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    黄金⭐︎まくわうり

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    黄金⭐︎まくわうり

    PASTHistory4 永幸CP
    台湾ワンドロ お題・誤解
    誤解 集中力切れた、と思わず呟くと、手に持っていたペンを机へ放り投げる。もう何時間机に向かっていただろうか。論文の提出期限まで後数日。あともう一歩と言う所で煮詰まってしまった。ヨンジエはぐったりと机に突っ伏す。そして暫くしてゆっくりと立ち上がると、ドアへ向かう。
     ヨンジエには、ヨンジエ流のストレス発散方法があった。それは間違い無く、ヨンジエのみ有効な方法だろう。ぼうっとした頭で自室を出ると、そのままシンスーの部屋へ入っていく。今は平日の昼間、シンスーや両親は仕事に行っていて家にはヨンジエ一人だ。シンスーの部屋へ入ったヨンジエは、ベッドに脱ぎ捨ててあるシンスーの寝衣をおもむろに掴むと、そのまま顔を埋め、思い切り息を吸う。身体中に広がるシンスーの香り。まるで麻薬のような感覚に、ついうっとりとしてしまう。ヨンジエのストレス発散法と言うのは、シンスーの香りを嗅ぐ、と言う事だった。ヨンジエにとって、シンスーの香り程リラックスできるものはない。彼の香りを嗅ぐたび、彼を身近に感じられる。それが何よりの精神安定剤だ。とは言え、家族の前ではこんなことは出来ないので、誰も人がいない時限定である。ヨンジエはベッドに腰掛けると、シンスーの寝衣を抱き締める。癒される気持ちと共に、少しの寂しさも感じてしまう。シンスーが帰宅するまで後四時間。早くシンスーに会いたい。そして、両親に隠れて少しだけ抱き締めよう。論文作成でストレスを抱えているヨンジエだ、少し抱き締めるぐらいは許されるだろう。
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    黄金⭐︎まくわうり

    PASTHistory4 呈仁CP
    台湾ワンドロ お題・嘘
     リーチェンと喧嘩をした。予定をダブルブッキングされたのだ。百歩譲って、日程を間違えていた事は良しとしよう。問題はその内容である。
     こっちは前々から行きたかったフレンチを予約し、指折り楽しみにしていたと言うのに、いざリマインドをしてみると、その日は大学時代の女友達数人と会うと言う。以前そんな話を聞き、許可はしていたのだが、まさかダブルブッキングされているとは思いもしなかった。ムーレンの方が先の約束だった為ごねてはみたものの、その友人が遠方から来るからと言って、ムーレンの方の約束を反故にされたのだ。
     仕方ないと言うのは分かる。数年ぶりに会う友達と、いつでも行けるフレンチとでは、どちらが優先順位が高いかは自ずと分かってくるし、ムーレンとて理解できない訳ではない。ただ、女性との約束を優先された、と言う下らない嫉妬なのだ。リーチェンが女性と浮気なんてする訳がないと分かってはいるものの、何とも言えないモヤモヤとした感情がムーレンの中で燻っている。下らない嫉妬をしているな、と自分でも思うものの、どうもリーチェンが許せなくて数日間冷戦のような状態で過ごしている。
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    黄金⭐︎まくわうり

    PASTHistory4 呈仁CP
    台湾ワンドロ お題・笑顔
    笑顔「あいつ……マジ鬼かよ……」
     誰もいない事務所で、足元にあったゴミ箱を思い切り蹴る。派手な音と共にゴミ箱が転がり、中のゴミが床に散らばった。暫くこの惨状を眺めていたが、掃除してくれる人間など居らず、軽く舌打ちしながらのろのろと椅子から立ち上がると、ゴミを一つ一つ拾ってゴミ箱の中に戻す。惨めだ……とひとりごちて、リーチェンは椅子に背を預け天井を眺めた。
     前職を退職して、何となくブライダル業界に転職して半年、定時で帰れることなどないに等しい。ブライダル業界には綺麗な女の子がいるに違いないと言う期待通り、実際綺麗な女子社員もいるのだが、こう毎日残業ではデートにも誘えない。それもこれも、リーチェンの指導係である、トン・ムーレンのせいだ。これぐらいこなして貰わないと困る、と容赦なく仕事を振ってくる。自分とさほど歳は変わらないし、業務に関しても数年の違いだが、テキパキと仕事をこなしていく彼はかなり仕事ができるのだろう。ただ、その仕事量を自分基準で考えているのか、厳しさも半端ない。今日も今日とて、慣れない業務でてんてこ舞いだった上に、昨日作成した資料に不備がある、と突っ返された。明日までに再提出しろよ、と言う言葉を添えて。
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    黄金⭐︎まくわうり

    PASTHistory4 呈仁CP
    台湾ワンドロ お題・嫉妬
    嫉妬 最近、リーチェンがうざい。いや、リーチェンがうざったいのは、今更始まったことではない。
     リーチェンが常に恋人といたいと思う人間であることは以前からも知っていたし、付き合い初めの頃はそれも嬉しいと思っていた。ただ、そんな状態がずっと続くと、好きな相手でも少しは疲れると言うものだ。
     例えば、ムーレンが休日に出掛けようとすると、行き先は必ず聞いてくるし、可能であれば付いて行きたがる。彼自身が出かける場合も、必ずムーレンも一緒に連れて行こうとする。平日はいつも昼食を一緒に取る予定にしているのだが、職場の付き合いで一緒に取れなかったりすると、ヤキモチを焼いてムーレンを困らせる。リーチェンは常に、恋人と一緒にいたいのだ。ムーレンとて、恋人と一緒にいる事は幸せだと思うし、出来れば離れたくないとは思う。ただ、リーチェンとはその度合いが違うのだ。そもそも、ムーレンは群れるのが好きではない。どちらかと言えば自分一人の時間が少しでも欲しいタイプなので、ただでさえ職場も家も同じ二人だ、いくら自分の恋人とは言え、始終一緒にいる事に若干の苦痛を感じてしまう。
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    黄金⭐︎まくわうり

    PASTHistory4 呈仁CP
    台湾ワンドロ お題・涙
     久々に同居人三人でしこたま飲み、他の二人が寝た後も何故か寝付けず、ムーレンは一人リビングに残りビールを片手に映画を観ていた。
     映画と言えば、ほぼホラー映画しか観ないムーレンだが、この時はホラーを観る気にならず、適当にザッピングした映画をただぼんやりと眺めている。暫く見ていると、この映画が数年前に流行った恋愛映画だったことを思い出した。当時は全く興味がなく観る気など一切なかったが、たまたまとは言え、観てみると意外に面白い映画だった。ありきたりなストーリーではあるのだが、俳優の演技が上手いのか、脚本がいいのか、つい夢中になってしまっている。
     そしてふと、暫く恋愛なんてしてないな、と自分に重ねてしまう。自分に恋人がいたのはいつだったか。ここ数年は仕事が忙しく、厄介な新人も入ってきていた為、恋愛なんてする暇がなかったと言うのが正しいかも知れない。ムーレンとて、恋愛願望がない訳ではない。素敵な女性がいれば恋愛をしたいとは思う。ただ、今はそんな人が居ないだけで。映画の中の主人公たちが切なくも幸せな恋愛をしているのを見ると、羨ましい気持ちと、少しだけ寂しい気持ちになる。ムーレンはその小さな感情を流すように、もうすでに温くなっているビールを一口口に含んだ。
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