サッカーボールカフェの扉を押し開けると、ふわりとコーヒーの香りが鼻をくすぐった。午後の陽射しが窓から差し込み、木目のテーブルを暖かく照らしている。
「やあ、彰人くん!」
カウンターの向こうから陽気な声が響く。見れば、カイトさんがこっちを見ていた。相変わらず、気楽な笑顔を浮かべている。
「……何してるんすか?」
オレがそう尋ねるとまるで子どもみたいな無邪気な笑顔を見せた。
「ん? メイコに頼まれて、ちょっとお店番さ。コーヒー、淹れてあげようか?」
「いや、今日は遠慮しておきます」
カイトさんのコーヒーが美味いのは知ってる。だけど、今日は別にそれが目的じゃない。オレはため息をついて、カウンター席に腰を下ろした。
「なんか疲れてるみたいだね」
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