無題(ささら+ニャンスピ過去捏造小話)「こいつ鳴き声が壊れたスピーカーみたいや!」って近所のクソガキによういじめられてた僕を助けてくれたのはいつもささらくんやった。
ニコニコ笑顔の可愛い男の子。優しくてちょっと気弱なとこがある普通の人間の男の子。僕は彼だけに懐いてた三毛の野良猫。三毛のオスって珍しいんやで?ええやろ。ナ"ァオ。
僕らはいつも一緒やった。一緒に笑って遊んで楽しかった。
どんな時でも一緒におったで。
ほんで何でも言える友達やった。
ささらくんがテストでひゃくてん?取ったて嬉しそうに教えてくれた。体育でコケて膝小僧擦り剥いた〜て半ベソかきながら教えてくれた。僕はナ"ァオって鳴いて慰めた。僕も初めてデッカイスズメ獲った時も1番にささらくんに教えたし、僕がミィコちゃんにフラれた時だってちょお恥ずかしかったけど教えてあげてん。したらささらくんオトナの人間より小さい手ぇで僕の頭撫でてくれて…ホンマ優しい子やねん。ナ''ァオって僕は返事をしてゴロゴロと喉を鳴らした。
やから、ささらくんが一生懸命げいにんさん?の真似っこしよるのも一緒に練習したし、暗い顔してジッと黙って泣いとる時も寒くないように寄り添ったし、ささらくんのオカンが居なくなった時だって一緒に居ったんよ。
あんまりにも僕がささらくんのうちに入り浸るもんやから、ささらくんのオトンもよぉ優しくしてくれたで。
「いつもありがとぉな」「うちの子ぉになるか?」って
ある日ささらくんがオトンに買うてもろてん!って赤い立派な鈴がついた首輪とささらくんが作ったと言う緑色の前掛けを僕に付けてくれた。ホンマは邪魔やし嫌やったけどささらくんがキャピキャピと笑うから、まぁええかなって思て。
これからもふたりで笑って泣いてオトナになってもずっと一緒居ると思っとった。ずーっと一緒居れると思っとった。
あんまり人生うまくいかんもんやなぁってささらくんの泣きじゃくる顔と、目の端に映る赤い何かを見つめながら思った。赤い何かは僕の体から出とるみたいやった。熱くて痛くて赤い何かが出るたびに熱いのに寒くてしゃあなくて…目ぇもよく見えんくなっていってささらくんの僕を呼ぶ声だけが残って……。
僕は今から死ぬんやなって分かった。
気が弱くて優しいこの子とずっと一緒居って、オトナになるまで見守れると思っとったのになぁ…。
なんでやろうね、ささらくん。
僕のしょうらいのゆめはひょうきんさんみたいなげいにんさんになる事やねんって昨日嬉しそうに教えてくれたばっかりやったのになぁ。下手こいたわ。
ホンマごめんな、ささらくん。
ささらくんがこれからもずっと笑っていられますように、げいにんさんになれますようにってとにかくお願いしたのが最期やったと思う。ナ"ァオ。ちゃんと返事出来たやろか。これが僕の1番最初の人生やった。
2回目の人生はささらくんがオトナになってすっかり立派なカッコええ男の子になってから始まったんよ。
僕はささらくんのヒプノシスマイクのスピーカーとしてこの世に戻ってきた。
初めて対面した時のささらくんの顔ったら!びっくりしていつもニコニコなお目目が真丸なお月さんみたいなお目目になってもうて、それはもう可愛かった。
「……〇〇?」
ささらくんが猫だった頃の僕の名前を呼ぶ。僕はナ"ァオって返事して、ゴロゴロ喉を鳴らしてみせた。
ささらくん、立派になったね。ずっと見とったよ。沢山のお別れしたなぁ…でももう大丈夫、僕が居るもん。
「ンだぁ?簓…てめぇのスピーカー、招き猫か?」
「……おん。みたいやなぁ」
さまときくん、ささらくんとずっと仲良くしてあげてぇな。いつもありがとぉ。
「これは縁起モンやなぁ」
ささらくんがニッカリと笑う。子供ん頃にはよぅ出来んかった笑い方。強くてカッコええ、頼りになりそうな笑顔やった。
「いっちょ頼むで!!」
すっかりとデカく成長したささらくんの手ぇが僕のお腹らへんを撫でた。わーっとるよ、任せてぇな。
ナ"ァオと鳴いた。ささらくんがくふくふ笑っとる。
これからはもうずーっと一緒やで。もう君を1人にはしぃひんよ。
今度こそ君を人生を近くで見守ったるわ。ささらくん。