Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    Tyon。

    五悠を書いています。
    誰かに刺されば嬉しいです!

    @yon_472

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 67

    Tyon。

    ☆quiet follow

    五悠です。
    付き合い始めた二人
    でも先生が「悠仁に避けられてる?」と悩む日々のお話

    ちょっとかっこよく無い先生かもです。

    (ふりがなら自分用…)

    #五悠
    fiveYo

    いいよ「悠仁のこと好きなんだよね。僕と付き合わない?」
     
     冗談混じりに聞いたこの問いかけに、彼はあっさり答えを返した。

    「いいよ」

     その回答が余りにも短簡で、嬉しい反面不安になる。

    「まじ?意味分かって言ってる?」
    「うん。俺と先生が恋人になるってことだろ?」
    「いいの?」
    「いいよ!」

     眩しい笑顔を見せられれば、自分もあっさり受け入れる。今日から僕たちは恋人になった。



    ◻︎◻︎◻︎


     その出来事は、数週間前のことだった。
     教師と生徒の恋愛なんて少女漫画の定番。青春そのものだ。校内で隠れてイチャイチャしたり、休日はデートへ行って買い物したり映画を見たり、彼と過ごす日々が、楽しみで期待に胸が膨らむ。
     しかし、付き合い始めても悠仁に、何ら変化はなかった。いや、少しあったかもしれない。

     廊下で見かけて、抱きしめようとすると

    「みんな見てるし、あとでね!」

     と照れ笑いされて躱される。結局、その"あとで"は訪れなかった。
     違う日も、同じようなことがあった。
     地下室のソファーに、二人並んで腰掛けている時、悠仁の肩を抱こうとした。あと少しで肩に触れるという時に、彼は急に立ち上がった。

    「あ、コーラとポテチもってくんね!」

     机の上を確認すると、確かに僕のコーラは空になっていたし、ポテチも無くなっていた。でも、悠仁のコーラはまだ半分以上入っているし、いつもなら「先生いる?」と一声かけてくれる。今避けられた?と思ったが、この時は勘違いだろうと解釈した。
     結局、その行き場のなくなった手は、余っていた手と組んで上に伸ばした。

     入学してすぐに六本木観光(呪霊退治)に行くと言った時は、頬をすりすりされる程の距離感だったというのに、付き合い始めてからは、むしろ避けられている気がする。
     デートはするし、2人きりで地下室で映画も見る。「好き」と伝えれば「俺も!」と返してくれる。それでも、以前よりも悠仁に触れ合うことが減った。

     他にもある。
     束の間の休日。伊地知に(強制的に)休みを貰った土曜日。
     地下室も良いけど、たまには外に出て映画を観たい。暗いシアター内で周りにバレずに手を繋ぐなんて青春だよね。ということで、悠仁と映画館に来た。
     大きなバケットに山盛りのポップコーン、Large sizeのカップを持って喜ぶ悠仁は、本当に可愛い。
     席は、一番後ろの一番端。幸いにも隣は数席空いている。手どころか、他のモノを握れそうだ。なんて、下らないことまで考えていた。
     けれど、いざ映画が始まってみると、悠仁の手はポップコーンをずっと摘んでいて、握る隙がない。すぐ食べ終わるだろうと思っていたが、結局エンドロールまでポップコーンを摘んでいた。そのポップコーンバケット、デカすぎなんじゃないの?

    「めっちゃ面白かったね!」
    「そうだね」

     映画どころではない。手を握るタイミングを見計らっていて、内容なんて全く入って来なかった。
     その後は、いつものようにご飯食べて寮に送り届ける。寮までの道のり、街頭だけが付く夜道は雰囲気に満ちている。
     今度こそは手を繋ごうと思っても、悠仁の両手はポケットに仕舞われていた。それなら肩を抱こう、と手を伸ばすと、彼はくるっとこちらを振り返り、後ろ向きに歩く。

    「今日も楽しかった!先生、いつもありがとう」
    「それは良かった。僕も楽しかったよ。次はどこ行こうか?」
    「そうだなー。あ、次は中華街行こう!ドライブもしたい!」
    「まっかせなさーい!」

     嬉しそうに笑う悠仁を見れば、僕も嬉しくなる。楽しいと言ってくれた言葉には愛情も感じる。次のデート場所も決まったし、交際は順調なんだろう。
     ただやっぱり、彼に指一本触れられずに終わったデート。
     僕が遠慮しているからではない。人並み以上には経験値豊富だし、果敢に攻めている。
     以前と変わらないと言えば変わらない。しかし、これはいくらなんでも、意図的な行為だ。

     悠仁は恋人ができても、次の日も普通に接するタイプだろう。恥ずかしいとか気不味いとかより、嬉しいを前面に出してくれるタイプ。
     相手を大切にするだろうし、素直な言葉を口にしてくれる。
     でも、いざとなれば男を見せてくれる。こちらが手を出さないでいれば、痺れをきたして「そろそろ先生が欲しい」とか言ってくれるだろう。そんな彼をイタダくのは僕なのだけれど。
     昼は天真爛漫に振る舞い、夜は奢侈淫佚(しゃしいんいつ)にふける。付き合う前は、そんな風に彼を想像していた。
     実際も特に態度は変わらないし、好きと素直に言ってくれる。前者は当たっていた。しかし、後者は違う。
     悠仁は、そういう欲求はないタイプなんだろう。冷静に考えれば、三十路間近の大男に性欲は湧かないか。干支一周以上した男児に欲情している僕が変態なんだろう。

     悠仁を好きだと思ったのは、素直に僕を尊敬してくれたところ。
     ニコニコして「修行つけてもうなら、五条先生がいいと思ってたから嬉しくて」なんて言われたら、誰だって落ちる。天性の人垂らしには、冷静沈着な七海も落ちていた。
     そんな彼を独り占めしたくて、告白なんてしてみた訳だけど。まさか付き合えるとは思ってもみなかった。
     彼がなぜ告白を受け入れてくれたのかは分からない。しかし、付き合うわけだし、恋人ぽいことは後からどうとでもなる。そう軽く考えていた。
     最近考えることがある。悠仁の好きは、僕の好きとは違うんじゃないかって。
     僕の「好き」は、寵愛、独占、情欲。しかし彼の「好き」は、尊敬、親身、人情。そんな風に思える。全くの別物なのだ。
     それが嫌なら別れれば良い。今までと同じだ。

    「私の気持ちとは違う」

     と言って去っていく女ばかり。だからと言って追う気は毛頭ない。はじめから「それでも良い」と寄ってきた、性欲を満たすだけの相手なのだから。むしろ相手から去ってくれた方が気が楽だ。
     だけれど、悠仁にはできない。どうしても彼を振り向かせたい。同じ愛情になって欲しい。
     彼が…欲しい。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏💞💞😍😍🙏😭❤💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works