047.つまるところ僕は、君が、好きだった。 その感情は、気づいたときにはとうに芽生えていた。花が咲くほど、実がつくほどには育っていなかったけれど、毎日の水やりや暖かいお日様を存分に注がれた種はきちんと芽を出し、つやつやと日差しを反射する水滴を通して輝く緑は色鮮やかで目に眩しいほどだった。これからも枯れることなく立派に育ちきるだろうと誰もがそんな都合のよい予感を抱くような命の色は力強く、故に冨岡は、ただまっすぐに考える。
(……知られたくない)
密やかに声を落として、目をつぶる。
心に芽生えた感情に罪はないし、それを知らぬ間に育てていた冨岡自身にもまた罪はない。けれども恋は罪悪だった。少なくとも当時の冨岡にとって、よりにもよって彼女に向けたそれこそが悪い行いの形を成していた。
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