君の夢(四)慊人に縁談/はとりの現在/呉慊プロポーズの話捏造満載。髪形や服装は最終回のイメージ。
ぐれあきなら何でも読むよ!という人向けです。
大事件も工口も起こりません。文章が雑(主語も述語も分かりにくい?)。当主って何だろう…?後日、大幅に書き直す可能性があります。
続きものですが、単品で読んでも意味は分かると思います。
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本文中の説明が不十分ですが、由希が大学一年生の年度の初夏に買い物(あやめ訪問)、その夏の終わりに海でプロポーズ(の予告)、今回はその次の年(由希が二年生の年度)の秋から始まる話です。
都合により文頭一字下げるのやってません(それ以外にもとにかく雑)
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じっと座っていると、閉め切った室内でも肌寒い季節になった。慊人は肩に掛けていただけのカーディガンに、袖を通した。
当主の仕事は多岐に渡り、365日、何かしらある。けれど細かな締め切りに追われるようなものではないため、メリハリをつけるよう土日はほぼ完全に休む事にしている。
今日は土曜日で補佐役の紫呉に来てもらうつもりは無かったが、彼は訪ねて来た。
「ほら、最近働き過ぎでつるむ友達も疎遠になっちゃって」
慊人は一瞬ギクリとしたが、どうせいつもの軽口だ。
「元々そんな友達、いたことある?」
「いましたって。まあ、でも、今日は課題の期日が迫ってる<女子大生・慊人ちゃん>が心配でわざわざ顔を見に来たんですよ、優しいなあ」
「気持ち悪い」
呆れる慊人だが、やっぱり嬉しい。
「襖、閉めてよ。寒い」
「閉めるって、僕が部屋に入ってから? 出てから?」
「……入って」
今年の春、慊人は大学生になった。
といってもほとんど通学する必要はなく、主にオンラインで受講出来る。学位を取ることが目的だった。
これまでは、当主として存在すること自体が彼女の最大の仕事だったし、今後も慊人が草摩のビジネスや資産に関する実務をする訳ではないが、積極的に仕事に関わっていくにあたり他の名家や旧家の重役と接する機会も増える。そういった面々と渡り歩くため、形式だけでも学歴を付けた方が今後の為になると考えたからだ。
きっかけはそんなものだが、慊人は勉強も面白いなと思い始めていた。実際に通学して勉強している学生とは学ぶ内容も違うのだが、大学の勉強は高校までの教科学習とは大きく異なり新鮮だった。
大学に通っていたら学びも出会いも多かったことだろうと、つくづく世界の広さを感じた。
大きな草摩家だって、世界から俯瞰してみれば小さなものだ。思いつめて背負い込み過ぎる必要は無い。けれども、今は少しでも良い当主になろうと、単位に必要なテストやレポートにも一生懸命取り組んでいる。
紫呉の思った通り、慊人は仕事机に大学用のタブレット端末や参考文献を広げてレポートを書いているところだった。
「今、忙しい」
来てくれたのは嬉しいが、相手をしなくても紫呉はきっと今日も黙って側にいてくれる。
デスクに向かって座り直し、タブレット用のキーボードを叩き始める。紫呉も分かってますよとでも言いたげに、慊人の部屋に置いていった読み掛けの本を取り、デスクから少し離れたところにあるローデスクの辺りに座り込んで本を開いた。
まだ学位の取得は遠いというのに、度々慊人に見合いの話がやってくる。
先方から是非にという話以外に、草摩家にとって、より有益な結婚をさせようと水面下で画策している者達も活発に動いているのである。
良家の縁談に関わる者達は、学歴を重視する癖にそれは学力や人間性を評価する為ではなく、金を積めば後付けで何とでもできるものだと考えている者も少なくない。 “お飾りの当主”でも回っている草摩の安定感も魅力だが、慊人自身、稀に人前に出ても聡明な印象で品があり、どの家と縁を結んでも恥にならないだろうと評判だった。
楝派にとっては慊人の力を強くさせないように、慊人には結婚もさせないか、低レベルな家に嫁がせてしまいたい。体が弱くて子供も望めそうにないだとか、学校にもろくに通えない問題児だっただとか、性別を偽っていたのには言うのも悍ましい事情があるだとか、側に付ける男をとっかえひっかえしているだとか、酷い噂を流したが、それをかき消すぐらいに当主・草摩慊人には価値があった。
紫呉は見合いの件も草摩の連中の動きも知っているのに、態度を変える事は無かった。
「順調そうですね」
少し悩むところがありタイピングの指が止まると、紫呉が話し掛けてきた。画面に集中していた慊人は、はっと紫呉を振り返った。
紫呉はこれでも賢くて教えてもらう事も多い。専攻は異なるが、レポートの書き方や参考文献の事など、基本的な事でも一から独学でやるより良い。
「ちょっと休んだら?」
「いい。今いいところなんだから」
紫呉が誘う様に慊人の肩に触れたが、慊人は拒む。
「真面目だねぇ」
「今はダメ」
「今は? ……それ、もう完成しそうだね。完成したら構ってくれるって事ですかねぇ、楽しみだな」
相変わらずややこしい男だが、慊人は紫呉を好きだし、愛されているとわかってる。
陽はまだ高いが、最近はもう少しすれば辺りは暗くなる。それまでには完成しそうだ。時間を空けて見直した方が良いものが出来そうだし、今日はもう終わりにしよう。
「……暗くなったら、良いよ」
「えっ?」
時折素直になる彼女に紫呉といえども慣れる事は無かった。
(レポート仕上げた慊人のか、待てが出来た僕のか、どっちへのご褒美だろうね)
嬉しい気持ちを抑えて、慊人の頭にぽんぽんと触れると、また本を読みに戻った。
二人が恋愛関係にあるのは公然の事実だが、紫呉がふざけて親密ぶりをアピールする事はあっても、おおっぴらに見せつける事は無いため、周囲は二人の間に別の縁談をねじ込む隙がまだあると考えている。未だに草摩の財産争いしてる連中は、慊人に自分達の都合のいい結婚をさせようと思ってる。
紫呉は横で本読みたまに慊人を盗み見る。
(あー、いいなあ、なんか……家庭教師とJDシチュ……)
嬉しいのを堪える。
浮かれた紫呉とは裏腹に、慊人は紫呉が最近断った縁談の見合いの日は今日だったなと朝から何度も思い出していて、今もまたその事に頭を支配されそうになる。
紫呉だって言わば良家のお坊っちゃんだ。三十も過ぎてしまい、周りはやきもきしている。
紫呉の結婚を慊人が拒んでいる、当主のわがままだ、権力乱用だと罵る声もあった。
紫呉本人は、今も自分の意思でブラブラしてるふりをしてる。
紫呉がもっと庇ってやったらどうだと、楽羅や燈路辺りは思うが(そもそもまだ未成年の燈路の耳にもそんな話が入るような草摩家はやはり問題だ)、何を言っても聞かない人は聞かないのだから、紫呉がムキになって動くのは得策でないと十二支の皆は理解している。慊人も紫呉もはっきりと結婚の意思を宣言しないのには、自分達の知らない複雑で陰湿な事情があると知っていた。
紫呉は縁談を断ってることを慊人に言っていなかったが、当主の立場上、情報が上がってくるからほとんど全て知ってた。
(直接話してくれても良いのに……。でも、紫呉は何度選択を迫られても、何度僕が道を間違えても、やっぱり僕を選ぶ)
紫呉の顔が見たくなってきてしまった。
「……ちょっと休もうかな」
紫呉が素早く本を閉じた。
「そう言えば、さっき僕の親来たでしょー?」
「うん、用事のついでだって言って、挨拶だけ」
「慊人さんに会うかも知れないからって、どっちの服を着ていったら良いかって聞かれましたよ」
「何それ」
「慊人さんなんてもう娘みたいなもんなのにねぇ、もうお義母さんって呼んでます?」
「呼ぶ訳ない」
紫呉の両親はそろって真面目で、母親の方は神経質なきらいもある。慊人の機嫌を取る。
彼らは物の怪憑きを養う家庭として、元々他の草摩家より取り立てられてはいたが、紫呉が突然慊人の補佐についた事で、周りから探りや圧力あったらしい。それで一層やきもきしているらしい。
(僕が紫呉と結婚するって決めて、はっきり宣言でもすれば済む話だし、早いほど助かる人もいる……それは分かってる)
でも慊人はそのタイミングが今なのか計りかねている。
僅かに胸に暗い影が広がるような気持ち――その時、襖の向こうから若い女性の声がした。
「慊人さん、今、よろしいでしょうか。お茶をお持ちしました」
声の主は、依鈴を監禁した猫憑きの部屋に食事を運ぶ係を押し付けられていた女中だった。
「わー、タイミング良い!」
紫呉が寛いでいる方のテーブルにお盆を置いた。
襖越しの声は落ち着いていたが、彼女はその声色に反して嬉しそうに二人に微笑むと、いそいそと退出した。
相変わらず女中連中の間では小さな衝突が起きているようだ。おそらくあまり楽し気に入室するのを見られると、困る事情があるのだろう。それでも彼女は二人が柔らかい雰囲気だったので嬉しい気持ちを隠せなかったのだ。
彼女は慊人の事を気に掛けていて、慊人が一人でいる時は気遣う様に声を掛けてくれる。
彼女は草摩の誰かに父親の件で弱みを握られており、その件に慊人も知らぬ間に(正確にはあきとはその頃十二支達との壊れていく絆に気を取られ無関心だった)加担していた。依鈴の件は、女中長を通した慊人の指示だったが、猫憑きの部屋の解体を決めた頃、慊人が彼女に真摯に謝罪し、父親の件にも手を回した。彼女も素直にそれを受け入れ、和解した。それ以来彼女は慊人の味方だった。
彼女自体、依鈴の件以前から、慊人を恐れてはいたが、何か特殊な事情がありそうだと心配していた。自分と同じ年頃だが、歳に見合わぬ深い悲しみや寂しさを抱えていると感じていた。慊人の全てを理解できた訳ではないが、変わろうとする慊人を見守りたいと思えたのだ。
運ばれてきたお盆には、お茶と小さな茶菓子が二人分乗っていた。
温かいお茶が美味しい。沢山の人に救われていると実感し、身が引き締まる思いで一口ずつ飲んだ。
紫呉の入れ知恵があったにしても、慊人は人の気持ちを読むのに長けていた。
そのせいで十二支を、周りの人々を傷つけてきた。
紫呉の気持ちこそ読めればよかったのに。拗れた関係、呪い、今更考えても仕方ない。
これからはその洞察力を生かせば、仕事だけでなくみんなの気持ちにも配慮出来る優れた当主になり、一族をまとめていく一助になるだろう。
慊人がデスクに戻る。
「じゃ、僕も一応あの書類に目を通しておこうかな」
「なんだ、ちゃんと仕事もってきてるんじゃない」
「偉いでしょー?」
紫呉も資料読み出す。
少し見つめてみると、真面目にしている時の紫呉はかっこいい。元々かっこいいのだが。内面的にも、ますます余裕や頼りがいがあるように思う。
ふと、思った。
紫呉はまだ僕を待っていてくれる? やっぱり重荷で、結婚は嫌って思ってないかな? 僕を待ってくれてるんじゃ無くて、結婚したくないだけ? 僕よりも良い人が現れたら、あっという間に結婚……なんてする訳ないよね――僕の事を求めてくれているのは信じてるけど。僕は海であんなことを言って……紫呉を縛り付けてる?
それから数日して、慊人は定期健診の為、はとりの医院を訪ねた。
「結婚を、しようと思う」
はとりの言葉に、慊人はそうなる事は知っていたが、驚いてぽかんと彼を見つめた。
「彼女には結婚を申し込んで、彼女のご両親にも挨拶に行った」
はとりは透達の卒業を待ち、周囲に結婚前提に考えている女性がいると言って、縁談を画策する面倒な者達を散らしてた。
はとりは両親いないし、草摩の主治医として信頼も厚く、安定した立場を築いている。欲に目のくらむ連中とは関わらないし、結婚に向けてスマートに準備していた。
相手がどういう立場の女性であるかも、機会を見て周囲に明かしていた。
慊人がはとりから直接聞くのは初めてだった。
幼い頃からずっと傍にいて、特別な絆を持ってきた。
幼馴染の絆は消えたりしないが、大人同士、今の彼らの関係は当主と主治医だ。
何もすべて慊人に報告する義務などないし、それはお互い分かっていた。そういう話はすぐに一族内で共有されてしまう、そういう一族だという事もお互い良く知っていた。
「――そう、おめでとう」
佳菜の事、はとりの目の事を思うと、どんな態度でいればいいか分からず緊張が走る。
当時の慊人は気がおかしくなっていたとしても、自分のした事の重大さをひしひしと理解している。
「ひとつだけ言わせて欲しいことがある」
はとりは気にするなと言ってくれる。そう思うのは傲慢かもしれないが、やっぱりきっとはとりは慊人を許してしまう。
「何も言わなくて良いし、こんなの忘れてくれて良い――」
(僕の事なんて、いっそ相手にしなければ良いのに、僕を許して心配してくれる)
「ごめんなさい」
真っ直ぐ目を見て言えた。
はとりは少し驚いた顔をした。
慊人はその表情の理由が分からず委縮した。
古い日本家屋の診療室は、小まめにメンテナンスされているが、隙間風が入り込む。
今年も冬が来る。冷たい雪も降るだろう。
慊人も佳菜を思い出す。可愛らしくて優しそうで、きちんと対面したのはあの時だけだったが、その明るい笑顔から一目で素敵な女性だと感じた。生真面目なはとりに喜びや寛ぎを与えてくれそうな。きっと二人は似合いの夫婦として一生穏やかに連れ添っただろう。
申し訳なさに目を伏せた。
(俺は忘れてなんかいない、忘れた事なんて無い。それなのに俺の中で――もう過去の事になっていた?)
今も新しい姓で暮らす佳菜には、二度と会えないし会うつもりは無い。繭の事を一番に考えているけれど、それとは別にとても大切な人。それなのに、謝られても一瞬、ほんの一瞬だがぴんとこなくて。
(俺も、慊人も、前に進んでいる)
大切で心配な女の子。憎んで、うんざりして、身が引き裂かれるような気持ちと愛着のせめぎあい。投げ出したいのに見捨てられない。他人に話しても理解されないだろうが、強固な絆が確かに存在した。すべて呪いのせい草摩のせい、自分は何もしてやれないと諦めて、大事な問題に蓋をしてきた自分。
「……そうだな」
はとりの返事に慊人は身を縮めた。はとりは言葉を続けなかった。
はとりは、それでも佳菜のことを安易に許せない気持ちを大事にしたい。それに、きちんと慊人を咎めてやりたかった。
「慊人に謝って欲しい訳でもないし、謝られたくない訳でもない。絆に縛られていたし、ひどく動揺していたとは言え、術を施したのは俺の選択だ。でも、俺も慊人に言いたい」
「…うん」
慊人は膝の上のこぶしを握り直した。
「慊人が頑張っているから、感謝しているし、あの件のわだかまりは無いつもりだが、もう気にするなと言ってやる事はまだ出来ない気がする。代わりに言える事は――誰も慊人に幸せになって欲しくないなんて思ってないさ」
「え?」
思わずはとりと目が合うと、はとりの変わらず温かい誠実な目と目が合った。
「あ、……いや、唐突だったな」
はとりにしては珍しく目を泳がせた。
「なんと言ったら良いか……慊人は変わった。紫呉も相変わらずだがよくやってる。それでもまだ問題は山積みだが、みんな――少なくとも十二支達は、きっと慊人の幸せを願ってくれる」
「そ…」
そんなことないと言い掛けたが、十二支はそういう子達だ。
「慊人を蔑みたい人間に構って不幸になりにいく必要はない。人を蔑み不幸にしたがる人間達に振り回されるな」
それはかつて慊人のした事だ。はとりにそんなつもりはなかったが、慊人の胸に刺さる。
はとりは本当にどこまでも優しい人間だ。佳菜が幸せになり、透や繭が現れた事も大きいが、きっとそうでなくても、はとりはそう言ってくれただろう。そういう人だ。優しさをただ受け止める勇気が欲しい。
「実際……慊人は草摩の事をよく見てよく考えてやり方を変えて言ってると、俺は思う。当主は慊人で、きっと正解だ。誰に何を言われても大切なものを大切にすれば良い。抱え込まずに、もっと頼るように」
結局はとりは、優しく慊人の頭を撫でてしまった。
慊人ははとりの悲しみも無念さも怒りも、心からの優しさも感じ取った。
「ごめんなさい――ありがとう」
もっと早く慊人に向き合ってやれれば良かったのにと、今ならいくらでも後悔できるがそうしても何も変わらない。
「……みんなが頑張ってるのに、僕が草摩の悪い伝統のいいなりになったら台無しだ。僕の代で、変えていきたい」
「そうだな」
これから変わっていく彼女を見守り、自分ももっともっと変わっていけばいい。
誰かのせいにしたくないと言った由希の言葉、草摩を出て、透を連れて行く自由を選んだ夾。
みんな大人になった。変わらない優しさと、変わっていく勇気を持って。
「さあ、今日はこれで終わりだ。引き留めて悪かった」
はとりはカルテを閉じると、子供向けのキャラクターの包みの飴を慊人に渡した。
「え?」
「ん?」
「僕に?」
「あ……」
慊人はそれが小さな子を診察した際のご褒美のための物だと見抜いた。
先代の主治医、つまりはとりの父親にも何度か貰った事があったからだ。
「間違えた、その、」
はとり自身、あまりに自然に手渡したことに驚いた。
「……疲れてるんじゃない?」
「少し、昔を思い出したからかもしれないな」
慊人はきょとんとしたが、何か分かる気がして、じゃあ貰うねと大切にポケットに仕舞った。
慊人が帰った少し後。
「なんの用だ」
はとりが低い声を出した。
「えー? はーさん、なんか不機嫌?」
「忙しいんだ。ご機嫌ではない」
紫呉もはとりを訪ねてきた。
「仮病で診察に割り込んでくるのはやめろ」
「ゴホゴホッ、なんか風邪っぽくて~?」
紫呉はなんやかんや慊人を気遣っているし、結局はとりの事が好きだから会いに来てしまう。はとりもやっぱり紫呉に不満があるが、会えば少しは嬉しく思ってしまうのだ。
「こっそり聞きに来るな。直接話せと何度言えば」
「えっ、別にはーさんに会いに来ただけですけど? あ、じゃなくて本当に風邪だし? まあついでに慊人さんの話も聞いていこうかな?」
紫呉がこうするのは、慊人には大事な事を遠慮して隠したり、無理して頑張ったりしてしまうところがあるからだと、はとりは察している。
「今回も問題ないが、それでも普通よりは体力も無いし、体も弱い」
「そうだねぇ」
「先月も風邪を引かせたばかりだろう、もっと気を付けてやれ」
「えー、大事にしてますよ。確かあの時も、ちょっと遠出しただけで疲れて寝込んじゃっただけでしょ、知恵熱ならぬ外出熱って?」
「慊人は紫呉と一緒にいて大丈夫なんだろうか」
「ま、気を付けますよ、いつもありがとね」
紫呉は一瞬だけ穏やかに微笑んだかと思うと、いつもの調子でウインクして去った。
はとりは紫呉に尋ねた事がある。
高校生の頃だったと思う。慊人はまだ恋愛対象にはなりそうにない年だが、もう初潮は迎えただろうし、急に大人びてきた。子供から少女になった、とでも言い表せるだろうか。
また、紫呉は今より尖ったところがあった。
「……慊人のどこが好きなんだ?」
「うっそ恋バナ? てか、僕らにとって神様なんだから好きで当然なんじゃない?」
「そういう事じゃなくて」
校舎の日陰になる渡り廊下。はとりは生徒会へ、紫呉は帰路につく所だった。
はとりにそう聞かれた理由は紫呉には分かる。普通に考えれば、紫呉の気持ちは恋でも愛でもなく、絆に憑りつかれているとか思い込みかもしれないのだ。
紫呉だって何度も自分に問い掛けてきたが、どうしても好きだという事しか分からない。
物質的に恵まれた環境で育ち、呪い以外で不自由した事が無いからかもしれないが、何かに執着する事の無い自分が、どうしても慊人だけは自分のものにしたい。
それも、他の十二支とは違って、一人の女として手に入れたいのだ。
また、慊人の様子を見ても、紫呉だけを意識しているのも間違いなかった――くれのは除いて。
慊人は子供ながらに敏感で狡賢いところがあった。
秘密を隠し、嘘をついてでも周囲を利用する。由希との関係はあまりにも身勝手で残酷だ。
それでも拗れる前を知っている分、本来の彼女は素直で純粋だと知っている。
椿を差し出すと容易く頬を染めた――あれは確かに恋だ。その顔に、自分の人生において一番の喜びを味わった。
どう言えばはとりに分かってもらえるか。
ふと視線を外すと、遠くの方で運動部が器具の用意をしていた。早く音楽室に着いた吹奏楽部員が、音出ししているのも聞こえてくる。
(情とか、手に入らない執着とかかもしれないけどね。好きなものは好きだし、好きなものは誰にも渡したくない、それだけ)
今は、分かってもらえなくても良い。
「……顔、とか?」
難しい顔で沈黙したかと思えば、事も無げにそうのたまった。
「ロリコンじゃないよ? あの両親の子なんだから、大きくなったらさぞかし美人になるんじゃない? はとり好みではないかもね。でも好みは人それぞれだし」
「俺は何も言っていない」
「まあ、あれでも昔みたいに自然に笑う事もあるし、そういうのは可愛いと思っちゃうんじゃない? はとりといる時の方が――」
はとりの優しさに応えるような、慊人の満たされた笑顔が思い浮かぶ。
「僕にはあんな顔をさせる事はやっぱり出来ないけどね」
しみじみと言う。
「慊人が紫呉にだけ見せる顔もある気がするが」
それは紫呉だけを男として意識しているからではないかと、はとりは気付きつつある。
「……えー? いじめられて泣いちゃう顔の事? いじめてないって!」
はとりはため息をついた。
(俺は手を差し出せもしないのに、紫呉のやり方に不満を持つことしかできない)
けれど二人が両思いなら、向かい合って温かな気持ちになって欲しい。絆だの当主だの、それ以前に身近な小さな女の子が、本人の望まない形で歪に変化していくのは見るに堪えない。
(紫呉と慊人の間にある気持ちを、俺は理解できないかもしれない。だが、その後押しに俺は何かしてやれないだろうか)
十二支の絆から解放された今も、はとりは純粋な良心をずっと持っている。
(透のようには出来ないが……少しでも役に立てるといい)
はとりは十分に二人を後押ししているのに、そんな風に思った。
診察室のカーテンの隙間から見えた紫呉の足取りは軽かった。
そんな日々の中、慊人に大きな縁談が舞い込んだ。
数多い話の中でも目玉と言える相手だ。
先方は既に草摩の家柄と、何より慊人の美貌を気に入っているらしい。
もちろん慊人は断るつもりだが、欲に目が眩んだ連中が、会うだけでもと言って急かしてくる。
実際、彼と縁を結べば、この先草摩家は何代も安定するだろう。
現在、急激に改革を進めていて、十二支を根拠にした格付けも解消し、こういった真っ当なやり方でやって行けば今までの体制や資産は維持出来ないかもしれない。多少縮小しても十分な資産はあるはずだが、確証はない。
楝派からは様々な声が聞こえてくる。
これまでの横暴の償いとして草摩のために身ぐらい売ったらどうなのか。改心だか何だか知らないが、気まぐれに草摩をかき混ぜる無能な当主は、せいぜいなけなしの女の価値を使え――楝には面と向かってそう言われた。
一族の規模を考えればその通りだし、言われた内容そのものよりも、楝は未だにそういう人間であるという事実に自分の無力さを感じ、その日は久々に一人で泣いてしまった。紫呉にも言えなかった。
楝など相手にしてはいけない人間だ。
それでも敬愛する晶と愛し合い、自分を生んでくれた母親である事実は変わらない。その事実がかつては憎くてたまらなかったが、今はただただ寂しい。
周りの者が言うように、絶縁して追い出してもいいぐらいどうしようもない。とは言え、楝派の人々の今後の事もある。
慊人は自分が一早く幸せになるのは皆に悪いと思っている。
結婚するのならもっと草摩家全体が落ち着いてからにしたいが、周りはそうさせてくれないし、実際、年齢も年齢だ。
「なんか超ビッグな良い話が来てるそうじゃないですか」
「え?」
仕事の合間、突然紫呉が切り出した。
唐突なのもあるが紫呉からそういう話をされた事は無かったから驚いたし、嬉しいと思ってしまった。
「あ……、うん、そうみたいだね」
「困るよねぇ~、僕って男がいるのにねぇ」
こういう時の紫呉はどういう方向に話を持って行きたいのか分からなくて、返事に本当に困る。
「何それ。正直なところ、紫呉と結婚するよりメリットが多いよね」
「えー? 僕と結婚すればプラスは無いけど草摩から財産が流出する心配はない。新しいいざこざも起きにくい。それって結構重要じゃないです?」
それは確かに重要だが、それぐらいしかない。大きな波風が立たないというのは今の草摩には重要だ。紫呉との結婚を周りに認めさせる切り札といってもいい。
「なにより世界一、いや宇宙一、誰よりも慊人さんを愛しているのは、この僕ですからね」
「綾女みたいなこと言ってる」
「あんなに宇宙人じゃないでしょ」
「その言い方。本当に仲良いの?」
「どう見たってマブダチでしょうに」
実際、慊人派にとっても楝派にとっても紫呉と結婚する利点があまりないが、草摩の運営に紫呉が良い動きをしているのは確かだと認められ始めている。
紫呉はあんな男だし、内心、人の好き嫌いはあるが、それを無暗に露わにしたり依怙贔屓したりせず、草摩の人間関係を把握しつつ合理的にでバランスの良い采配をしている。
経営や法律に関する事など分からない事は、その分野の頼れる人物を上手く探し出して、力を借りる能力にも長けていた。そういう意味では誰からも共感を得ている。
紫呉自身、自分が当主の夫となるにはまだ理由付けが弱いと理解していて、自分が草摩に有益な人間である印象を持たせるなど、結婚に良い印象を持たせる材料を揃えてくれてるのだ。
(紫呉は外堀固めてくれてるけど、結婚しようとか、決定的な事は言ってくれない……)
寂しいけれど、結婚相手も時期も、確かに慊人が自分で決めなければならない事だ。
不安になってきてしまい、紫呉の顔をじっと見た。
「どうしたの?」
紫呉は一瞬首をかしげたが、余裕そうに微笑んだ。
(不思議だな……なんで僕は紫呉の事が……)
いつ見ても、何度見ても好きだ。
「別に。続き、やらなきゃ」
「はーい」
それぞれデスクに向き直した。
慊人はいつどうするのが最善か分からず苦しくて苦しくて、でも絶対に紫呉と一緒にいたい。
(当主としてそれでいいの? ……だめだ、もっと草摩の事を考えないと。でも、何が草摩にとって最善なんだろう? こんな風に気持ちを曲げて、利益とか権力とかに走って来たのを、これからはやめたいって、僕なりに頑張ってるのに?)
そう思っても、自分が過去にしてきた事、幼い頃から今も、耳に届き続ける悪意や私欲に満ちた声。それに振り回される子供や力の弱い者達の姿が頭の中を去来する。
(……そうだった。僕は今以上の幸せを望める立場じゃない)
目の前の資料に集中しようとしても上手くいかない。
(でも僕が他の人と結婚したら紫呉の気持ちはどうなるの? 気持ち……沢山の人の気持ちを踏みにじって来た僕が、今さら何を言ってるんだろう。僕は今、何よりも当主としてすべきことをしなければならないのでは?)
「今回は……」
胸が圧迫されるような感覚に、押し出されるみたいに勝手に言葉が漏れた。
「相手が相手だから……いつもより真剣に考えてみなきゃね」
それは紫呉への駆け引きでもなく、本当にそう思って出た声だった。
「あっ、いや、受ける事はないと思うけどっ」
口に出したら正気になったみたいに慌てて付け加えた。
黒い気持ちに引き込まれそうになった。当主として今回の見合い相手と結婚するのは最善の道だが、草摩慊人という一人の人間である事を大切にして、紫呉と結婚したい気持ちは強く持ち変わらないはずなのだ。
はとりの励ましを思い出して頑張ろうとするが、自信が無い。
紫呉は慊人の様子を見て、何かあったのか追い詰められてると感じ取った。慊人は絶対に断ると信じてるけれど、万が一にも縁談が進んだらと思うと我慢ならない。
「な、なんでもないよ。何? 焦った?」
ぷいと視線を資料に戻す。
生意気だけど可愛らしくて、揺らぎやすくて強くないのに気丈にしていて、そんな健気さに紫呉も折れてやることにした。
立ち上がって慊人のデスクの横に立ち、慊人の手の横に手をついた。
「そのお見合い、断って」
「え?」
予想もしなかった言葉に驚いて、紫呉を振り返って見上げた。
初めて紫呉に頼まれた。
紫呉はまっすぐに真摯な目で慊人を見つめた。
慊人に選択を委ねるような言い方じゃない。
「僕のところに、来て」
ほんの数秒前まであんなに悩んでいたのに、紫呉の言葉でいとも簡単に吹っ切れた。
「うん……」
何度も言って欲しいと思っていた。
「嬉しい」
「おっ、素直ですねえ」
立ち上がって、そっと紫呉に抱き着いた。
紫呉は格別優しく抱きしめて、あやすように背中を撫でた。
(もう泣かない。辛くても、強くなりたい)
紫呉は知ってか知らずか、こう言った。
「嬉しい時なら、泣いても良いんじゃない?」
「……泣かない。あれ……?」
静かに涙が溢れた。紫呉に見えないように俯いた。
(いいのかな…いいよね…?)
誰が許すとか、そういう問題ではない事はもう慊人は分かっているのに、胸の中で問うた。
紫呉は、今まで彼なりの優しさであえて直接は何もしてやれなかったが、喜んでくれた慊人を見ると、素直に嬉しい。
本当は、彼女の望む言葉を、いつでも望むだけ与えて甘やかしてやれたら、毎日どんなに幸せだろうかと思い描いているのに、いつだってこんな捻くれたやり方になってしまう。
「あんまりこう言うのもキャラに合わないんですけどねぇ、もっと僕にわがまま言って頼って良いんですよ」
「……わがままなら、昨日も好きなおやつ譲ってもらったし、肩揉ませたし」
「そういうのじゃなくて、心当たり、沢山あるでしょ?」
慊人は知らないふりして素っ気なく紫呉を突き放して目を逸らした。
「わ、紫呉の胸に涙の跡ついちゃった」
「えー」
慊人は大して悪いとも思っていないように、乱雑にシャツの涙の跡をこすると、背伸びをして紫呉の顔に近づいた。
「……ありがとう」
そっと唇にキスをした。
沢山不安にさせてきたから、いつかきっと椿を贈った時の様に、彼女に愛を告げて、安心させてやりたいと思っていた。
それでもあと一歩、彼女の方から歩み寄って欲しくて待っていた。
これは遅すぎたのかもしれないが、きっと間違いではない。
呆れるほど巧妙で様々な妨害を、何とか搔い潜り、縁談断ることが出来た。
理由づけは非常に苦心した。
先方の家にも多大な迷惑(取らぬ狸のとは言うが、何代にも渡る損害と言える)を掛けたし、純粋に慊人に好意を寄せていた見合い相手は非常にがっかりしたそうだ。
目まぐるしく過ごす内、あっと言う間に椿の季節になっていた。
型式に拘る必要ないと思いつつ、大きな縁を見送ったのだから、慊人がきちんと結婚しないと示しがつかないと思う。
「今年も綺麗に咲いてますね」
濃紅の椿が、見事に咲き誇っている。
慊人の頭の中は、今日も雑多な問題や複雑な感情でいっぱいだった。
「うん……」
土曜日の朝だ――休日はしっかり頭を休めなければ。
そう思うと、今度はリラックスできていない自分に焦りを感じてきてしまう。
今日も縁側に二人、並んで腰掛けている。どこか上の空な慊人に、紫呉は言葉を続けなかった。
昨日の雨で地面は軽く湿っている。大気中の塵が洗い流され、一層青く綺麗な冬晴れの空に対し、湿った土の匂いが生々しい。けれどそれも爽やかな風が連れ去っていく。
遠くの方から届く甘い香りはどの花のものだろうか。
時折、紫呉の匂いも薄く漂ってくる。石鹸だって、香水だって、その時々に違うのだが、なんとなく紫呉の匂いと分かるものがある。
(このまま――)
この混ざり合う世界に、このままとけて消えてしまいたいと思った。
こんなに素晴らしい季節の、こんなに素晴らしい朝に後ろ向きになっている自分の事を、情けなく思った。
透の様な、陽だまりのように明るく温かい人間だったら良かったのに。あんな風に優しく皆を包み込む子が当主だったら、どんなに素敵な家に出来ただろうか。
けれどそれが無い物ねだりである事も、慊人には慊人のやり方がある事も、もう知っているつもりだ。
(もっともっと、シンプルに考えなきゃ、僕に出来る事……)
透に、十二支に、関わる者皆に酷く当たり、紫呉と不仲だった時も、ずっとこうして二人で過ごす時間を持ち続けてきた。
目の前で、ぽとりと一つ、椿の花が落ちた。
「僕らにとって愛の思い出の花でも、縁起が悪い印象もある花ですからねぇ」
紫呉が茶化すように言った。
「紫呉、平和な時代に生まれて良かったね。大昔なら、紫呉なら首を落とされるような事件起こしそうじゃない」
「どんな罪人なんですか。あ、それとも命懸けで世の中を変えようとするカッコいい武士?」
「紫呉が自分で刀を持って戦う事なんて無い」
「え、断言します?」
意味も無い会話の中、慊人はどんな時代にどんな関係で出会っても、自分は紫呉に恋してしまうのかもしれないな――そんな事を思った。
ちらりと紫呉を見たら、目が合ってしまった。
「あ……」
突然の事だった。
「どうしたの?」
「……ずっと、」
少しの間、静かに紫呉と見つめ合い、口を開いた。
「ずっと、いつがいいか考えて悩んできたけど、今みたい」
「え?」
紫呉から言って欲しかったけど、きっと紫呉は――慊人は立ち上がって、あの赤い椿の木の方へ向かった。
(理屈では何とかなる。体裁だって整える事は可能だ)
誰にどう思われても、草摩を正していく覚悟と、紫呉が好きだという気持ちがあれば大丈夫。好きだという確信、自分の気持ちを大切にする、過去を忘れないで償っていく覚悟。
「ねえ、紫呉、お願い」
一輪の椿の枝を両手で丁寧に折る。振り返って紫呉の前へ歩いていく。
紫呉は不思議そうに慊人を見つめたが、目の前に立ち止まった慊人にいつも通り柔らかい表情をした。
「なんですか?」
紫呉に椿を差し出した。
「僕は、紫呉みたいに上手く言えないけど……」
何故だか不安も緊張も無い。
「紫呉、僕と結婚して」
紫呉も特段驚く素振りもなく椿を受け取ると、心から微笑んだ。
「良いですよ」
「―—いいの?」
「断られるなんて思ってないでしょ?」
「えっと…そうだけど…あれ?」
自然と涙が溢れてしまった。紫呉は立ち上がると慊人の肩をそっと抱き寄せた――あの椿を贈った時のように。
<紫呉は僕のこと好き?>
そう尋ねたあの時、幼心に緊張したのを思い出した。
今慊人が紫呉に聞きたい事は無い。その代わりに。
「紫呉、僕は紫呉が好きだよ」
「僕も――慊人さんが好きですよ」
少しの不安も無く抱き合う。
温かくて、穏やかな鼓動が聞こえる。ほんとうに愛おしい。
自分の人生はこれからだ、自分次第なのだと――義務や使命ではなく、純粋な目標のようにそう思った。
少し間を置いて紫呉が言った。
「なんで慊人さんから言っちゃうかなぁ?」
慊人が紫呉から体を離して見上げると、声はいつもの調子だったのに珍しく少し頬を赤くして目を逸らされた。
「照れてるの?」
「え、どこがですか?」
慊人は、ふう、とひとつため息をついた。
「紫呉が僕に言わせようとしたんじゃない」
「バレてました?って、そんな事ないですって、そろそろって僕も思ってたんですよ?」
「……いいよ、紫呉はもうずっと昔に、言ってくれたようなものだったんだから」
慊人は椿を持っている紫呉の手にそっと自分の手を重ねた。
(きっと紫呉は待っててくれたんだよね? 僕が、ただ紫呉と一緒になりたいと思える時まで)
その椿はやっぱり今年も可愛らしい赤。
「僕から言ったのは悔しいけど、紫呉が照れるところが見れちゃったんだから、ちょっと嬉しいかな」
「まったく君は……」
紫呉が慊人の顔を覗き込むと、彼女の方こそ照れた様子で、にこっと小さく微笑んだ。
身の回りが落ち着いた頃を見計らい、慊人は一族に結婚を宣言した。
それと同時に髪を切った。
理由を聞いた紫呉に、慊人は気分転換だよと答えたが、きっと彼女は何かを見つけたのだと、風に小さく揺れる柔らかい毛先を愛おしく見守った。
紫呉にしかそのタイミングの良さは分からないが、ちょうど木蓮の花が咲く季節の事だった。
了