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    6daimekouho

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    6daimekouho

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    拳士な姉を持つ弟の気苦労

    女性拳士として最後の将、ユリアに仕えているシュレン。
    姉星と共に戦うヒューイ。
    切磋琢磨し支え合ってきた姉弟。
    女性として振る舞われる事を好ましく思わないシュレンともっと自分の体を労わって欲しいヒューイ。
    とても仲の良い姉弟だが、お互い恋愛には鈍感なところがあり、周りから見ればあからさまなのに自分自身ですら気づいていないところがある。


    ある日の五車星会合に将も参加することになり、いつもの気まぐれでジュウザも参加することになったものの会合目前で姿を消してしまい探しにきていたシュレンが拳王軍の偵察部隊を見つけ、拳王軍に見つかる前に物陰に隠れていたジュウザに引っ張りこまれ間一髪見つからずに済んだ。

    しかし体勢を崩してしまった為ジュウザに抱き着く形で隠れることになってしまう。
    お前の赤は目立つ。と崖側に立たされ、シュレンを隠すように覆い被さる形で息を潜める2人。
    その場をやり過ごすことは出来、「すまない、助かった。」と一言礼を言うもののなぜ会合間際に姿を消すんだとお説教が始まった。

    口うるさくジュウザに説教をするシュレンに
    「そんな怖い顔ばっかしてっとモテねぇぜ?もっと色気のある格好すりゃいいのに」
    とのらりくらりと反省の色はなし。
    「私を女扱いするな!だいたいおまえは…」とまた説教モードになってしまい、やれやれとどこ吹く風なジュウザ。

    「俺は小ぶりでかわいい女のしりが好きだ。が、大きめでも引き締まったお前さんのしりもなかなかいいと思うぜ。割といい体してるしよっ」
    とシュレンのしりをムニィとつまむ。

    シュレンと2人っきりになることなんてほぼ、確実に、無い。なんせずっとあの弟星が片時も姉のそばを離れないからだ。
    そのため今のこの状況の物珍しさからちょっかいを掛けたくなった。
    そう、雲の気まぐれだ。やってる事はただのセクハラに過ぎないが…

    ジュウザとしてはある程度シュレンを煽ってこの場から逃げるつもりだった。
    しかし、予想していた怒号は飛んでこず、ふとシュレンの顔を見ると耳首まで真っ赤にし、口をパクパクと動かし激しく動揺していた。

    「えっ」

    男っ気のない女拳士の『女の顔』を初めて見たのだ。しりを掴んだ手を離すに離せなくなった。



    「そこで、何をしている。」



    そんな所へ、なんというタイミングでしょう、弟星風のヒューイ登場。

    「お前を探しに行った姉者がなかなか戻ってこないからと探しに来たが…。将がお待ちの中、こんな人気のないところで、一体、なにを、しているんだ?」
    あからさまに機嫌が悪いヒューイにどうからかってやろうかと考えるジュウザ。

    「すまないヒューイ。近くを拳王軍の偵察隊が通ったもので少し身を潜めていたんだ。遅くなってしまったこと、大変申し訳ない。」
    遅くなったことに怒ってるわけじゃないと思うんだがなぁと思いながらもコイツらにこんな所で手を貸す義理はねぇなとジュウザは何も言わず黙っていた。

    「姉者。こんなフラフラとだらしの無い男と長居は無用だ。さっさと戻ろう。」
    「あぁ、そうだな。だが、今回はジュウザの手柄なところが多い。そう邪険にしてやるな。な。ヒューイ、そんな怖い顔をするな。」
    女性としては高身長なシュレンだが、ヒューイやジュウザには到底及ばない。
    とうの昔に身長は越されるもシュレンの中ではヒューイはかわいい弟なのだ、姉として構いたくなるし世話も焼きたくなる。これは女性としてでは無く姉としての性だと言い聞かせている。

    優しく頭を撫でてやれば、シュレンの前でだけヒューイは顔が緩む。
    どんな時だって姉にはかなわないのだ。
    「姉者。子供扱いしないでくれ…」
    とは言いながらも満更でもないオーラがダダ漏れである。
    よし。と優しく微笑むシュレン。
    2人が『2人だけの世界』に入っている隙にその場から消えようとするもシュレンに捕まりそのまま会場へと戻ることになる。

    ━━━━━━━━━━━━━━━

    会合後何かにつけて女扱いしてからかってくるジュウザをギャフンと言わせようと手合わせを申し出るシュレン。
    それは面倒だから嫌だと断るジュウザ。

    「はい」と言うまで付きまとうぞとニィッと笑いからかい返す。
    また弟が出てくると面倒だとその場を離れようとするが「私がなだめるから問題ない」と引かないシュレン。
    「なだめるって…そんな歳でもねぇだろアイツ。まぁいいぜ。だが…」
    折れるもただやり合うじゃ面白くないからと賭けを提案する。
    内容や限度によるとわりと乗り気なシュレン。

    「ここにこの前モヒカン共から拝借したいい酒がある、俺もまだ飲んではいないがなかなかの上物だ。お前が勝ったらこれをくれてやる。んで、俺が勝ったらお前さんが女物の服きて俺にお酌するってのはどうだ」
    と自慢げに提案する。
    「誰がそんな提案に乗るか!私への利点が少ないし、大体酒はあまり飲まない。ダメだ他のにしろ」
    と断固反対する。

    「そうだよなぁーこんなフラフラしたよく分からない男に負けたとなっちゃぁ五車星のシュレン様の面目立たないもんなぁー。酒だって飲めないのに無理に飲んで大好きな弟の前で恥じかきたくないもんなぁー」
    あからさまな挑発をするがさすがに乗ってこないだろうと思いきや割とプッツン来ていたようで
    「いいだろう!貴様なんぞに遅れをとる私ではない!目に物見せてくれる!!」
    ちょっとちょろ過ぎて頑張ればヤれるんじゃないかって思ってまったが物珍しさに簡単に手を出すもんじゃねぇなと冷静になった。


    まぁ割と本気の打ち合いするも、ちょっと頭に血が登りすぎたシュレンがミスってジュウザに敗北する。
    その爆音を聞きつけたヒューイが慌てた様子で現れた時には決着が着いていた。

    「な、何をしている貴様!!」
    「おっと。騎士(ナイト)様のご登場だ。」
    「ヒューイ。これは同意の上での手合わせだ。私が負けたのも事実。お前に口は出させないぞ。」
    「姉者はまた1人でなんでも決めてしまう…。俺はただ姉者が心配なんだ。どうしてこんな奴に構うのだ。」
    「こんな奴だなんてひっでぇなぁヒューイくんっ。」
    滅茶苦茶ガン飛ばすヒューイ。
    予想通りすぎて面白くなってくるジュウザ。
    割と凹んでるシュレン。
    「さぁてシュレン。約束を果たしてもらおうかねぇ。」
    シュレンの肩に腕を回すジュウザ。
    バツが悪そうだが拒まないシュレン。
    「姉者に触れるな!」
    「ヒューイ!騒ぐな。これは私の問題だ、口を出さないでくれ。」
    「あ、姉者…」
    もう呆然。
    「あのシュレンがどうもてなしてくれるのか楽しみだなぁ~。早速今夜頼むとするよ。」
    「分かったから肩を抱くな……。それと期待もするな…。お前が求めるようなものは出ては来ないぞ。」
    「そう照れるなよ。案外お前も可愛いとこあんだな。」
    ぷにぷにと頬をつつく。
    「お前な…」
    ハァ…とため息がこぼれる。

    そのため息は急に辺りに吹き荒み始めた風によってすぐに掻き消えた。

    (「お前も案外可愛いとこあんな」

    「案外」「可愛いとこ」「あんな」

    「案外」

    「可愛い」

    だと…)


    「ジュウウウウウザアアアアアアア!!!」
    血が垂れるほど強く握った拳は開かれ、ヒューイはジュウザ目掛けて手刀を振り下ろす。
    予想はしていたジュウザはスっと避ける。シュレンの呼び掛けにも止まらぬ、怒涛にジュウザに攻撃を仕掛けるヒューイ。本気の殺気を放ち、本気の拳をジュウザに向ける。ヒューイの攻撃は我流の拳によって流され続けるも臆する事も辞める気配はない。

    「………。(こいつ、こんなにムキになってるのに無自覚なんだよなぁ。姉弟揃ってこの鈍感、そんなとこ似なくてもいいだろ。まぁ、そのムキになる気持ちは分からんでもないがなぁ)」

    そんなことを考えているとシュレンが間に割って入ってきた。すんでのところで手刀を止めるヒューイ。

    「どけ姉者っ!!!この不届き者をこのまま野放しにはせん!!」
    「お前は口出しするなと言ったはずだっ!これは私とジュウザの問題だ。賭けに負けた私の責任。自分の後始末ぐらい自分でつける。」
    「賭けだと!?貴様、姉者を唆しっ」
    「いい加減にしろヒューイ!これ以上私に恥をかかせるな!」
    「俺の行いが恥だと言うのかっ!俺は姉者のことを思いっ」
    「誰も頼んではいない。姉の言うことを聞け。部屋に戻っていろ。」
    「ぐぅっ!」
    はちゃめちゃに険悪なムード。
    こいつら言葉足りなさすぎだろと面倒臭そうな顔をしてひと段落着くのを待っているジュウザ。優しい(?)。

    「面倒な弟星(おとうと)くんだねぇ。お兄さん萎えちゃったよ。」
    「む。気分を害すような真似をしてしまい申し訳ない。」
    「━━━ッ!!」修羅の顔してるヒューイ。
    「いや、もういいぜ。今回の話は無しだ。」
    「ジュウザ待ってくれ。弟がすまない、私からもっと言い聞かせておく。今回のツケは必ず返させてもらう。なんでも言ってくれ。酒なら用意させよう。」
    「姉者!だからそういう所だと俺は言っているんだ!!」
    「「何でも」と言ったな?」
    「あぁ、言った。」
    「そうさねぇ…」
    「ジュウザ!姉者になにかしてみろ、俺が地獄の底までお前を追いかけ続ける!必ず後悔させるぞ!!」
    「キスしてくれ。」
    「「っ!」」
    「ヒューイに。」
    「「俺/ヒューイ に!?!?」」

    その場の空気は一変した。

    「シュレンに『俺(ジュウザ)が』なんかしたら地獄の底まで追いかけてくんだろ?そんな面倒なことはごめんだぜ。俺は何にも縛られず自由に生きたいんだよ。だから、『俺(ジュウザ)』じゃなくて『お前』な。ヒューイ♪」

    「はっ、なっ、いっ、てっ、え?」
    うまく言葉にならないヒューイ。

    「さぁ、いつでもいいぞシュレン。ヒューイにお前の唇が触れさえすればいいんだ。な、簡単だろ。ほらほら、オレの気が変わらねぇ内にスっと終わらせないと次はどんな無茶が飛んでくるか分からないぜ?」

    先程の堂々としたシュレンは存在せず。顔は地面ばかりを向き、ソワソワモジモジと居心地悪そうにしている。顔は見えないものの耳や首は真っ赤に染まっていた。

    ヒューイはというと、動揺、戸惑い、期待、抑止、様々な感情で身動き取れずにいた。
    静寂が当たりを包み、甘い緊張感が張り詰めている。


    1歩を踏み出したのはシュレンだ。
    いつもの何分の一かという小さな歩幅で険しい道を進むかのようにゆっくりと重い足が進んでいく。

    そんなに2人の距離は空いていないのに、なかなかたどり着かない。

    姉の顔には少しの覚悟が見え、弟は決心つかず狼狽えて少しばかり後退した。

    そんな弟に追いついた姉は弟の手を割れ物に触るかのように繊細に取り、その手を握ったまま自分の唇を弟の唇へとくっつけた。
    その手は弟を逃がさない為に…


    数秒数分数時間、時間の感覚なんて狂ってしまったヒューイはどれほどの間姉と唇を重ねていたか分からなかった。されるがままのヒューイはシュレンが唇を離した後も呆然と立ち尽くしていた。

    シュレンは弟に声を掛けることも、ジュウザの方を振り返ることもせず走って部屋へと戻っていった。

    ジュウザは驚いていた。あえてキスをする場所を指定せずやらせてみたらまさかこんなことになるとは思わず。手、ないし、頬あたりかと思っていた。
    (まさか。そんな。ねぇ。流石の俺も予想外に動揺が隠せなかったがこいつは…滅茶苦茶面白い事になった。大満足だぜ!)との事。


    一向に動かないヒューイに、
    「お兄さん。ここにうまい酒があるんだが一杯どうだ?」
    と持ちかけ、今度はヒューイの肩を抱くジュウザ。
    ヒューイは重い足を引きずりジュウザと共に部屋をあとにする。

    その晩はヒューイによるシュレンとの思い出や好きな所、やめて欲しいこと、心配なこと、色んな話を魚に飲み明かした。
    ヒューイは二日酔いになった。
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