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    icic252525

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    ビリグレが待ち合わせデートをするお話
    めちゃめちゃ途中、すっっっごく途中

    #

    僕が朝起きた時にはもうすでにビリーくんはいなかった。
    いつも目覚めとともに耳朶に触れる「グッモーニン、グレイ♪」って声も、眩しい快晴の色をした瞳も見当たらない。
    朝の一場面が欠けるだけで何か物足りないなと思うくらい、ビリーくんは僕の日常に溶け込んでいる。

    ビリーくんのおはようが聞けなくて寂しいはずの朝、それでも僕の頬は恥ずかしいくらいに緩んでいたと思う。
    今日をずっと楽しみにしていた。だって、ビリーくんとちょっと特別なデートをするから。



    「ねぇねぇグレイ、今度のお休み、何か予定あったりする?」

    楽しいことを思いついたと言わんばかりに輝く双眸をこちらに向けられると、いつだって僕までワクワクした気持ちになる。
    特に予定はないと伝えると「じゃあデートしよう♪」と誘ってくれた。もちろん二つ返事で了承の意を伝えたが、ビリーくんの提案はこれで終わらなかった。

    「ボクちんに考えがありマス♪」

    人差し指を頬の横で立てながらちょっと得意気な表情をするビリーくんは可愛い。

    「あのさ、待ち合わせ、してみナイ??」

    「待ち合わせ…??」

    「Yes!待ち合わせ♪オイラたち、ハッピーなことに同室だから、お出かけするときいつも一緒にこの部屋を出るデショ??だから所謂待ち合わせってしたことナイな〜って思って!」

    「確かにそうだね、待ち合わせかぁ…!」

    「ウン!いつもと違っていいと思わない??」

    「うん…!待ち合わせ、しようビリーくん!」



    こんなやり取りを経て、いつもと違うちょっと特別なデートの約束をした日から、僕はずっと今日を楽しみにしていた。

    (ふふふ、ビリーくんと待ち合わせ…♪)

    いつもより準備に気合いが入る。この準備がまた楽しかった。何を着ようかな、なんてジェットには「女々しいこと言いやがって」とかって言われそうだけど、外へ出掛けるためにする準備が楽しいなんて初めてで、そうやって思えることがとても嬉しい。

    今日のデートはビリーくんプロデュースで(だいたいいつもそうなんだけど…)、僕はまだどこへ行くのか知らない。それがまた僕のワクワクを一層駆り立てた。だって、ビリーくんが連れていってくれるところはどこだってすごく楽しいに決まっているから。

    浮き足立つ気持ちを一生懸命抑えながら時計を確認する。

    (少し早いけどもう出ようかな…)

    待ち合わせ場所はセントラルステーションだから、タワーからそんなに離れていない。でもビリーくんは朝からいなかったし、もしかしたらもう待ってるかも。何よりこのまま部屋にいてもそわそわと落ち着かないだけだ。

    もう一度持ち物を確認し、「よし…!」と独りごちた気合いを入れる。この楽しい気持ちに横槍を入れられたくなくて、アッシュに出くわさないように細心の注意をはらいながら僕はタワーを出発した。



    (う、うわぁ…、人多い…!)

    セントラルステーションは人で溢れていた。
    ビリーくんを探して辺りを見回してみるけど、あまりに人が多くて見つけられる気がしない。

    (ど、どどど、どうしよう…)

    急に不安になってきて、おろおろと挙動不審になってしまう。道行く人と肩がぶつかって、さっきから謝ってばっかりだ。このままビリーくんに会えなかったらどうしよう、せっかくのデートなのに…。

    ~♪

    スマホがメッセージを受信したことを伝える。

    (あ、そうだ…スマホがあるんだった…)

    いつも使っているスマホの存在を忘れるくらい慌てていたらしい心を落ち着かせようと、深呼吸をしてからメッセージを確認すると大好きな待ち人からだった。

    『グレイ発見〜♪』

    ほんの数秒前まで心許なさでいっぱいだった胸中がふわっと暖かくなるのを感じる。
    もう一度辺りを見回してみると、先程と人の多さは変わらない。
    けれど、この人混みの中に本当にビリーくんがいるんだと思ったらドキドキとした高揚感が足下から駆け上がってきた。

    (早く会いたい…!)

    逸る気持ちで目を凝らす。
    雑踏はもう気にならなかった。
    人だらけでどこを歩いても肩をぶつけていたのに、自然と辿るべき道が見えているようにすら思えた。

    (あっ…!)

    見間違うはずのないオレンジがぴょんぴょん飛び跳ねて僕に向かって手を振ってる。
    会いたくて仕方のなかった人がそこにいた。

    「ビ、ビリーくん!!」

    自分でも驚くくらいの声が出て少し恥ずかしい。
    でも今は周りの目など他愛ないと思えるくらい、とにかくビリーくんのもとに駆け寄りたかった。

    「グレーイ♪」

    ビリーくんも声を張る。

    ドキドキした。
    全身が脈打ってる。
    会いたくて堪らない人が目の前にいるって、こんなに幸せなことだったんだ。

    沢山いたはずの人が何となくぼやける。にこにこ笑いながらこちらに手を振るビリーくんしか見えなくなって、早く早くって気が急いでしまう。

    もう少し、もう少しで大好きなあの温もりを感じられるんだ。

    「ハロー、グレイ♪」

    「ビ、ビリーくん…!やっと会えた…あ、あの、もしかして結構待ったりした…?」

    「ううん!全然待ってないヨ!それよりグレイ、沢山ぶつかってたみたいだけど大丈夫だった?痛いとこなーい?」

    ビリーくんの右手がするりと僕の頬を撫でる。
    見られてたんだ、とか、こんなに人がいるのに、とか恥ずかしい理由はたくさんあったけど、何よりもゴーグルの奥に光る僕の大好きな紺碧にドキッとしてしまう。

    「び、ビリーくん?ひ、人がいっぱいだから…!あと、沢山ぶつかっちゃったのは僕がどんくさかったからで…」

    「NoNo!逆にこんないっぱい人がいれば、誰もオイラたちのことなんて気にしてないヨ!それに、グレイはどんくさくナイ!オイラもあちこちでぶつかったし、こんだけ人がいればしょうがないって!」

    「うぅ…、そうかな…?ありがとうビリーくん。」

    「んふふ♪」と楽しそうに笑うビリーくんが頬を撫でてた右手を降ろした先は僕の左手。

    「それじゃあ、行こっか♪グレイ!」

    甘く蕩ける幸せな響きだった。

    不安に思った瞬間もあったけど、待ち合わせって、それを約束できる人がいることって、幸福なことだ。
    何よりも僕の知らない素敵なことをたくさん教えてくれるビリーくんの隣をこうやって歩けるとこが、僕にとって最高に幸せだと思わずにはいられない。

    「グレイ、何ニヤニヤしてるノ?」

    「ひぇっ?!え、僕、そんなニヤニヤしてた…?」

    「ウン!すごーく嬉しそうな顔してた♪何考えてたの?ボクちんにも教えて♡」

    「……え、えっと、待ち合わせ…できる人がいることって、しかもその相手が大好きなビリーくんだなんて、すごく幸せな事だな、って…。」

    「…」

    「って、うわあああ!ご、ごめんねビリーくんっ!こ、こんな、き、気持ち悪いよね?!」

    思わず本音を零した僕にちょっとうつむいて黙るビリーくん。
    いきなりこんなこと言われて不快な気持ちにさせてたらどうしようと慌てて謝っていると、輝くオレンジの隙間から真っ赤に染まった耳が見えた。

    「び、ビリーくん…?大丈夫…??」

    いつもと様子の違うビリーくんが気になって、もしかして人酔いしちゃったのかな、とか体調悪いかな、とかいろんな考えがドッと押し寄せてくる。
    そっと顔を覗くとゴーグルをしてても分かるくらい、ビリーくんの顔は真っ赤だった。
    心配になってまた声を掛けようとすると、ビリー君がパッと顔を上げそのまま両手で僕の目を隠してきた。途端に目の前が暗くなり何も見えなったことに驚いて「えっ、な、なに?どうしたのビリーくん?!」と慌ててしまう。

    「グレイ、今はオイラの方見ないで!」

    ビリーくんから発せられた言葉に更に慌ててしまう。せっかくのデートなのに僕のせいで…と思い咄嗟に謝罪を口にしようとすると被せ気味にビリーくんがまた口を開いた。

    「ちがうよグレイ!謝らないで!オイラ怒ってるわけじゃなくて、照れてるの!」

    「て、照れ…?な、なんで…」

    「もー!グレイは本当に天然タラシだよね!お願いだからタラすのはオイラだけにしてよネ!」

    「たら…?え、何…??」

    「何でもないデス!」

    ピシャリと言い放つビリーくんの声色に楽しさが滲んでいて、本当に怒ってるわけじゃないんだなと思ってホッとする。

    ビリーくんの手が僕から離れ、視界に光が戻ってくる。

    「さ、グレイ!今度こそ行こ♪」

    そう言って差し出された手を僕が迷わず握るとしっかり握り返してくれる温もりが愛おしい。

    「う、うん…!行こうビリーくん!」


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


    待ち合わせを提案したのはほんの思いつきだった。
    その日は情報屋の仕事が予定より早く終わったから、ちょっと寄り道をしてお気に入りのキャンディショップにでも寄ろうかなんて考えながら帰路に着いた。
    何の気なしに周りを見渡すといろんな情報が目に飛び込んでくる。人間観察はもう癖みたいなもので、意識せずとも雑踏を行く人々を注視してしまう。
    道行く人たちの服装はもちろん、表情やその足取りまでが様々で面白い。その一人一人の背景に思わず好奇心を擽られてしまうのもまた、オイラの悪い癖なのかも。

    「え、どこだろう見えないよー!」

    ふと聞こえてきた声にぴくりと反応する。
    たくさん聞こえてくる声や音の中で、一等楽しそうに響いたその声を辿るとスマホで電話しながら誰かを探している素振りをする女の人がいた。
    声同様に表情もすごくキラキラしてて、これから落ち合うであろう相手が彼女にとって大切な人なのだろうと安易に想像できる。

    「もう1回!もう1回ジャンプしてみて…あっ!いた!ふふ、今そっち行くね!」

    どうやらお相手が見つかったらしく、彼女の視線の先を追ってみたけど、オイラではその人混みから彼女の待ち人を見つけることは出来なかった。

    彼女には見えてるのだろうか。
    その視線の先に自身にとっての大切な人を捕えているから、彼女の足取りはあんなにも軽いのだろうか。

    うずうずと、たまらない気持ちになる。
    あれをグレイとやりたいって衝動が身体中を駆け巡ると、もういてもたってもいられなかった。

    キャンディーショップに寄るのはまた今度にして、待ち合わせデートに誘うべくグレイの待つあの部屋へ急くままに向かうオイラの足音は、きっとその場のどんな音よりワクワクした音色だった自信がある。



    いつもより大分早起きをした。
    グレイのベッドに目をやるとこんもりとした膨らみが一定のリズムで小さく上下している。
    思わずくすりと笑みがこぼれた。

    絶対にグレイを起こさないように、コソコソと着替える。ほとんどの準備は昨日のうちにしておいた。着替えたら部屋を出て顔を洗って歯を磨いて…ウン、バッチリ予定通り!

    荷物を持って静かに部屋を出る瞬間、ちら、とグレイの方を見やると先程と全く状況が変わらず、ぐっすり眠り込んでいる。

    ウン、予定通り♪と独りごち、部屋を出た。

    待ち合わせの時間までまだ時間はたっぷりある。
    情報屋の仕事を1つ2つ片付けるくらいの時間はあるが、なんとなく今は仕事で時間を潰すのがもったいないように感じた。
    だって、すごくワクワクしている。今隣にグレイはいないけど、約束の時間に現れたグレイのふわふわした髪や、きっとちょっと焦って上気してるであろう頬も、想像するだけでこんなにも愛おしい。
    この時間を大切にしたいと心からそう思った。

    (会わない時間が愛を育てるってホントだったんだネ…♪)

    会わない時間と言ってもほんの数時間ほどで大したことないのだけれど、それでもオイラ達にとってはすごく貴重な時間だと思う。グレイも同じことを思ってくれてるといいな…。

    とりあえず朝から営業しているカフェに入り、軽くモーニングをとりながら今日のデートプランに思いを馳せる。

    待ち合わせの時間はちょうどお昼時だから、グレイがお腹を空かせていたらまずはカップケーキを食べに行こう。ディナーはコースを予約しているからランチは軽くがちょうどいいカモ…?あとは目に付いた美味しそうなものを食べ歩きしながらっていうのも楽しそう!グレイはきっと何を食べても美味しいねって頬を緩ませる。
    少しお腹を満たしたら今日のメインは水族館の予定で、チケットももう用意してある。暑すぎないとはいえずっと外で過ごすにはちょっとしんどい気温だし、薄暗くて静かな空間をグレイはきっと気に入ってくれる。オイラも水族館なんて久しぶりだからとっても楽しみ!んふふ…早くグレイに会いたいナ〜!

    なんて、あれやこれやすぐそこ未来の妄想に耽っていると、あっとゆう間に時間が過ぎた。
    とっくに氷が溶けて少し温くなった甘いカフェオレを一気に流し込む。
    待ち合わせの時間にはまだ早いけどそろそろ向かおうかな、きっとグレイも少し早く来るだろうし…。

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