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    黄金⭐︎まくわうり

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    POIPOI 42

    History4 永幸CP
    台湾ワンドロ お題・誤解

    誤解 集中力切れた、と思わず呟くと、手に持っていたペンを机へ放り投げる。もう何時間机に向かっていただろうか。論文の提出期限まで後数日。あともう一歩と言う所で煮詰まってしまった。ヨンジエはぐったりと机に突っ伏す。そして暫くしてゆっくりと立ち上がると、ドアへ向かう。
     ヨンジエには、ヨンジエ流のストレス発散方法があった。それは間違い無く、ヨンジエのみ有効な方法だろう。ぼうっとした頭で自室を出ると、そのままシンスーの部屋へ入っていく。今は平日の昼間、シンスーや両親は仕事に行っていて家にはヨンジエ一人だ。シンスーの部屋へ入ったヨンジエは、ベッドに脱ぎ捨ててあるシンスーの寝衣をおもむろに掴むと、そのまま顔を埋め、思い切り息を吸う。身体中に広がるシンスーの香り。まるで麻薬のような感覚に、ついうっとりとしてしまう。ヨンジエのストレス発散法と言うのは、シンスーの香りを嗅ぐ、と言う事だった。ヨンジエにとって、シンスーの香り程リラックスできるものはない。彼の香りを嗅ぐたび、彼を身近に感じられる。それが何よりの精神安定剤だ。とは言え、家族の前ではこんなことは出来ないので、誰も人がいない時限定である。ヨンジエはベッドに腰掛けると、シンスーの寝衣を抱き締める。癒される気持ちと共に、少しの寂しさも感じてしまう。シンスーが帰宅するまで後四時間。早くシンスーに会いたい。そして、両親に隠れて少しだけ抱き締めよう。論文作成でストレスを抱えているヨンジエだ、少し抱き締めるぐらいは許されるだろう。
     暫くの間、思う存分にシンスーの香りを堪能したヨンジエは、寝衣から顔を上げると、元あったように寝衣をベッドへ戻す。そして、そろそろ再開するか、と立ち上がった瞬間、シンスーの机のブックスタンドから、ちらりとはみ出している冊子の様なものが目に入った。取り立てて目立ったものでもない。特に興味がある訳でもなかったが、何となく目に入ってしまったからか、何も考えずに引き抜いてみた。もしかしたら、シンスーの欲しい物のカタログかも知れない。そうであれば、彼へのプレゼントのリサーチにもなるだろう。そんな事を思いながら、その冊子を手に取ってみる。
     ぱらりと中を見た瞬間、ヨンジエは鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。衣服? とも言えないような薄い布を纏った筋肉質な男性モデル。まるで隠す気のない布の数々と、ほぼ裸体が紙面を埋め尽くす。そしてどう使うかも全く予想だに出来ない小道具? の様なもの。中には医療器具と見紛うものもある。シンスーは医療従事者だったっけ? と錯乱した頭で一瞬考えるが、違う違う、と頭を振る。そして、そのカタログを元あった場所にそっと戻すと、思わず頭を抱えた。
     カタログの中身は、所謂ゲイ向けのアダルトグッズであった。ヨンジエとて、この様なものが存在していることは知っている。ただ、こんなにはっきりと現物の写真を見たのは初めてだ。ヨンジエは混乱する思考を何とか鎮めようと、数回深呼吸をした。そして今見た事を冷静に考えてみる。
     シンスーの部屋に、アダルトグッズのカタログがあった。しかも、割とハード目なやつだ。シンスーの部屋にあると言う事は、彼が何処かで手に入れてきたものであって、わざわざカタログを手に入れたと言う事は、何かしら購入意思があるからだろう。そしてそれを購入する……と言う事は、自分との営みに使用する……? そこまで考えて、ヨンジエはハッとした。もしかしてシンスーは、自分との営みに満足していないのではないだろうか。確かに、自分はシンスーが初めての相手だ。色々調べてヨンジエが出来る最大の努力はしているが、その道に於いてもシンスーは先輩である。こんな事を考えると嫉妬で暴れそうになるが、あんなエッチな体をしているシンスーだ、数々の床上手と関係があってもおかしくはない。またもや八年と言う壁が立ち塞がるのか、とヨンジエはその場に崩れ落ちそうになるが、なんとか踏ん張って立ち上がる。もしかしたら、これは神からの啓示なのかも知れない。確かに、その様なグッズを使うなんて、何かの切っ掛けがないと思いもつかない。シンスーは優しいから、自分との営みに例え満足していなかったとしても、シンスーからは言ってこないだろう。もしかしたら、徐々に、ヨンジエを傷付けないように、シンスーの好みの小道具を投入して行く算段だったのかも知れない。自分の拙い技術のせいで、シンスーに気を使わせてしまっていたのか。
     ヨンジエはもう一度カタログを手に取ると、スマホで写真を撮る。そして全ページ撮り終えると、意を決した様に、シンスーの部屋を後にした。

     色々調べて、分かったことがある。アダルトグッズというものは、タチにもネコにも使用される物があると言う事だ。当初、シンスー自身が装着して、彼が楽しむ為のものだと思っていたが、そうではないらしい。
     益々分からなくなってきたぞ、と大量に買い込んだアダルトグッズに囲まれながら、ヨンジエは独りごちる。果たしてシンスーはどう言ったものを好んでいるのか。ヨンジエに付けさせたいのか、シンスーが付ける方なのか。
     ヨンジエは全く下着の機能を果たしていない布を手に取り、目の前に掲げてみる。シンスーの好みが分からない為、取り敢えず手当たり次第買ってみて、買った物の機能・使用法などは一旦把握した。今掲げている下着な様な物も履くとどうなるかは分かっている。ただ、これをシンスーが履きたいのか、はたまたヨンジエに履かせたいのか。ヨンジエは力なく腕を下ろし、軽く目を瞑った。シンスーが履くのは百歩譲って良しとしよう。そういう性癖の人もいるからだ。しかし、もしヨンジエに履かせたいとなると話は変わってくる。ヨンジエ自身そう言う趣味はないし、履いたとて自らのテンションは何ら上がらない。とは言え、自分が履いた事でシンスーのテンションが上がるのならいいか……とも思う。ヨンジエは下着の様なものを放り投げ、側にあったゴム製の拘束具? の様なものを拾い上げた。シンスーの為なら、ある程度のお願いは聞くつもりではあるが、もし、この拘束具を使うような……調教? のような事がしたいと言われたらどうしよう。ヨンジエは自分がこのゴム製のものを身につけている姿を想像し、身震いをした。いやしかし、愛するシンスーの為だ、これぐらい耐えられなくてどうする。考えようによっては、シンスー好みに調教? される訳だから、それはそれで良いのかもしれない。それで益々シンスーが自分から離れられなくなるのだったら願ったり叶ったりである。自分にはこの先もシンスー唯一人なのだから。

     ヨンジエとシンスーには、家族に言えない秘密がある。それは、月に一回だけシティホテルに泊まる、と言う事だ。自宅では触れ合い禁止と言う両親の気持ちも分かるが、恋人になったばかりの若い二人だ。当然互いに熱を持て余す訳で、もう我慢できない、とシンスーが提案してきたのだ。勿論ヨンジエは大賛成である。きっとシンスーよりヨンジエの方が辛かったに違いない。嬉しすぎて、初めて泊まった日の記憶が曖昧になってしまったぐらいだ。その月一のお泊まり会が今日である。
     ヨンジエは大量のグッズをスーツケースに押し込むと、友達の所に行ってくる、と家を出た。シンスーとは家を出る時間をずらし、いつものホテルで待ち合わせをしている。片腕にかかるスーツケースの重みが、そのままプレッシャーとしてのしかかる。今日はどのタイミングでこれを出そうか。シンスーの好みがどんなものかは未だ分からないが、ちゃんと彼の希望を叶えるべく色々な覚悟もしてきた。ヨンジエはグッと拳を握ると、ホテルのロビーに足を踏み入れた。そして、先に来ているであろうシンスーの姿を探す。ロビーのソファから、手を振る姿が見えた。シンスーだ。シンスーはソファから立ち上がるとヨンジエに歩み寄り、ヨンジエの大量の荷物に気付くなり目を丸くした。
    「ヨンジエ、そのスーツケースどうしたの?」
     確かに一泊なのにこの荷物はおかしいだろう。しかし、この中にはシンスーが喜ぶものが入ってるなんて言うこともできず、ヨンジエはただ、部屋に着いてから、とだけ言った。シンスーは不思議そうに微笑むと、うん、と言ってヨンジエの手を繋ぐと、フロントに向かった。
     いつものパターンだと、ホテルのレストランで食事、高層階のラウンジで少し酒を飲んで部屋に移動、と言うのが鉄板である。今回も例に漏れず同じコースだ。食事と共に飲んでいた酒がいい具合にまわり、薄暗いラウンジでグラスを合わせる音が、今宵はなんだか色っぽい。カクテルグラスに付けたシンスーの唇が照明の光で艶めく。軽く瞼を下げた憂いを帯びた表情が、さらに妖艶な色気を醸す。酒を飲んで柔らかな雰囲気になったシンスーは本当に色っぽい。思わず見惚れてしまったヨンジエは、シンスーと目が合うと、思わず視線を外してしまった。そんなヨンジエに、ふふ、と笑うと、ヨンジエの指に己が指を絡ませる。
    「一ヶ月、すごく待ち遠しかった……君は?」
     囁く様な少し熱の籠った声だけでヨンジエの鼓動が速くなる。早く、この美しい人を抱きたい。彼の全てに口づけして、彼の一番深い所に熱を伝えたい。ヨンジエは、俺も、とだけ言うとシンスーの頬に指を這わせた。いけない、今日は自分だけじゃなく、ずっと物足りなかったであろうシンスーを満足させるのだ。シンスーは少し困った様に笑うと、ヨンジエに顔を寄せた。
    「早く……君に触れて欲しい」
     ヨンジエは立ち上がるとシンスーの手を引き、ラウンジを出た。こんなに煽られては理性も吹っ飛ぶと言うものだ。煩いほどに高鳴る鼓動を抑え、部屋のドアを開ける。そしてシンスーをベッドに押し倒すと、そのまま馬乗りになり、噛み付くように首筋に唇を当てた。ああ、と声とも吐息ともつかない声が、またヨンジエの劣情を掻き立てる。もっとこの声が聞きたい。シャツの上からでもはっきりとわかる胸の膨らみを鷲掴みにすると、更に甲高い声が響いた。もっと、とせがまれれば、彼の敏感な所を責め立てようとシャツの中に手を入れた瞬間、ヨンジエは当初の目的を思い出し手を止めた。何で止めたのかと訴えるような目で見つめるシンスーにキスをすると、横に置いてあったスーツケースを手繰り寄せ、おもむろに開くと中身を一気にベッドの上にぶちまけた。
    「シンスー、どれがいい? お、俺はどれでも大丈夫だから!」
     色とりどりのグッズに囲まれたシンスーがあっけに取られたように周りを見渡す。そして医療器具の様なものとヨンジエを交互に見つめた。
    「ヨンジエは……使いたいの?」
     きっと、ヨンジエの承諾を得る為の問いだろう。ヨンジエは必死にコクコクと頷いた。もう覚悟はできている。調教でもなんでも来い、と言う心境だ。シンスーは少し恥ずかしそうに周りのグッズ達を手に取る。
    「結構ハード目なのばっかりだね……僕あんまりこう言うの使った事ないけど、ヨンジエが使いたいって言うんなら……」
     そう言って両手のひらで覆った頬が赤い。そこでヨンジエは何か違和感を感じた。そもそもこのグッズ達はシンスーが使いたかったのではないのか? 自分が使いたかった物に何故恥ずかしがっている? と言うかちょっと待て、あんまり使った事がない……?
    「シンスー……こう言うの使いたかったんじゃないの?」
    「……僕はおもちゃとかはあんまり……」
    「え?」
    「え?」
     互いに話が噛み合っていないらしく、アダルトグッズに囲まれて真顔で見つめ合うという物凄い絵面が広がる。暫くの沈黙の後、えっと、とヨンジエが口を開いた。
    「あ、あなたの部屋でカタログを見つけたんだ、こういうやつの。カタログを取り寄せるぐらいだから、ほんとは俺とのセックスでも使いたいのかな……って」
     ヨンジエの言葉で察したのか、シンスーがくすくすと笑い始めた。そして、それは誤解だよ、と涙目で言う。
    「あれはね、僕の友達がアダルトグッズメーカーで働いててさ、無理やり送り付けてきたんだよ、新製品のカタログだって言って」
     僕は興味ないのにね、とまだ笑いが収まらない様な声で言う。そこまで聞いて、ヨンジエは今すぐ穴があったら入りたい、と心底思った。顔から火が出るとはこの事か。ヨンジエは思わずベッドに突っ伏した。全ては自分の誤解だったのだ。グッズをベッドにぶちまけた時、シンスーはさぞかし驚いたに違いない。余りにも恥ずかし過ぎて顔が上げられない。そんなヨンジエの様子を察してか、シンスーが、顔上げて、と耳元で囁く。ヨンジエは渋々体を起こす。まだ顔は真っ赤に違いない、頬が熱っているのが分かる。シンスーはヨンジエの膝の上に対面に座ると、音を立ててキスをした。
    「可愛いヨンジエ、僕の為に色々揃えてくれたんだね、折角だから使ってみようか」
     ほら、こんなの良くない? とシンスーが手にしたのは、猫の尻尾がついたモノだ。それを尻のあたりに当て、ふりふりと振っている。そんなシンスーの姿に、一瞬動悸が早くなるのが分かった。物凄く可愛い。もしかしたらこれは怪我の功名かも知れない。思わず、可愛い、と呟けば、シンスーが嬉しそうに目尻を下げた。
    「ハードなのはちょっとアレだけど、これは可愛いよね」
     じゃ、早く服脱がせて、と囁きながら上目遣いでねだるシンスーにキスをすると、ヨンジエは彼のズボンに手を掛ける。そして徐々に熱くなっていく互いの吐息を感じながら肌を重ねていく。今晩はいつもと違った長い夜になりそうだ。ヨンジエはそう思いながら、シンスーの豊満な胸に顔を埋めるのだった。
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