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    nyota_okashi

    @nyota_okashi

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    nyota_okashi

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    エロゲーマーのアーサー×森羅♀のネタ
    ギャグです
    18歳まで生きろ!!!って念だけひたすら込めました

    18歳になってからのあれこれ アーサーが自室用にパソコンを買ったらしい、というのは知っていた。
     つい最近部屋に遊びに行った際に机の上に大きめの黒いデスクトップPCが置いてあるのも見たばかりだ。
     「パソコンでしか出来ないゲームもあるからな」と言うアーサーに、こいつ一人部屋だからって好き勝手やってんな。と思ったのを覚えている。
     同期の森羅が男だったら同室になっていたんだろうが、女なので当然別室である。
     結果、いつ新隊員が入ってきても良いようになるべく片付けておけ、と言われていたはずの部屋はアーサーが一人で広々と好きに使っている。

     しかしこれは

    『孕めオラァ!!』
    『んほぉぉぉぉぉおおお!!! しゅごいのぉぉぉぉ!!』

     いくらなんでも好きに使いすぎではないだろうか。

    「……ん? シンラか」
     パソコンから流れてくるあられもない声と、パンパン鳴り響く効果音に凍りついている森羅に、アーサーがクリックを止めて振り返る。
    (いや、俺今日遊びに来るって言ったよな。面白いゲーム買ったって言うから仕事終わったら遊びに行くって言ったよな? あれ? 気のせいか? というかお前パソコンでしか出来ないゲームってエロゲーかよ。まさか面白いゲームってそれのことか)
     等々、言いたいことは色々あるがありすぎて整理出来ない。ツッコミどころが多すぎる。
    「わ、悪い。邪魔した」
     とりあえずいたたまれない気持ちになったので踵を返す。
     いくら何でもこの空間に入っていくのは気まずい。昔から知っている相手のこういう所を見るのは死ぬほど気まずい。
    「は? おい待て。遊びに来たんだろうが」
    「いや呼び止めるんじゃねえ正気かお前」
     何故かアーサーは平然と呼び止めてくる。どういう神経してるんだこいつ。
    「? 何故だ。ゲームやるって言ってただろうが」
    「いやおま、だってそれ……え、えっちなやつだろ?」
     オートモードに切り替えたらしく、まだ喘ぎ声と卑猥な効果音を垂れ流しているパソコンを指差す。
     顔が熱を持っているも声が震えているのも森羅自身気づいていたが、耐性が無いのでどうしようもない。
    「……ああ、エロゲーだからな」
     何だ今の間は。
    「いやエロゲーを人に勧めようとすんな!」
    「今付けてるやつとは別だが、ゲーム性が楽しいと評判が良いやつを買ったんだ」
     森羅の文句を聞いているのか聞いていないのか、意気揚々とゲームの箱を差し出すアーサー。
     箱のデカさにはぎょっとしたが、大きなロボットと可愛い女の子が銃を構えた姿で映っているパッケージは普通のゲームとあまり変わらない気がする。
    「お前もこの前十八歳になったんだからもう遊べるだろ」
    「いや、そりゃ、遊べるけど……」
     まさかこいつ、エロゲーをただ十八歳にならないと遊べないゲームとして捉えているのか?
     正直やりたくないが、しかし一度言い出すとなかなか意見を覆さないのがこの馬鹿騎士だ。
     変なシーンが出てきたらどうすれば良いんだ……と頭を悩ませながら、押し切られて渋々と座布団に腰を下ろした。

     数分後

    「えっちょっこれアクションゲームなのか!?」
     開始早々巨大なロボットに襲われ、同じく巨大なロボットに乗った主人公がバトルを始めた。
     最初はチュートリアルで丁寧に操作の解説を挟まれたが、思ったよりもしっかりしたシステムだった。
     アクションをキーボードで操作するのは難しいから、とアーサーがパソコンに繋いだゲームパッドで操作しているのだが、それが余計にエロゲーをやっているという感覚を薄れさせる。ただパソコンで普通のゲームをやっているような感覚だ。
     ステージ毎に交代して操作していくが、やはりアーサーの方がゲーム慣れしているだけあって操作が上手い。
    「うわこの敵硬いな!?」
    「ちゃんと武装を交換しろ」
     アーサーのアドバイスに従って、敵を次々と撃破していく。
     結局その日はエロシーンまで辿り着く事も無く、二人共いつもテレビの前でやっているゲームとほとんど変わらずに解散になった。

     それから暫く、仕事終わりにアーサーの部屋でエロゲーをやる日が続いた。
     ゲーム性が良い、ストーリーが良いと評判が良いだけあってあまりゲームをしない森羅でも十分楽しめた。
     アクションは段々難易度が上がっていくが、こちらの武装やパーツも増えていくし、プレイヤーも上達していく。純粋にゲームとして楽しい。

     これがエロゲーだ、という事を思い出したのは、最初のヒロインのルートに入って暫くしてからだった。

    「あ」
    「あ」

     いい雰囲気だな、と思ったら早々に主人公とヒロインがベッドに縺れ込んだ。
     あっという間にヒロインが脱がされあられも無い姿のスチルが画面に表示される。
    「う……」
     気まずさから視線を泳がせてしまう。
     ゲーム自体の楽しさからつい頭の隅へやってしまっていたが、よく考えたら何で同僚の異性の部屋でエロゲーをやっているんだ? 馬鹿か俺は。
     何となく隣に座っているアーサーを意識してしまい、森羅は所在なく膝を抱えた。
     最初に見たエロゲー程あからさまに下品な喘ぎ声が聞こえるわけでは無いが、主人公とヒロインが想いを通わせる過程を見ている分こっちの方が少し生々しく感じてしまう。
    (……前にもこんな事があったな)
     あの時はアクション映画を見ていたら途中にヒロインとのベッドシーンがあって、あの時もやっぱり横にいたアーサーの事を少し意識して気まずくなった。
     ただ、あの映画のベッドシーンはここまであからさまなエロでは無かったが。
     流石に十八禁だけあって、今まで見たどの映画やゲームや漫画よりもそこら辺は生々しく描かれている。
     ふと、アーサーはどう思っているのだろうとちらりと視線を向けた。
    「!」
     見た瞬間、アーサーの青い目と視線が合ってしまい、びくりと肩を震わせた。
    「な、なに」
     何でこっち見てるんだよ。ゲーム見ろよ。とは思うが、自分も視線を泳がせたりアーサーを見ようとしたりしていたので人のことをどうこうは言えない。
    「いや……苦手なら飛ばすか?」
     アーサーも目を逸らしながら、そんな事を訊いてくる。
     その頬がいつもより赤い気がするのは、多分森羅の見間違いじゃない。
    「……」
     こいつもちょっと気まずいとか思ってたんだな、と思うと少し肩の力が抜ける。
    「で、でもこういうシーンの最中に重要な話とかしてたりしたら飛ばせなくねえ?」
    「む。それはそうだな」
     二人してあーだこーだと言いながらクリックしていく内に、エロシーンはあっさり終わった。
     意外と短かった。

     それからも、エロシーンが挟まる度に少しの気まずさを覚えながらも、攻略を進めて行った。
     アクションがキツくなってきたのでアーサーに任せる事が多くなったり、攻略途中にヒロインが結構無惨な死に方をして二人して凹んだりしたが、諦めずに物語を進めていく。
     そして数日後──

    「よし! 大団円だな!」
     スタッフロールを見ながら、アーサーが満足げに笑う。
     ラストバトルはなかなか難易度が高かったがアーサーがなんとか撃破したし、伏線を見事に回収してストーリーも最高に盛り上がった。
     最初はエロゲーだからと忌避していた森羅も十分楽しめた。
     流石にエロシーンは少し気まずかったが、シナリオとゲーム性重視のゲームということもありそこまでマニアックな内容ではないし、シーンとしては短めだった事もあり、各ルートを見ていく内に段々と耐性が付いてきた気はする。
    (いや、うん、多分最初よりはマシなはず……)
     未だに少しの恥ずかしさはあるが、最初ほどではない。はずだ。
     もうああいうシーンにあそこまで狼狽える事はない(と思う)し、ここまで楽しめるのならたまにはこんなのも悪くないのかもしれない。と良い読後感に浸っている所に、アーサーがまたデカい箱を差し出してきた。
    「よし次はコレだな!」
    「まだあんの!?」


     たまには良いかもしれない、とは思ったが、アーサーがここまで入れ込むとは思っていなかった。


    ────────────────────────────────────────────

     アーサーに付き合わされて見ている内に、エロゲーにも色々ある、というのは森羅も分かってきていた。
     最初にやったアクションのようなゲーム性のある物もあるし、ただ文章を読んで選択肢を選んでいく物もある。
     ストーリー重視で少年漫画のような熱いバトル展開がある物や感動出来るものもあるし、当然のように完全にエロ目的で作られている物や、何故かグロに振り切ってるものもある、らしい。エロに振り切った所謂抜きゲーやグロゲーはまだ見たことがないのでいまいち分からないが。
     最初の時に見てしまったような抜きゲーは、多分森羅が来てる時は出さないようにしているのだろう。そこについては深く突っ込む気はない。気まずいし。
     アーサーはやはり元々ゲーマーなせいか、ゲーム性があるエロゲーがお気に入りらしく、シリーズになっている大作RPGエロゲーを何周もしている。
     というか何周もしてレベルを上げていかないと誰かしら死んでバッドエンドになるらしく、「どうすれば全員救えるんだ」と頭を抱えていた。エロゲーで頭を抱えるな。
     中には絶対にアーサーの好みではない物も混ざっている気がしたが、どうも名作と言われている物を片っ端からプレイしているらしい。
     今まで年齢のせいで手が出せなかった物をやっと出来る嬉しさからなのか、とにかくアーサーなりに十八歳になったのを楽しんでいるらしい。
     暫くはエロゲーを集中して攻略したいのか、最近はほぼエロゲーで遊んでいる。
     森羅の方もいい加減見慣れたので、どんなエロゲーが来てもそうそう取り乱すことは無くなった。
     が、

    『耳なし芳一のように体中に正の字が書かれたダッチワイフを、五芒星の形に配置する──ドスケベ結界の完成だ』

     今日のゲームはちょっと頭おかしいなと思った。

    「……今日のゲーム、頭おかしいな」
     思っていた事をそのまま伝える。頭おかしい以外の感想が出てこない。
    「テレビで紹介された位流行ったゲームらしいぞ。こんなテンションだが最後は泣けるらしい」
    「マジで!?」
     エロゲーにも色々あるんだな、とは森羅も分かって来てはいたが、まだまだ意味がわからない。一生分かる気がしないが。
     しかし実際流行っているだけあって、下ネタとバカゲーとバトルと青春をめちゃくちゃに混ぜた闇鍋のような作品は意外にも面白く、ゲームが進む内にアーサーと一緒に食い入るように画面を見てしまう。
     と、つい身を乗り出した瞬間、机の下で足に何かが当たった。
    「ん?」
     机の下を覗き込むと、影になって見づらいが大きめの箱があるのが分かる。どうもこれに足がぶつかったようだ。
     模型の箱だろうか。だとすればこんな所にあったら危ない、と考えて箱を掴んで引き寄せる。
     しかし箱にでかでかと描かれた卑猥な絵を見た瞬間、森羅の頬が引き攣った。
    「またエロゲーかよ……っていうかちゃんと片付けとけよな」
     黒髪に赤い瞳が印象的なヒロインが、露出の多い服を着た状態で恥ずかしそうに艶めかしいポーズを取っているパッケージを見て、頬が熱を持つのを感じる。
     色々見せられてきたが、やはりアーサーでも多少は遠慮があるのか、完全にエロに偏ったゲームはほとんど見たことがない。なのでここまでエロを前面に出されるとどうしても恥ずかしい気持ちはある。
     若干の気まずさを感じながら、森羅はアーサーに箱を差し出した。
    「ん?」
    「これ、机の下に落ちてた」
    「……!!」
     珍しく慌てた様子のアーサーにバッと箱を奪い取られ、背中側に隠される。
     その様子に呆気にとられていると、気まずそうに視線を逸らしたアーサーが口を開いた。
    「……見たか?」
    「え? ……ああ、見たけど……今更だろ?」
     今だって画面には大人の玩具を武器にして日本刀と戦っている主人公が映っている。本当に変なゲームだがこれだってエロゲーだ。
    「……そうか」
     何故かほっとしたようにそう言って、持っていた箱をゲーム用の箱に仕舞う。
     前はコンシューマのソフトが並んでいた箱もいつの間にかエロゲーのでかい箱が当然のように並んでいるようになった。イマイチだった作品はちょくちょく売っているらしいが、それでも結構な数のエロゲーが幅を取っている。
    (せめて箱は潰して捨てれば良いんじゃないかと思うんだけど、箱がないと売れないとかあるのか……?)
     下手に言うとエロゲショップに連れて行かれそうだから言わないが。
     しばらくして、主人公と攻略中のヒロインが告白して付き合うことになった所までを見て、その日はお開きになった。
     ちなみにさっきまで敵キャラクターが持っていた日本刀は、主人公が持っていた特製のバ○ブに負けて折れた。バ○ブすげえな、とぼんやりと考えた。



     そんな事があったのも忘れかけていた、ある日──



    「おい、アーサーいるか?」
     コンコン、とノックの音とヴァルカンの声がして慌ててパソコンの音量を下げる。
     アーサーが不思議そうな目でこちらを見ていたが、画面の中ではもうすぐエロシーンに入りそうなゲームがオートモードで流れている。何で不思議そうな表情するんだよ。お前の方が不思議だわ。
    「何だ?」
    「いや、この前の書類に不備があったらしくて、中隊長が呼んでる」
    「げ」
     一瞬で凹んでしまったアーサーが、渋々立ち上がる。
    「行ってくる……」
    「おぉ。ゲーム止めておくか?」
    「進めてていいぞ。選択肢も適当に選んで良い」
    「え、良いのかよ。一回クリアしたのか?」
    「さっきセーブしたしあとで一人の時に見返す。何か笑えるらしいとしか知らないが。どうせ一周すれば回想モードがあるだろ」
     そういう物か、と納得して、アーサーを送り出す。
     そこまで真剣に見なくても大丈夫なら、自分も少し気になっていた机周りを勝手に片付けながら見るか、と立ち上がった。

     ──数分後──

    『んほぉぉぉぉぉおち○ぽしゅごいのぉぉぉぉおお!!!』
    「えぇ……」
     今日のゲームは随分激しいな、と死んだ魚のような目でオートにされている画面にちらりと目線をやる。
     さっきまで可愛かった女の子が箱の形にされていた。
     訳がわからない。どこに興奮するんだこれ。
     アーサーは笑えるらしいとは言っていたがこれもギャグの一環なのだろうか。
     意味が分からなすぎてつい固まって画面を凝視してしまう。

     ガコン。

     片付けの手を止めてパソコンの画面を見ていると、収納棚の方から何かがぶつかるような音がした。
    (? 何か落ちた、か?)
     本来は二人部屋なので、2つある収納棚はいずれ来る(かもしれない)新隊員のために片方だけ使わなければいけないらしいが、アーサーの事だからどうせ二つとも使っているのだろう。
     気にはなるが、表に出ている所はともかく棚や箪笥の中まで触る気は無い──が。
     ──ガタッガコッ……バタンッ!!
    「ええええええ!!?」
     先程中で何かが落ちたのがきっかけなのか、勢いよく扉が開き雪崩のように大量の箱が飛び出してきた。
     慌てて近付きそれ以上の雪崩を食い止めようとするが、近付いた事でその箱の正体が分かり頬が引き攣った。
    「ぜ……全部エロゲー……」
     今更どうこう言うつもりは無い。無いが、流石にこれはどうなのか。
     溜息を吐いて箱を棚の中に戻してやろうと、床に散らばる箱を一つ手に取る。しかし前に見た時も思ったが、どうしてこうエロゲーの箱はデカいのか。妙に頑丈そうだから潰すのも大変そうだし、一つ一つの大きさにバラつきがあるから、これでは雪崩が起きるのも当然である。
     と、そんな事を考えて、あることに気付いた。
    (あれ、これこの前見たやつ──)
     何故かこれだけは慌てて隠していたな、と、ついまじまじとパッケージを見てしまう。
     黒髪に少し吊り目がちの赤い目をしたヒロインが艶めかしいポーズを取っている。
     裏面を見ると、何故かローションでねちょねちょにされているヒロインが映っていて「ああ、これは抜きゲー(エロ重視のエロゲー)ってやつなんだな」と考える。いい加減慣れてきた。いや慣れたくなかったが。
     しかしこれをプレイしている所は見たことが無いな、と考えていると、ある事に気付く。
    (……そういえばアーサーは今までプレイしてたゲームは全部あっちのテレビの近くの箱に出し入れしてたし、あの時これもあそこにしまってたよな……? 何でこっちの棚に……って、こっちのゲームも今まで見たことない、よな)
     別の箱──黒髪に赤い目のヒロインが半分脱げた状態のあられもない姿で、潤んだ視線をこちらに向けている──を手にとって、とりあえず先程のゲームと重ねて棚の中に突っ込む。
     疑問はあるが、雪崩が起きたまま放っておくのはなんだか気持ち悪いので箱を一つ一つ手にとって片付けていく。
     黒髪に少し吊り目がちな赤い目をしたヒロインがよく似た人物と背中合わせになり、悲しそうな表情をしてこちらに手を差し伸べている箱、これは伝奇ものとかいうやつだろうか?
    (……抜きゲーは恥ずかしいから隠してる、って事じゃないのか……? これは別に普通に面白そうだけど……)
     裏面を見ても、エロシーンは極僅かで田舎町にある屋敷の奇妙な風習と、町で起きる謎の殺人事件等がピックアップされている。
     首を傾げながら棚に突っ込んで、次の箱を手に取る。
     巫女服を着た黒髪に赤い目のヒロインが触手に絡みつかれて悔しそうな顔をして謎の粘液でねちょねちょにされている。もう間違いなく抜きゲーだろう。あいつこんなのもやるのかよ。ちょっと引いた。
     次の箱を手に取る。
     短い黒髪に赤い目をしたヒロインがチェスの駒の前で玉座に座っているパッケージ、何だかよくわからないが多分シナリオ重視の奴だ。そういえば訓練校時代はこの位の髪の長さだった気がする。これも楽しそうだが──。
    「……」
     ここまで来て、やっと違和感に気付いた。
     つまり、ここの、雪崩が起きているこのゲームの全てが──
     何故か背筋が凍りそうだが、恐る恐る、床に散らばっている箱達に目をやる。

     黒髪赤目ツンデレ黒髪赤目黒髪赤目黒髪赤目ツリ目黒髪赤目黒髪赤目ツンデレ黒髪赤目黒髪赤目ツンデレ黒髪赤目黒髪赤目八重歯黒髪赤目ギザ歯黒髪赤目黒髪赤目ツンデレ黒髪赤目黒髪赤目黒髪赤目ツリ目黒髪赤目黒髪赤目

    「うわぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!????」

     手に持っていた箱をぶん投げた。

    「な、な、なんっ……、何……!!?」
     ぶん投げはしたが、ぞわぞわと悪寒が止まらない。
     いつも何を考えているか分からないアーサーの、何か執念のような物を感じてしまった。
    (っていうか黒髪に赤い目って……)
     昔から、鏡を見れば当然のように見てきた姿である。
     それと黒髪赤目のエロゲーだけを自分に見せないようにしていたアーサーの姿を思い出し、何故かありえない想像をしそうになって背筋を冷たい汗が流れる。
     いやいや。いやいやいやいやいや。
    (いやいやいや黒髪に赤い目なんて俺以外にもいるもんな!! 新門大隊長だってそうだもんな!?)
     いや新門大隊長はツリ目ではなくタレ目だが。というか新門大隊長を想像してこれらを買っていたとしても相当やべえ奴ではあるが。それはそれで正気に戻れと頭を引っ叩きたくなる。
     誰が相手だとしてもこれはおかしいだろう。誰か特定の相手を投影してエロゲーをここまで集めるのはおかしいとしか言えない。
     ただ単にアーサーの好みが黒髪に赤い目のキャラだという方がまだ受け入れやすい。いやそれはそれで近付き難くなってしまうが。
     どうすれば良いんだ。アーサーだって多分もうすぐ戻ってくるはずで、どんな顔で出迎えれば良いのか分からない。急いで片付けて何事もなかったふりをするか? それとも問い詰めるべきか、いっそこの場から逃げ出すべきか。ぐるぐると纏まらない思考のまま立ち尽くしていると、ガチャリとドアが開いた。

    「おい何だ今の悲鳴。どうし──」

     最悪のタイミングで帰ってこられた。
    「…………」
    「…………」
     暫し、見つめ合ったままお互いに凍り付く。
     二人共黙り込んでしまった室内に、パソコンから流れる喘ぎ声と卑猥な効果音だけが流れる。

    『おほぉおおおおお!!!』
    『孕めオラァ!!!』
     パンッパンッパンッ!

     すげえやかましい。
     アーサーは雪崩が起きているエロゲーの箱を見て何かを察したのか、気まずそうに視線を逸らした。
     おいやめろ。ここで気まずそうにされるとさっきまでの嫌な考えがそのまま現実になりそうだ。
    「な、なあ、この棚の中のゲームって……」
     頼むから何か言い訳をしてくれ、と思ったが、この馬鹿がそんな器用な事を出来る訳もなく──

    「……お前に似てると思って……」

     あっさりと爆弾が投下され、今度こそ空気が凍り付いた。


    「は……っ半径3メートル以内に近づくんじゃねええええ!!!」

    ────────────────────────────────────────────────


    「こっち来んな! 怖い怖い怖い!!」
    「おい待て! 話を聞け!」
     慌てた様子の二人の声が聞こえ、ヴァルカンは声がしてきたほうを覗いた。
     速歩きで自室の方へ逃げる森羅を追いかけながら何か言い訳をしようとするアーサー。また喧嘩かよ、と思ったが、どうもいつもの喧嘩とは様子が違いそうだ。
    「嫌だローションでねちょねちょにされる!!」
    「パッケージの裏面に書いてあったプレイ内容をそのまま言うな!!」
     いや、どんな喧嘩だよ。
     アーサーが森羅に向けている想いは知っていたが、知らない間に成就したのだろうか。それにしても付き合いたてでして欲しい喧嘩の内容では無かったが。
     弟や妹のように思っていた二人が何だか生々しい事で喧嘩していて少し悲しくなってしまう。
    「と、とにかく暫く近づくな!! っていうか見んな!!」
     何故か顔を赤くしてひどく狼狽えている様子の森羅が自室につくと、アーサーに向かってそう言い放った。
    「待──」
     バタンッ!
     勢い良く鼻先でドアを閉められ、廊下にはドアの前に立ち尽くすアーサーだけが残される。
     何が何だか分からないが、黄昏れている後ろ姿を見ていると何だか可哀想に思えてくる。
     先程自分が呼びに行った時は仲良くパソコンの前に座っていたのに何があったんだ。
    「あー……おい。どうしたんだ? 喧嘩したのか?」
     しょげている背中を見ていられなくて、つい声をかけた。

     しかし、ここまで酷い状況だとは思っていなかった。

    「おま……これ、シンラに見せたのか……」
    「……ちょっと席を外したらバレたんだ……」
     雪崩が起きたままの、とんでもない数の黒髪赤目ヒロインのエロゲーに目眩がする。
     知らない間にここまで拗らせていたのか。
     元からちょっと愛情が重い方だとは思っていたが性欲はそこまで無さそうだと思っていたのに。やはりお年頃だからか。
    「……実際に何かした訳じゃないぞ」
    「いやまあそうだけど」
     やってたら大問題だ。
     しかしこのラインナップを見ると本当は色々やりたいんだろうなあと否が応でも分かる。
     今まで何も考えずにアーサーの部屋に遊びに行ってたんだろうに。アーサーが自分に重ねてこんな物をやっていたと知ってしまった森羅にとっては災難だと思う。
    「シンラに似てないヒロインのエロゲーは一緒にやって遊んでいたんだが……」
    「いや待て」
     とんでもない事を言い始めるアーサーに一旦止まってもらう。
     ちょっと理解できない。
    「……エロゲーを? 一緒にやってたのか?」
    「そうだが?」
     何を不思議そうな表情をしているんだ。不思議なのはお前だ。
     いや森羅も何故エロゲーに付き合ってたんだ。距離感おかしくないかお前ら。
     普通付き合ってない相手とエロゲーやらねえだろ。いや付き合っててもやらねえけど。
    「おまっ……お前……そういうのは好きな相手には一番見せちゃ駄目だろ……」
    「だからシンラに似てるヒロインのやつは隠してたんだ」
     訳がわからないが、しかしオカズを隠す気持ちは分からなくもない。
     この状況を見た限り完全に事故だろうが、それを見られてしまったのは可哀想な気はする。いや森羅の方が災難なのだろうが。

    「……まあ、もうここまでバレちまったんなら、いっそ自分の気持ちを正直に言ったほうが良いんじゃねえの」

     森羅にしたって一緒にエロゲーをやってくれる位の好感度はあるはずで、それなら勝算は別に低くないんじゃないか、と思って言ったことだった。
     当然ながら、この時はこの発言を後悔することになるなんて思っていなかった。

    ────────────────────────────────────────────


    「な、なんだよ話って……」
     あのエロゲの山を見てしまった翌日、仕事終わりにアーサーに呼び止められ、話があると告げられた。
     視線を合わせるのも気まずくて仕事もやりづらかったし、いつもの喧嘩とも違う様子にみんなが心配しているのも分かっていたので、どこかのタイミングで話さないといけないとは森羅も思っていた。
     しかし昨日の今日でいきなり話があると言われても警戒心が解けるわけもなく、いつも通り部屋に連れて行こうとするアーサーを説得して屋上まで連れてきた。今アーサーの部屋で二人きりになるのは流石に勘弁してほしかった。
     森羅の心配をよそに、アーサーはいつもとほぼ変わらない様子で口を開いた。
    「見られたのにはアレなのも混ざってたが、本当はこういうのが好きなんだ」
    「は?」
     デカい箱を手渡される。
     やはり黒い髪に赤い瞳のヒロインが微笑んでいる、柔らかい絵柄のパッケージだ。
     裏面を見るとやはり小さくエロシーンも紹介されいるが、やたらと純愛を強調されている。
    「……え?」
     だから何? と言いたくなる。
     森羅は別にプレイ内容に驚いたわけではなく、自分の特徴と同じようなヒロインのエロゲーを集めていた事に驚いたのだが。
     ──変なことをする気はないから安心しろと言いたいのか?
     なまじ付き合いが長いばかりに、頭が勝手にアーサー語を翻訳しようとしている。
    「……よく分かんねえけど、俺に、あ、ああいう事したいって訳じゃ無いってことか……?」
     雪崩が起きたエロゲーの中にあったあれやらこれやら、かなりヤバい内容の物を思い出して頬が熱を持つのが分かる。
     だから、純愛モノなら別にいいと言うわけではないが、ああいう事をしたいと思われている訳ではないなら少しはマシ──かもしれない。
     と、森羅は思ったのだが。

    「いやそれはしたいが」

     あっさりとそんな答えを返された。
     キャッチボールをしようとボールを投げたら爆弾を返された気分だった。
    「訳が分かんねえんだけど!?」
     結局したいのか。なんなんだ。
    「それ位大事にしたいと思っているが、許してくれるならああいう事もしたい。いや触手は不可能だが」
     当たり前だ。
     それ、というのは今渡されたエロゲーの事か。
     純愛モノくらい大事にしたいってなんだ。どういう意味だ。
     というか
    「やっぱしたいんじゃねえか!! 最初の反応で合ってただろ!! ばか!!」
     そう叫んで、もう付き合ってられるかと踵を返そうとする。
     が、腕を掴まれて引き戻される。
    「ちょっ……」
     慌てて振り払おうとするが、それより前にアーサーが更に爆弾を落としてきた。
    「好きな相手とはしたいに決まってるだろうが!」
    「……は?」
     今、なんと言われたのか。
    (すきって何だっけ……すき……好き?)
     理解してしまった瞬間、顔が熱を持つのを感じた。
    「はっ……半径五メートル以内に近づくな!!」
     昨日と似たようなことを叫んで、掴まれた手を無理矢理解いて駆け出す。
    「距離が伸びたぞ!?」
     後ろで何か馬鹿が叫んでいた気がするが、構っていられない。
     慌てて自室に駆け込んで、ドアを勢いよく閉めた。能力は使わなかった自分を褒めてやりたい。
     未だに顔が上気しているのが分かる。走ったせいだと思いたかったが、そうじゃないのは自分が一番わかっている。
     頭を抱えて、扉に凭れ掛かったままずるずるとしゃがみ込む。
     先程アーサーに渡されて返しそびれていた純愛ゲーがぽろっと手から落ちて床に転がったが、それを気にする余裕は無かった。
    (す、好きな相手って……純愛モノ位大事にしたいってなに……?)
     意味が分からない。
     本当に意味が分からないが、何故か心臓が壊れそうなくらい早鐘を打っていた。




     そしてアーサーから森羅との話し合いがどうなったかを報告されたヴァルカンも、当然のように頭を抱えた。
    「……誰が性癖暴露して来いって言ったよ」
     正直に言えとは言った。言ったがそこじゃない。
     いや告白もしたみたいだが、性癖暴露を挟む必要性はあったのか。
     普通に考えたら印象最悪なんじゃないだろうか。
    「ったく、応援してんだから……」
    「……嫌がられなかった」
     どこかぼんやりとした様子だったアーサーが、ぽつりと呟いた。
    「え?」
    「……好きだと言っても嫌がられなかった。いや、抜きゲーみたいなのをしたいと言った時は嫌そうだったが」
     そう言うアーサーの目が獲物を狙う獣の目のように見えてしまったのは、何故なのか。
    「……」
    「もう少し押しても平気か……?」
     これは森羅逃げたほうが良いんじゃないか? なんて一瞬思ってしまったが、ずっと応援してきた恋だ。
     これ以上アーサーが拗らせる前に早く丸く収まって欲しい。
     出来れば、これ以上アーサーの部屋に黒髪赤目のエロゲーが増える前に。



     以前よりも更に押しが強くなったアーサーに丸め込まれた森羅が、またアーサーの部屋によく遊びに行くようになるのはもう少しあとの話。






    ────────────────────────────────────────────

    余談

    最初にやってたエロゲと箱化のアレ→多分対i魔i忍
    アクションすげえ→バiルiドiスiカiイ
    少年漫画みたいなやつ→light作品とかニトロとか
    泣ける→key系
    どうやったら全員助けられるんだって頭抱えてるRPG→ラiンiス10
    頭おかしい→ぬiきiたiし
    伝奇もの→月i影iのiシiミュiラiクiル
    女の子がチェスの駒の前に座ってる→9nine
    あとは適当
    黒髪赤目の中には和i香i様iのi座iすiるi世i界も入ってんじゃないかな……黒髪赤目ツリ目お姉ちゃん属性……
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