お好みは。「かわいい」
「うん、そうだな。撮るか?」
先にテーブルへと置かれたケーキ皿を差し出してくる。フォークを突き刺すのが惜しいくらい愛らしい見た目も確かにかわいいのだけど、思わず漏れた呟きは目の前に座る人物に向けてだ。ひとりでは入りづらいから、と女性人気の高いカフェに誘いを受けて同行した先で嬉しそうに目尻を下げた柔らかな表情をするところなどは。仕事上では厳しい雰囲気を崩さず、普段ですらパッと見怖そうと評されているのを知るだけに、見ている自分の方がなんだか照れてしまう。女性客が大半で残り少ない男性客もほとんどがカップルの連れのような店内を軽く見渡して自分に声が掛かるのも納得する。自分たちの場合は強いて当てはめるなら父娘にでも見えているだろうけれど、と注文が揃うまでの間になんとなく思う。
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