待ってますよ 「頼みたいことがあります」
低く、真剣な声だった。
彼とは、いや彼等とは簡単には言い表せない関係を続けていた。
ーー「復讐がしたい」
そう言ったのは自分だ。二人がこの話にのるだろうと確信していた。一方にとっては憧れの人の思いを守るため。一方にとっては最愛の友の宝を救うため。そして、自分にとっては姉の復讐のため。利害が一致しただけの関係。少なくとも自分にとっては、その筈だった。
雨が降っていた。夏の終わりにしてはやけに涼しい夜だった。昼に見えていた月は既に雨雲に隠され、雨音は音を遮断し、ただ暗闇だけが広がっていた。いつか雨は止むと知っていても、永遠に降り続くような気がしたのを今でも覚えている。
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