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    Tyon。

    五悠を書いています。
    誰かに刺されば嬉しいです!

    @yon_472

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    POIPOI 67

    Tyon。

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    五悠です。

    五条先生に片想い中の悠仁くんが、先生に映画に誘われた話。
    初デートと浮かれていたら、先生の左手の薬指には指輪が輝いている…

    そんなお話です。

    #五悠
    fiveYo

    指輪 五条先生の左手の薬指には指輪がある。
     ファッションとかそんなものじゃない。
     華奢なシルバーの指輪。
     それはきっと、結婚指輪だ。

    ・・・・・・

     虎杖は五条に「今度の休日、映画見に行こう」と誘われ、二つ返事をした。
     その待ち合わせの日に、見てしまった。
     スマホを操作する五条の左手薬指に指輪が輝いているのを。
     楽しみにしていた好きな人との休日。初っ端で出鼻を挫かれた。
     先程まで、浮き足立っていたたが、しっかり地面を踏みしめて五条の元へいく。

    「おはよう!先生、待った?」
    「おはよう、悠仁。今きたとこ」

     虎杖に声をかけられて、すぐに反応した五条はスマホごと左手ををポケットにしまった。

    「映画の時間まで少しあるし、コーヒーでも飲もうか」
    「おう!」
    「チケットは発券済みだよ」

     右ポケットから、チケットを2枚出して悠仁に見せる。そんな五条を見ると、彼がどれだけデートに慣れているかを虎杖は察した。
     待ち合わせにも先に着いていて、チケットも発券済み、デートでは至って普通のことなのだろう。
     しかし、虎杖にそんな経験はない。デートなんてしたことがない。そんな彼からしたら、五条のエスコートは、スマートに見え、感心してしまうほどだ。それと同時に、胸にちくりと刺す痛みが走る。

     映画が始まれば、そんな胸のざわめきも収まってしまう。
     劇場を出れば、あれが良かった、誰がかっこいいとの話で盛り上がり、すっかりいつもの調子になる虎杖。
     五条に「糖分補給がしたい」と誘われ近くのカフェに入った。
     クリームたっぷりのコーヒーに、更にシロップを追加した物を美味しそうに飲む五条。馴染みのないコーヒーを飲む虎杖。
     虎杖の顔は曇っていた。コーヒーが苦手な訳ではない。その理由は、目の前の男にあった。
     カップを持つ左手の親指の指輪。

    「悠仁、それあんまり好きじゃなかった?僕のクリームあげようか」

     そんな虎杖に対して何食わぬ顔で、自分の口にしたスプーンでクリームを掬い、五条は虎杖の口の前まで運ぶ。
     虎杖はいらないと断るものの、好きな人からのあーんにも、好きな人の使ったスプーンにも照れてしまう。
     結局、強引な五条に負けて、差し出されたクリームをパクッと口にすると、五条はすごく嬉しそうに笑った。
     そんな五条を見ると、また照れてしまう。
     しかし、カップを持つ左手が目に入る

    (あ、そうだった)

     まるでデートをしているようだけど、そうではないんだと、虎杖は自分の感情を飲み込んだ。
     映画に誘われた時嬉しかったし、今日という日がどんなに楽しみだったか。
     自分のこの気持ちと、五条の気持ちが同じものだったりしないか、そんな淡い期待も抱いていた。
     しかし、それは待ち合わせの瞬間に消えた。
     その手の薬指の指輪には特別な意味がある。それは、結婚。
     思い返せば、わざわざ左手でスマホを操作して、見せびらかすようにしていたような気もする。気にしすぎなのかも知れない。
     だがそれぐらいに、この指輪は主張するように輝いている。
     いつも通りに振る舞っているつもりの虎杖だが、気になってしょうがなかった。

    (結婚…してんだよな)

    「悠仁、元気ないね。映画のときは元気そうだったけど?」

     やはり五条は鈍感ではなかった。

    「え?あ、いや、別に」

     虎杖は、嘘が下手だった。
     慌てる虎杖をみて、「悠仁は分かりやすいよ」と五条は笑う。
     そんな姿を見たら、1人で考えているのがバカらしくなってきた。
     五条も結婚するにはいい年だ。自分の為にも、はっきり聞いておこう。虎杖は決心した。

    「あのさ、先生のその左手の指輪って…」

     言い終わる前に、答えが返って来た。

    「あ、これ?カモフラージュ」

     "カモフラージュ"その言葉に、思考が止まる。

    「外すの忘れてたね。あ、てか悠仁もお揃いにする?」
    「え?どういうこと?」
    「だから、カモフラージュ。ナンパ避けだよ」
    「ナンパ避け…」

     ふむ…と理解しようとする虎杖。
     五条は普段、街に出る時は左の薬指に指輪をして出かけている。それは、興味のない女から声をかけられるのを避けているからという理由だった。

    「まじか!焦った…」
    「もしかして、既婚者かと思った?ないない」
    「でも先生なら、許嫁とかいて、結婚しててもおかしくねーよなって思ったし…」
    「まぁ、許嫁はいたけどね。僕、仕来たりとか嫌いだからさ。そんなのとっくに破棄したよ」
    「あー…確かに五条先生らしいや…」

     安堵する虎杖を見て、五条は目を細くする。

    「それに、悠仁のことが好きだから、こうしてデートに誘ったんだよ」

     五条の瞳は真っ直ぐ虎杖を見つめている。
     虎杖はその言葉を聞いて、耳を真っ赤にした。
     自分の思っていたデートで間違いじゃなかった。自分の気持ちと同じだった。そう思うと、胸の奥も熱くなった。

     「俺も、先生のこと好き」

     サングラスの隙間からそんな虎杖の様子を見て、嬉しくなった。
     薄々気づいていた好意だったが、それでも嬉しい気持ちが溢れ出してくる。

    「悠仁。今からお揃いの指輪見に行こうか」
    「今から?」
    「ナンパ避けじゃなくて、2人の思い出にさ」
    「先生、いつも突拍子もないよね。でも、そういうとこ、好きだぜ!」

     虎杖の笑顔に、五条は思わず虎杖の頭に手を置く。

    「指輪買ったら、家でピザパーティーでもしようか!」
    「まじ!やったー!そしたら、今日の映画の前作も見たい!」
    「まっかせなさーい!今日はうちで朝まで映画コースだからね」
    「五条先生っちに泊まり!うわー、緊張すんな。でもよろしくおなしゃっす!」

     そう喜ぶ13歳年下の男児に、五条はどうしようもなく愛しさが込み上げた。
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