喋らねぇで、場地さん…!①「千冬ぅ、手たりねぇから、飲み物取りに来てくれ」
「分かりました!」
学校帰りに場地の家に遊びに来ていた千冬は、そう大きな声で返事をした。
もう随分慣れた憧れの人の部屋で急いで立ち上がると、食べ物を取りに行った場地の元へと急ぐ。
と同時に、どこか身体に違和感を感じた千冬は、場地の元へ向かいながらも首をかしげた。
身体の動きが自分の意思と噛み合っていない。そんな不思議な感覚がある。
目的の場所へは向かっているものの、思っているタイミングで手足が動いていない気持ち悪さに、思わず顔を顰めた。
「なんだ……? これ……」
突然の事に困惑しながらも台所へたどり着けば、身体への違和感はピタリと止まった。
余計に訳が分からなくなり、千冬は混乱したような面持ちで自分の両手足を確認する。
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