劣等生とのアップルパイ 劣等生と呼ばれる割には……彼女は成績が良い。
「リリカ、補習にならないかな?」
「……授業点さえ稼げば大丈夫ですよ。」
自分は途中からなので学校生活の彼女を見ていないから分からないが、まだ新米教師である自分が生徒と仲良くしていいのかなって思いながら、リリカと言う子は色々と話しかけてくれる。
「……あ、リリカさん。
コレ、余ったんですが食べますか?」
ソーンにあげた残り物のクッキーを彼女に渡したら、彼女は目を輝かかせながら
「リリカに
ありがとう」
と無邪気に笑うのを見たら、彼女を劣等生だと笑う人を少し疑いたくなる。
教育実習中はあまり生徒には関わらないようにしてはいたが、彼女は料理の話が好きで色々レシピを共有しあっていた。
「リリカね、アップルパイを作りたいんだけど中々上手く出来ないんだ。」
「ちゃんとリンゴにまで火が通るようにしてますか?」
放課後、家庭科室が空いてる日を聞いて2人でアップルパイを焼く約束をした。
「……アダムせんせ♡
リリカね、パイ生地作るのが苦手なんだ。」
「パイ生地はパイシートを使えば簡単ですよ。
では、俺はパイ生地を作るのでリリカさんはリンゴの用意をしてください。」
「解ったぁ!
リリカに任せて♪」
女の子の腕ならリンゴの芯を抜くのは大変だろうから、包丁で剥いてもらってオーブンの用意は自分がした。
カスタードクリームを作って居たら、横からリリカさんが味見をしていた。
「おやおや……」
「アダムせんせのは優しい味がするね♪」
リリカさんが切ってくれたリンゴと出来上がったカスタードクリームをパイ生地に乗せてあとは焼くだけの所まで来た。
焼いてる間に後片付けをしながら、アップルティーの準備をしていた。
「……アダムせんせはさ、何でせんせになろうと思ったの?」
そう聞かれたら、ソーンの復習の為だと素直に話した。
「……ちょうどリリカさん位の年頃の弟が居るんです。
なのでその勉強を手伝う為……ですかね。」
「……じゃあ、いつかリリカにも弟紹介してっ♪
リリカ、お友達になりたいなっ♡」
「……あぁ、温室から出られる位まで体調が安定すれば紹介しましょう。」
ニコリと笑いながら、ソーンに同じ年頃の友達候補が出来て少し胸が暖かくなった。
今日リリカさんと二人で作ったアップルパイは、今まで食べたアップルパイよりも特別な感じがした。