きれい過ぎるものは恐ろしくなってしまう
美形を表す言葉は星の数ほどあるけれど、真経津さんのソレは「イケメン」というより「綺麗」と評するのが正しいと感じる。全ての顏のパーツが、その場所に有るべきだ、というところに行儀よく、そして奇跡的なバランスで収まっている。吸い込まれそうな瞳を縁取る長い睫毛、スっと真っ直ぐに、そして高く通った鼻梁、いつも薄く微笑みを称えた口元。僕なんて足元にも及ばないし、所謂「イケメン」が百人、いや千人束になっても敵わないだろう。
無機質なアラーム音で目が覚める。カーテンからチラチラと覗く朝日が眩しい。一つ大きな欠伸をして隣を見ると、真経津さんはまだ寝ていた。いつもは、早く遊びたくてたまらない真経津さんに叩き起こされるのが通例だから、こうやって真経津さんの寝顔を見るのは初めてかもしれない。僕は真経津さんの寝顔を観察することにした。本当に睫毛が長い。何をしたらこんなに長くなるんだろうか。差し込む朝日も手伝って、なんだかちょっとした彫刻みたいだ。
当たり前だけど、寝ていたって真経津さんの顏は綺麗だ。元々完璧なものが、寝たくらいで崩れることなどない。僕と出会う前も真経津さんはこの顔で生きていたし、きっとこの先も生きていく。
「死んでると思った?」
「大丈夫、ちゃんと生きてるよ。ホラ」