新しいピアスを付けた彰人の話。 彰人は耳元のピアスを触りながら、ため息をついた。バイトと練習を終え、彼はメイコのカフェで休憩をしていた。少しだけ疲れが顔に出ている。
「あ、彰人くん、いらっっしゃい」
ドアの音とともに、軽い声が響いた。カイトが笑顔で手を振っている。あの陽気な笑顔に、彰人は思わず目を細めた。
「ちっす」
「練習後?お疲れ様。あれ、なんかいつもと違うね」
カイトはニコニコと笑いながら近づき、彰人の隣に座る。あっ、というと、彰人の耳元に視線を落とした。
「それ、新しいピアス?」
彰人は少し驚く。カイトがそんな細かいところに気づくとは思っていなかった。彰人はファッションにも当然こだわりがある。ピアスもその一部だ。しかし、ここ最近、ちょっとした違和感を感じていたのだ。
「えぇ、最近買ったんですけど……ちょっと違和感があって。」
カイトは首をかしげながら彰人の耳元を覗き込む。彰人は少し居心地が悪くなりつつも、カイトの無邪気な様子に抵抗する気力が湧かなかった。
「ふーん……痛いとか?」
「痛いってわけじゃないですけど……なんか、違和感があるんですよね。」
カイトは少し考えるように眉をひそめ、ピアスを覗き込む。
「少し触っていいかな」
「え、あぁ、大丈夫ですよ」
カイトは優しく彰人の耳に触れる。耳の裏側を見たり、少し引っ張ったり。きっと、腫れていないか見てくれているのだろう。その繊細な手つきがくすぐったく感じる。
「うん。腫れたりはしてないみたい。僕、ピアスとかは普段付けないんだけど、こういうものって耳が馴染むまでちょっと時間かかったりするんじゃないかな。たぶん、だんだん慣れていくよ」
「……そうですね。心配おかけしました」
「大丈夫だよ。よく似合ってる。彰人くんらしいかっこいいデザインだと思うよ」
「ありがとうございます」
カイトさんの調子の良さに時々反発することも多いが、こういう時、彼の何気ないアドバイスが意外と的を射ている。カイトは無邪気な笑顔を見せた。
「僕、彰人くんのピアス好きだな。なんかセクシーだし」
「セクシーって」
「変な意味じゃないよ。大人っぽいなって」
「そういうカイトさんはまるで子供ですね」
「ひどいなぁ。これでも、大人なつもりなのに~」
彰人は顔を歪めて笑った。カイトさんとのこの何気ない会話に心が癒やされる。ここへ来て良かった。彰人はカイトの無邪気な返答に笑いながらそう思った。