私の彦星と僕の織姫同じ組の学友に短冊を渡されたが、私は〝無病息災〟と当たり障りの無い願いを書き記して吊り下げた。
「三郎が書くと胡散臭いね」
「お前には言われたくない」
胡散臭さを体現したような男に覗き込まれ、私は仕返しに、彼が書いた短冊を取り上げて無断で読み上げた。
「美味しいものたくさん食べたい……ってお前なぁ」
「〝いけどん〟〝ギンギン〟〝もそ〟よりマシでしょ」
「あの人達は異次元だから……」
私と同じく、組の学級委員を担っている勘右衛門は、短冊を奪い返して吊り下げている。近くに兵助の〝俺の作った豆腐を食べてね〟と書かれた短冊が吊り下げてあった。
回覧板じゃないんだぞ。
当の本人は、火薬委員会の後輩に囲まれて、笹に彼らの書いた短冊を、高い位置に飾り付けてやっていた。
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