわかった。目の下には隈が刻まれてる。輪郭が痩せこけていて、正直好みじゃない。
    「ごめん、キミ誰?」
     大方俺の前に知らない女の子がいると、サブスクの子だと認識してる。サブスクの契約時に、顧客情報として電話番号と住所は提示している。そうでなきゃ俺の家に、いきなり知らない女がいるってことがまずない。まさか家に上がってるとは思わなかったけど……昨日の俺、鍵かけずに寝ちまったのか?
    「カスミ。今日からあなたの彼女になる女よ」
    「あ~、カスミちゃんね。ごめんだけど、チェンジで」
     気に入らなければ、チェンジも可能。早速チェンジを出すと、カスミは不思議そうな顔をした。
    「何言ってるの? 私、今日からあなたの彼女になるのよ。今更チェンジなんてきかないわ」
     そう告げられ、思わず耳を疑った。チェンジが受理されない? そんなこと、今までになかったはず……。
     すると途端に、カスミは俺のスマホを操作し出した。メディアフォルダーを開き、俺が今までに他の女の子と撮った写真を削除している。
    「ちょっとカスミちゃん? それ俺のスマホだよね? 何してんの?」
     慌ててそれを止めようとすると、カスミは瞬く間に鬼の形相になった。ぎらりと目が光る。それはまるで、獲物を補食しようとする怪物のようだった。
    「ねぇ、今までどうして私以外の女と一緒に居たの? 私はコウタさんの彼女なんだよ? よその女と一緒にいる写真なんて要らないでしょ。だから全部消しておくね」
     カスミは次々と写真を削除していく。おいおい、どういうことだ。チェンジ出来ない上に、勝手に写真を消されてる。こんなこと今までになかったぞ。
    「やめろって!」
     スマホを取りかえそうと手を伸ばすと、カスミはスマホを握りしめたまま、ポケットから何かを取り出した。錆び一つもない、カッターナイフ。カチカチと音を鳴らし、その切っ先を俺に向けた。
    「邪魔しないで。コウタさんには私だけでいいの。他なんていらないわ」
     突如現れたカッターナイフの刃に、思わず手を引っ込めた。心臓がドキドキ鳴ってる。今までならかわいい女の子に尽くされてドキドキしたが、目の前の女には違う意味でそうなっている。好みじゃないし、勝手に写真を消していくし、刃物で脅されるし。なにもわからないが故に怖い。一体どうして。
     写真を消し終えた彼女は、興味無さそうに俺にスマホを返してきた。それから「お風呂借りるね」と言って、彼女は勝手に俺の家の風呂場へと駆け込んだ。
     返ってきたスマホを手に取り、ブラウザアプリでサブスクのお問い合わせページを開く。すると何故か、俺が加入していた月額プランが解約されている。スクロールしていくと、代わりに昨日見かけた買い切りプランを購入していた履歴が残ってる。このプランは一度購入すると、返品がきかないらしい。また、購入後にどんなことが起きても、サブスクの運営会社には責任が問えないってことも記載されていた。
     買い切りした覚えなんてない……なんてことを考えていたら、昨日寝る前にスマホを弄ってたことを思い出す。もしや、酔った勢いでそっちのプランに変更してしまったのか……?
     俺が購入したと思わしき買い切りプランは、愛が重い女とスリリングな恋を堪能出来るプランらしい。クレジットで二十万請求されていて、それは既に口座から引き落とされていた。もし誤購入だった場合は、彼女が家にやってくる前に、家の鍵を閉めるようにってことも記載されている。
     あやふやな記憶だが、昨日は酒を飲んで寝てしまったので、恐らく鍵をかけずに寝てしまった。酒でとんだ意識を取り戻しながら、俺はもう後に引けないものを購入してしまったことを悟った。
     良くないことが起こる前に逃げよう。そう思って玄関に向かう。するといつの間にか、玄関の鍵が頑丈なものに変わっていた。暗証番号を入力しないと、こここら出られないらしい。これもカスミの仕業か?
     玄関がダメならベランダに。しかしベランダには、これまた見覚えのない鉄格子が出来ている。思わず天井を見上げると、部屋の四隅に監視カメラが取り付けられていることに気づいた。こんなもの、俺は買った覚えがない。
     警察に連絡しようとしたが、スマホなのに電話アプリが使えなくなっている。メールもSNSも、使うには指定のパスワードが無いといけなくなってる。パスワードなんて、俺は設定した覚えがない。
     苦戦しているといつの間にか、風呂上がりのカスミが俺の背後に立っていた。濡れた髪に、白いレースの下着姿。はた目にはセクシーなのに、その手に包丁が握られている。
    「野暮な真似しちゃやーよ」
     彼女が笑いながら告げる。俺は腰を抜かすと、彼女の胸元に視線を向けた。どうせなら、視線だけでも逃がしてくれよ。
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