初冬長い髪を指で巻き取ってみる。
御神苗は眠たくなるまでジャンの髪の毛で遊んでいた。本人とは真逆にしとやかな髪はひやりと冷えている。それを一束顔に乗せれば、自分と同じシャンプーの匂いがした。
布団の外はすっかり寒くなっていたが、ストーブに手を伸ばすことすら億劫だったので、二人はお互いの体温で暖を取っていた。ジャンの方は御神苗を無視するかのように布団に潜り、ベッドから足が出ないよう猫のように丸くなっている。
さっきまでの汗が体温を奪いながら乾いていく。風邪をひいてしまうかもしれない。御神苗が身震いするのを感じてか、ジャンは御神苗に多めに布団を譲った。伸びてきた腕をすかさず掴んで、ジャンの体を抱きしめてみる。
「なんだよ?」
返事をせずに脚を絡めれば、向こうも絡め返してくる。寝ぼけているフリをして、御神苗はジャンの腕の中に収まった。ジャンの鼓動が時間の流れを教える。次第に意識が重たくなって、ベッドをすり抜け床の下まで落ちていった。眠りたくなかった、確実にここにいる「今」をもっと過ごしたい。明日になれば何処へ行くかも分からぬ身だ。
ぴん、と指に違和感がして目を覚ます。
「いて。」
指先に絡めた髪がジャンを繋ぎ止めていた。
「おー、起きたか?さっさと準備しようぜ。」
髪を乱暴に引っ張って外してから、彼は部屋を出て行ってしまった。御神苗は背伸びをして散らかった部屋を見回した。
極稀にある、望んだ時間の延長戦。
今回はあと数時間は一緒に居られそうだな。
御神苗はジャンが顔を洗う音を聞きながら、ベッドシーツを剥いだ。
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ワンドロ
甘えたいときに素直に甘えられるのは御神苗よりもジャンの方ではないか?と思う。
御神苗は我慢しちゃうんじゃないかな。秋葉は上手く気づいて「どうしたの?」って頭を撫でてくれる。姉というか母親の役割ですね。
ジャンに察する力は無いので、軽くちょっかいを出してから許してもらう形で甘える。
身も心も受け入れられたがる御神苗少年の、前に出せない欲と執着をとことん許してあげるジャン。たまにこんな感じになるととても嬉しいなぁ。