入浴剤 少ないお小遣いで、入浴剤を買った。少な目のお湯に入れると、お湯にとろみがつく上に、もこもこの泡が湧いてくるらしい。これに浸かるとお肌が艶々になるって書いてあるのを見て、私は思わず「買わなきゃ」と意気込んだ。この時期限定の、金木犀の香り。きっと凄く良い匂いがして良さそうな予感がする。
問題はこれを、いつ使うか。これを使うには、お風呂で頭と体を洗ってからの方が良いと思う。とはいえ今私は、虎四ちゃんと一緒に過ごしている身。代わりばんこでお風呂に入ってるけど、そうなると後に入った方が、あわあわのお風呂が楽しめなくなっちゃう。私が虎四ちゃんに先を譲っても良いんだけど、そうするとあの子に気を遣わせてしまうかもしれない。さて、どうしようかな。
湯船にお湯を貯めながら、私は考えた。その結果、いっそ二人で入った方が効率的なのでは、という結論が出た。ついでに虎四ちゃんの背中も流してあげよう。最近寒くなってきたし、一緒に入れると、身も心も凄く暖まれて良いなぁなんて思ったり。
一緒になってもうどのくらい経つのかは、あんまり覚えていない。でも確か、彼女と出逢って恋をしたのは、丁度この時期だったはず。記念日だからっていうと大袈裟かもしれないけど、これも何かのきっかけになるだろうし。
「虎四ちゃん、今晩一緒にあわあわのお風呂に浸かりたいなって思ったんだけど、どうかな」
入浴剤を握りしめ、あの子が待つリビングに向かう。もうすぐしたら、お風呂が沸いたことを給湯機が教えてくれるはず。無事に了承が得られるといいなぁ。