月下の酔客 煌帝国首都・洛昌、禁城内の一画でアラジンは少し途方に暮れていた。先程まで一人で飲んでいたはずなのだが、隣に酔っ払いが来たのだ。ほんとにどうしようもないタイプの酔っ払いが。
「ちょっと!!!白龍くんにお酒飲ませたのは誰だい??!!」
アラジンの叫びは、悲しいことに月明かりで照らされた広く美しい庭へ吸い込まれて消えていった。練白龍は酔っ払うととんでもない絡み酒になる。最近はモルジアナが彼の飲酒を見張ってくれていたのだが、今日はどこか監視が届かないところで飲んできたらしい。
「アラジン殿ぉぉ聞いてます〜〜〜?」
「な、なんだい?」
「……恋バナをしましょう」
「へっ」
「こいばなですよぉぉぉぉ」
こいばな、コイバナ? 話題を振った当の酔っ払いは、ふにゃふにゃと卓に突っ伏していて表情が見えない。青みがかった黒髪が月の光を受けて輝く。
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