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    ふかよる

    妄想しかないです。どこにも置けないネタとか小説擬きを投げようと思います。

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    ふかよる

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    学パロなルサン。久し振りの文章過ぎてもう…。

    食堂の君制服の白い半袖の開襟シャツが湿度を帯びた風に吹かれる。
    見上げると空は青く突き抜け、朝早めの時間とは言え夏の強い日差しが制服に反射する。
    その眩しさに少し目を細め、それが不思議と嫌ではなく、にっと笑う。
    そしてトレードマークの麦わら帽子を被り、今日の朝メシを求めて勢いよく窓から飛び出した。



    遠方より多くの者が入学を希望し集まる我が校。
    寮は勿論、そこに住まう寮生から通学生、教師まで幅広く使用出来る大きな食堂がある。
    そこは寮生の日々の食堂も兼ねている為、寮費に食費が含まれており寮生は食堂に行けばいつでもご飯が食べられる。
    その為、朝から夕方の食事時まで稼働しており、授業中の閉めている時間を除き一日中賑わっている。
    そしてこの食堂では毎日、朝昼晩のご飯時、必ずと言っていい程大きな声が響き渡る。

    「サンジー!!メシ!!」

    朝の気だるさが漂い、学友との談笑により騒がしさが混ざり合う空気が一瞬止まる大声。
    まだ声の残響が聞こえる様な中、ついその場にいる者は声のした食堂の入り口を見てしまう。
    毎食の出来事とは言え、一度は止まる空気。
    そして、それを動かすのもいつも声だ。

    「うるせェ!んな大声を出さなくても聞こえるって何度も言ってるだろ!」

    光沢のある金髪を白い三角巾で覆い、他の学生と同様の白い開襟シャツと黒のスラックス。
    その上にピンク色のエプロンを着た男子学生が大声を出した男に負けず劣らずの声を張る。
    気の弱い者であれば萎縮してしまいそうな柄の悪さが混じる声音。
    しかし入り口に立つ麦わら帽子の男はお構い無しに、寧ろ自分の声に反応してもらえた事が嬉しいのかニカッと笑いながらエプロンを着た学生の近くの席に座った。

    「にししっ、サンジのメシを食いたい!って思ったら声が出てた。」
    「ったく、食堂にいる素敵なレディ達が驚くだろ。で、今日は何にすんだ?」
    「肉!あと今日サンジが担当してるメシ全部!」
    「相変わらず変わんねェなお前は……。まあ、用意するから待ってろ。」
    「おう!!」

    注文を取ると冷たい麦茶の入ったヤカンと透明なコップを置き、厨房へと歩いて行った。
    エプロンを着た男子学生の名前はサンジ。
    櫛通りの良さそうな金髪。
    片方へ分けられた長めの前髪で左目が隠れており、その反対側には少したれ目がちな目と、くるりと渦を描く特徴的な眉毛が覗く。
    この学校の生徒であり寮生だが、小学生の時から養父のレストランを手伝っており、寮に入ってからもどうしても料理がしたくて進んで食堂の手伝いをしている。
    そんな彼の後ろ姿を見送りながら、手酌で注いだ麦茶を飲んでいる麦わら帽子の男子学生はルフィ。
    少しはね気味な黒い髪。
    左目の下に傷があり、健康的に少し焼けた肌。
    底抜けに明るく、一年中麦わら帽子を被ってる所為で「麦わらの」と言えば入学間もない生徒以外ならピンと来る程知名度の高い学生。
    三度の食事では足りない程の食欲を持ち、誰よりもこの食堂に入り浸っている。
    そんな二人が出会わない筈もなく、たまたま食堂のおばちゃん達が休憩をしている時にサンジが作ったご飯を食べてからというもの、ルフィは何かにつけてはサンジにご飯をねだる様になった。
    三食プラス間食その他色々、朝の大声からルフィのご飯が始まる様になり、今日も御多分に漏れず食堂に響き渡った。
    食堂に漂う料理の匂い。
    くるくると動き回るサンジ。
    空腹感は無くならずとも、ルフィにとって好きなものが溢れている空間は麦茶だけでも料理を待つ事が出来る不思議な満足感がある。

    「おいルフィ、出来たぞ。」
    「すっげェー!!どれもうまそー!!」

    待ちきれないと言わんばかりに涎を垂らすルフィの前に料理が並べられていく。
    品揃えの数も一般的な朝食としては多い上に、一皿辺りの量も二、三人前はあるであろう量が乗っている。
    普通の胃袋であれば怖じ気付きそうな量であるが、人並み以上の食欲を持つルフィはそれを見て目を輝かせていく。
    大量の料理が並び終わると大きな声が響いた。

    「いただきます!!」



    今日も見ているこちらが気持ち良くなるくらいの食べっぷりを調理や配膳の手伝いの合間にちらりと眺める。

    ほんと、あの体のどこにあの量が入ってるんだか。

    ほぼ毎日あいつの食事を見ているがその度に同じ人間とは思えないな、という感想が浮かぶ。
    朝から、と言うよりも一人で食べるのには明らかに多い量があの胃袋に収まっていく。
    しかもうまそうに料理を食べ、ご飯粒一つ残さないくらい綺麗に完食してくれる。
    空になった食器を下げる名目があるとはいえ、料理を作る身としてはついその食べっぷりを目で追ってしまう。

    毎回思うが、ありとあらゆる料理人を魅了しそうな食べっぷりだなぁ。

    他のテーブルのヤカンのお茶の減り具合を見つつ、一人だけ返却口へと持っていく間も無い程の勢いで積み上げていく皿を回収しては流しへ持っていく。
    その間にもおかわり!と言う声を何回か聞いては皿を交換していった。
    授業開始約30分前にもなってくると新規の注文も減り、食堂の中の人も疎らになり落ち着いてきた。

    「いつもありがとうね。サンジ君もそろそろ朝ご飯を食べておいで。」
    「もう大丈夫なんですか?おれ、ギリギリまで手伝いますよ。」
    「何言ってんのよ、サンジ君もここの寮生なんだからちゃんとゆっくり朝ご飯を食べてから授業に行きなさい。」
    「……分かりました。では、お言葉に甘えて。」

    エプロンを外すとはいよ、と用意された朝ご飯のプレートを差し出され、ありがとうございます、とお礼を言い受け取る。
    ついでに麦わら君のおかわりも持っていってよ、とそれも受け取り、最後に見た時よりも空いた皿が重なっている席に近付く。
    見ているだけでお腹いっぱいになりそうな量だな、と思いながらも運んでいると、食べているのに夢中なはずのルフィが目敏くこちらを見た。

    「あ、サンジ!」
    「おお。ほらよ、おかわりだ。」

    丁度食べきった皿を横に避けておかわりを目の前に置いてやると、うまそー!と目を輝かせた。

    「しかし毎日本当によく食べるな。」
    「ししし、サンジの作る料理がうめェからな!」
    「ありがとよ。だが、おれだけじゃなく食堂のマダム達もお前達やレディ達の為に作ってんだ。後でちゃんとお礼を言えよ。」

    おれも含めてだが、ルフィが食べに来る様になってから食堂のマダム達が以前よりも早く来て準備を始めているのを知っている。
    だからしっかりお礼を言っておけよ、と隣の男の頭を小突いた。

    「おう!おばちゃん、今日もうめェメシをありがとな!!」

    にししっ、とルフィが笑顔で言うと厨房から麦わらちゃんいつもありがとねー、と嬉しそうなマダム達の声が聞こえてきた。
    それを横で聞きながら自分の朝ご飯に手をつける。
    マダムが焼いてくれた黄金色の焼き目のトーストにバターを塗り、一口食べる。
    サクッという小気味良い音がするも、中は柔らかく焼き加減の素晴らしさに今日も良い日だな、と思いながら咀嚼する。
    昨晩の手伝いの時に仕込んだ具沢山のポトフも出来が良く満足いくもので、食堂に来た際に自分で握ったおにぎりを食べていたとは言え、食が進む。
    とは言え、授業の時間も差し迫っているのでさっさと食べてしまおう口を動かしていると、横から視線を感じた。

    「ん?どうした?まだ食い足りねェのか?」

    おかわりを食べ終わったのか、先程からこちらをじっとこちらを見てくる黒い目におれが声をかけると首を横に振った。

    「いや、まだ食えるけれど違ェ。」
    「ほんとかぁ?」

    毎日メシの事しか考えていない様な奴がそんな事を言うなんて、と半信半疑でルフィの口元に食べかけのトーストを持っていく。
    食べ物を認識した瞬間かぱっと口を開けたが、だから違ェって!と口を閉じた。
    あの食欲九割のルフィが!?とその事に自分で思っていた以上に驚いて声をかける。

    「……ルフィ、お前体調が悪いのか?」
    「サンジのメシを食ったからめちゃくちゃ元気だ!」
    「じゃあどうしたんだよ。」
    「サンジがメシを食ってるところを見てた。」

    心配しているこちらを他所に、にこにこしながらそう言った。

    なんじゃそりゃ。

    よく分からねェな……、思いながらも、授業の開始時間が近付いているのもあるのでもぐもぐと口を動かし、その横でルフィが話す。

    「おれサンジがメシ食ってんのを見るの好きなんだ。もちろん、料理をしているところを見るのも好きだぞ!」
    「そりゃどーも。」

    前半はよく分からんが、後半の話を聞く限りこいつなりに褒めてるんだろうな、と思い礼を言った。
    いつもうめェ、うめェと称賛の言葉を贈ってくれているが、こういう言い方をするのは珍しいな、と残り一口になった朝ご飯を食べながら思う。
    咀嚼し、飲み込み、最後の一口を口に入れ様とした時に横からずいっと近付く気配がした。
    そちらを振り向くと隣の席とは言えかなり近くに顔があった。

    「なあ、サンジ。毎日おれのメシ作ってくれよ。」

    普段あまり見ない様な真面目な顔がそこにあった。
    真剣な、ちゃかしとかそう言った事は一切無い様な。
    ただ、言っている事がおれにはよく分からなかった。

    「いや、ほぼ毎日お前にメシを作ってるだろ。」

    そう、おれがこの食堂の手伝いを始めたのは、おれが入学した時とほぼ同時だ。
    一学年下のルフィはそれこそ、食堂に通い始めてからほぼ毎日と言っても過言ではない程、食堂のマダム達を始め、おれの作ったご飯を食べている。
    だから、現状既に行われている事に対して、改めて言われるのがよく分からなかった。
    その言葉を聞いてルフィは顔を顰めた。

    「そうじゃなくてよぉ……、えーと、なんつったらいいんだ?」

    途中になっていた最後の一口を口に入れ、咀嚼しながらそれはおれにもわかんねェよ、と思っていると目の前でうーん、と腕を組み、首を傾げながらルフィが悩み始めた。

    「そうだ!これからも毎日サンジの顔を見てメシを食いてェ!あと、サンジと一緒にメシを食いてェ!」

    これなら分かるだろ!と言わんばかりの顔をこちらに向けてくる。
    ルフィが言った言葉を咀嚼し、口の中のものと一緒に飲み込む。

    「それ、今日もやってないか?」

    そう言うとルフィは、ああー、サンジは意外とアホだった……、と天井を仰いだ。
    いや、おめェには言われたくねェよ、と口に出そうとする前に授業開始15分前の予鈴が鳴った。

    「おいルフィ、一年の教室は食堂から一番遠いだろ。予鈴鳴ったしそろそろ教室に行け。」
    「えェーー!!まだサンジと話してェ!」

    毎度ただを捏ねるので特に気にする事もなく、自分の食器とルフィの食器をまとめて返却口へ持っていく。
    そして戻る際に風呂敷包みを手にルフィの元へ行く。

    「ん?なんだそれ。」
    「お前一年の教室からだと売店の方が近いのに、わざわざ昼休憩に遠い食堂まで来てるからよ。弁当作ってやった。」

    ほら、これ持ってさっさと教室へ行け、早弁すんなよ、と渡してやる。
    ずしり、とした重さのそれは保冷剤が入っているのもあるが、ルフィの胃袋を考えて用意したら行楽へ出掛けるのかと聞かれそうな重箱になった。
    まあ、ルフィなら全部食べきれるだろ、とつい作りすぎてしまったのは内緒だ。
    それを手にしたルフィは先程の拗ねた表情から一転し、嬉しさを滲ませ目がキラキラと輝き、勢いよくこちらを見た。

    「これ全部サンジが作ってくれたのか!?」
    「おう。味は保証する。」

    やったー!と嬉しそうにお弁当を持ち上げて喜ぶルフィに見ているこちらまで嬉しくなる。
    やっぱり作ったものを喜んでもらえるのは嬉しいもんだな、と眺めているとルフィが近寄ってきた。

    「サンジ!一緒に食べような!」
    「はぁ?」
    「なあなあ、昼休憩は一緒に食えるよな?」
    「いや、おれは食堂の……。」
    「サンジくーん、今日のお昼はお休みで良いわよー。」

    たまにはゆっくりお昼を食べていらっしゃい、と断りを入れる前によく気さくに話しかけてくれる食堂のマダムにより助け船を出されてしまい、目の前の黒目の輝きが増す。

    「にししっ、サンジ!良いってさ!」

    なあ、どこにするんだ?とキラキラした目に詰め寄られている間に授業開始10分前の予鈴が鳴る。

    「う……、じゃあ、とりあえず中庭に来いよ。」
    「わかった!約束だぞ。」

    そう言うとにかっ、と笑って弁当を抱えて食堂の出口へ走って向かう。

    「おばちゃん!ごちそうさま!サンジ、昼休憩また会おうな!」

    絶対だぞ!と太陽の様な元気な声が響くと風の様に走って出ていき、食堂に静かさが訪れた。
    相変わらず、太陽の様な台風の様な忙しい奴だな……、と思いながら教室へ向かう為に荷物を取りに行く時に先程助け船を出した食堂のマダムに話しかけられた。

    「サンジ君、今の凄かったわね!プロポーズみたいだったわ!」
    「え?」

    何の事か分からない、と頭にハテナを飛ばしているとまたまたー、と肘で小突かれた。

    「毎日ご飯を作って欲しいだなんて、サンジ君と毎日一緒にいたいと言っている様なもんよ!」

    あたしの産まれた地域ではお前の味噌汁を毎日飲みたい、とプロポーズしたりするものよぉー、と楽しそうに話すマダムの声が遠くなっていく。

    え、いや、そんな、ルフィがそんな頭の使う様な事……。

    しかし、食欲が九割の男が言うのなら逆に信憑性があるのでは?と頭がくらくらしてきた。
    頭を抱えたくなる様な事を突き付けられたおれの事など関係無く、無情にも授業開始5分前を告げる予鈴が鳴る。

    昼休憩……、おれはどんな顔をして会えば良いんだ?

    いや、まだ真偽は定かではない!それにおれはレディが好きなんだ!という思いを胸にマダム達へ挨拶をして食堂を出る。
    少し熱くなった頬を冷ます為に走ったが、夏の日差しが強くて冷める事はなかった。



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