百鬼夜行のあとで 綺麗な手をしている人だった。
思い返せばその名の通り、彼との思い出は暑い季節のものが多い。
沖縄も、あの鮮烈な出来事も、ひどく暑い最中でのことだった。知り合ってから二度目の秋がくる頃にはいなくなってしまったので、私が思い出すのは僅か一年と少し、その先のことは噂でしか知り得ない。なのに、今でも彼は私の中で強烈な印象を残している。
一緒に任務に赴いた帰り道、よくアイスを奢ってくれた。ソーダやオレンジの、冷たく甘い汁の滴るそれを持つ、美しい指先。五条さんの見るからに長く骨張った荒々しい手と違い、それは繊細でしなやかで、誰に対しても柔らかな所作をしていた。
その手で、たまに私の髪や頬を撫で、一方で黒く禍々しい呪霊の玉を呑み込むのだ。一種淫靡ともいえる手つきで。
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