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    kd_kaiji

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    kd_kaiji

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    大竹が一般大の法学部から自衛隊に入ったきっかけって何だろうな…と思ってふと書いてみた妄想。。
    2400字くらいです。

    ──大竹良平。22歳。春──


    「は〜〜ゼミ夜まで長引いたな腹減った…コンビニ寄ろう……」
    大竹はコンビニでスナックを買い外に出たところ、いかにも、、な風貌の輩と目が合った。
    正確には、睨みつけられた。

    「よっ、兄ちゃ〜ん!」
    「賢そうなお顔してんじゃーんー!!金持ってそ〜〜!お金ちょ〜〜〜だいッッ」
    (バカが2人も……)
    冷ややかな感情が顔に出てしまい、輩の顰蹙を買ってしまう。
    「お〜〜〜っと!?!?バカに??してくれてんじゃん???」
    「じゃーーしょうがないか〜〜!!ポキポキ…お仕置きしましょうね〜〜ッッ」

    大竹は自分の正直な感情を一瞬呪ったが、時は既に遅し。

    飛び道具の様に発射された弾丸パンチが勢いよく大竹の頬に命中し、手に持っていたスナックとショルダーバッグの中身が地面にばら撒かれた。

    俺は今まで真面目に勉強してきて成績も結構良かったし知識だけは身に付けてきたけど
    せめて顔面に飛んでくる拳を避けられる程の身体能力は身に付けておくべきだったな……
    と、薄れゆく意識の中で大竹は自らの半生をほんの僅かに悔いた。

    「ちょっと!!あんたら何やってんの!!!」

    勇ましい声が後方から聞こえる。女性の声の様である。
    カツカツカツンと尖ったヒール音がアスファルトを打ち鳴らし、女性の気配が近づいて来た。

    「その人からお金取ってたでしょ!返しなさい!!」

    猛々しい口調で女性は輩の犯行を質した。

    「お?なになに??べっぴんさんじゃーーん!!俺と遊んじゃう??ホテル代出すよ〜〜」
    もちろん大竹の金である。

    「…会話が成り立って無いようね?もう一度だけ言うわ。その人から取ったお金を返して」
    女性は毅然とした物言いを譲らない。

    「そんな怖い顔しないで〜」
    輩が女性に近づこうとした瞬間、しなやかな脚から閃光の様な速さで放たれた強烈な踵落としが炸裂した。
    頭上に直撃を受けた輩の1人は頭を抱えながらアスファルトに倒れ込む。
    「ッッてぇぇぇ〜〜〜ッッッッ!!!」
    「やってくれるじゃんかよ〜〜姉ちゃん??
    痛い目見てぇってのかッ??」
    輩の2人目から女性に向かって勢いよく右ストレートが飛んだが、勢いよく固いものにぶち当たり、輩の拳は弾け飛んだ。
    「ッッッたぁぁぁ〜〜〜ッッ!!」

    輩の拳の先にあったものは、先程アスファルトにぶちまけられた大竹の持ち物にあった六法全書だった。
    その固く分厚く重い六法全書がひらり軽やかに
    宙を舞ったかと思うと、正義の鉄槌の如く輩の眼前に振り下ろされた。
    ゴッ、と鈍い音と共に先程の輩の上にもう1人が折り重なる。
    女性は完全にノビた輩の懐から大竹の財布を抜き取ると、地面に伏せったままの大竹を抱き抱えた。
    「あなた…大丈夫だった??これ返しとくね」

    大竹はその時初めて女性の姿を間近に見た。
    闇夜に不釣り合いな明るさの煌々と輝くコンビニの灯を背に、透き通った瞳と艶やかな睫毛、緩く一つ結びされた濡羽色の髪、ゆったりとしたパーカーに細身のデニムに紅いヒールを合わせた姿が浮き彫りになった。

    「綺麗…です……ね」

    感謝の言葉を伝えようとしたはずが、開口一番に出た言葉がそれだった。俺と言うやつは、、と大竹は自嘲した。
    「ふふ…大丈夫そうで良かった」
    緩んだ女性の口元の艶に気を取られつつ、大竹は地面に撒かれたままの荷物の撤去に勤しんだ。
    「あ、これも返さなきゃ!ごめんなさいちょっと凹んじゃって…」

    ずしりと手渡された自分の六法全書を手に取ると、確かに角が丸く凹んでいた。
    その凹みを覗き込みながら大竹は思った。

    ──これが、、正しい六法全書の使い方……──
    これが、法の裁きってやつか〜!

    と。

    「六法全書、すごいですね!法学部…の人だったりします?」
    「ええ…そうです」

    伏し目がちに大竹は答えた。
    「すごい!!私防衛大だから他の大学のことあんまり知らなくて…法学部の人と初めて話しちゃった」
    「防衛大…?」
    名前は聞いたことがあるが…自衛隊に入る人たちの大学だよな、と大竹は記憶を辿った。

    「自衛隊…入るんすか?」
    綺麗な女と自衛隊がいまいち結び付かず、思わず口調が敬語の様なチンピラの様などっちつかずになってしまった。
    「うん…!」
    女性は力強く頷いた。
    凛とした魂が彼女の味方に付いている様だった。
    「強い…っすね」
    大竹は自身の有様を恥じながら言った。
    「ううん、全然。弱いよ。すごく怖かったし…
    でも、助けたかったから」
    彼女の表情が和らぐのを見て、大竹はついいつものクセで口説きたくなる心を抑えた。
    「自衛隊に入ったら、もっと沢山の人を助けられると思ったんだ」
    彼女の澄んだ瞳は真っ直ぐに未来を見据えていた。

    いい女だな……いや、その女は止めておけ大竹、と大竹の中の天使と悪魔が喚き出す。

    「俺も入ります、自衛隊」
    「えっ??」
    「幹部になって、めちゃくちゃ偉くなりますッ!!で、日本を守っちゃったりしちゃいますッッ!!」

    またいつもの様にやってしまった軽口である。

    「本気??
    法学部なのに?勿体なくない??」
    驚いて目を見開いた彼女を尻目に、大竹はどんどん早口に喋り出す。
    「まあ…弁護士になったら稼げるかな〜とか思ってたくらいなんで。全然。
    さっきのお姉さんの六法全書の使い方見てたら、なんかこう、シビれちゃって!!あ…お姉さん、お名前は…?」
    ようやく本題を切り出すことができた大竹だった。

    「私…洋子。
    海老名洋子です。よろしく」

    やっぱいい女だな…。

    …待てよ、連絡先聞くの忘れた!!

    大竹は慌てて走り出したが、もう後の祭り。
    彼女の姿はもう闇の中だった。


    仕方ねーな、自衛隊…入ってみっか。

    まー、適当に。



    〜六法全書の使い方〜 完
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