たぶんのサクラかそれか何かの 幸村部長が倒れたとき俺もそこにいた。救急車で運ばれていくのも見た。なんていう病気か柳生先輩が説明してくれたのもちゃんと聞いてた。家帰ってからナンタラカンタラってその名前、自分でも検索したし。でも結局何が何だかよくわかんなかったけど。
部長のことだから、入院とか言ったって、来週あたりけろっとした顔でコートに戻ってくるんじゃねえのかなって、そんでやっぱ強いまんまで、誰も勝てないって、思ってたんだよな。あのときはさ。
自動ドアの向こう側に踏み込んだら靴が床とこすれてキュッという。ヤな音。慣れたけど、できれば慣れたくなんかなかった。
案内行って、紙に名前書き込んで、面会用のカードは入院病棟行きのエレベーターの中で首にかけた。病院ってどこも息がしづらい。デカいとこはなおさら。母ちゃんとか姉ちゃんは俺がちょっと咳するだけでさっさと病院行けってうるせえけど、誰が好きで行くかっての。
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