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    6daimekouho

    @6daimekouho

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    6daimekouho

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    遅刻したキスの日の判南。
    SSにしようと思ったのに長くなってしまった…。

    判南でキスの日「いっ」
    最近唇が乾燥して薄く皮がめくれて引っかかることが増えていた南方の口の端がとうとう切れた。

    表の仕事と賭郎の両立は段々と慣れていたが、現在進行形で表の方で大きなヤマを抱えており、多忙を極め、食事や睡眠がまともに取れていない状況だった。自分も歳をとったとしみじみ思っていた。
    何より、元から少なかった恋人との時間も増して減ってしまった事もあり、仕事が忙しいことを言い訳に身嗜みを少し厳かにしすぎたと反省していた。
    男だからと周りの目を気にすることなくリップクリームを使える世の中になったことはとても有難いと思いながらこの後の予定を頭の中で整理する。

    先日行った立会の報告書を提出するために庁舎から出る必要があった為、途中コンビニでも寄ってリップクリームを購入しようと思い、南方は直ぐに身支度をし庁舎を後にした。




    コンコンコンと響くノック音。
    直ぐに扉の奥からしっとりとした低音の落ち着いた声が返事をした。
    失礼します。と言い南方は部屋に入る。
    黒く艶のある使い込まれた皮のチェアに深く腰をかけている部屋の主が顔を上げ、彼の瞳が南方を捉えた。

    "判事"と呼ばれるその人はその名の通り賭郎の秩序そのもの。そんな彼と南方は恋人同士だ。
    「この歳にもなってこんなに浮かれる恋をするとは夢にも思わなかった。」と内心いつも驚いている。しかも、相手があの"判事"である。相手はいくらでも選べるような人が自分を選んでそばに置いてくれていることが今でも嬉しい。最近では少し判事の表情が分かるようになってきたかもしれないと南方は浮かれていた。
    そんな時に表の仕事が立て込んで二人の時間もなかなか取れなくなってしまった。事務的にただ報告書を提出するだけなのに、少し顔を見れば、言葉を交わせば、満足して仕事に戻れる。と思っていた。そう思いたかった。でも、耐えられないかもしれない。だってあの人が、棟耶さんが、優しく俺の名前を呼ぶから…。と南方は奥歯を噛み締める。

    「どうした。」
    「エッ、あ、いえ、すみません。
    これが先日行った立会の報告と以前気になると仰っていた会員を警察側でも調べた結果、気になるところがありましたのでそれをまとめたものです。確認お願いします。」
    「わかった。」

    ファイルを渡す時に軽く指が触れた。わざとなのか偶然なのかは分からないが、この人の事だわざとだろうと触れたところが熱を持っていくのを感じていた。
    そんな事を悶々と考えながら、判事が確認するのを待つ。

    「報告書の方はこれで問題ない。こちらのファイルに関しては有難く使わせてもらう。助かる。」
    「いえ、これも私の役割ですから。」
    そんな事は建前。忙しい中合間を縫って調べたのは判事に褒めて欲しかったから。そういう下心があっての事だ。自分がどれだけ判事に必要とされたいと思っているか、呆れほど必死だと南方は思った。

    そして渡すべきもの報告すべき事を終えてしまった為この部屋にいる理由がなくなってしまった。
    後ろ髪引かれる思いだが、これ以上ここにいると我慢が出来なくなると判断し「では」と一礼し入ってきた扉へ向かおうと背を向けると「南方」と呼び止められた。

    名前を呼ばれたことで少し身体が強ばり振り返るのが少し遅れた。
    振り返るといつの間にかこちらに向かって歩いてくる判事が居た。期待する心音に耳を背け「どうされました?」と問いかけようとする唇を塞がれた。驚き、見開く視界いっぱいに恋人の顔が写る。

    短い口付けは離れたくないという心情を表したのか、それとも事前に塗っていたリップクリームのせいか、相手の唇にギリギリまで離さなかった。

    間近にあった顔が離れていく。

    驚きで動けない南方を他所に、判事は左手を南方の頬に添え、親指で唇を撫でる。

    「珍しいな、お前が香料入りのクリームを塗るのは。甘いな。」
    「あ、や、その…。」
    心臓がバクバクと激しく脈打つ。

    どこにでもあるだろうとたかを括り、本部に一番近いコンビニに寄ったところ無香料のリップクリームがなかった。他のコンビニに寄るのもドラッグストアを探す時間すらも惜しく思った南方は賭けに出たが、どうやら負けてしまったようだった。
    確かに蓋を開けた瞬間に広がる独特の甘い香り。しかし、香水やタバコに混じって分からないだろうと思ったが直ぐにバレてしまった。判事相手に妥協は身を滅ぼすと実感したが、そう思考をしている暇を与えては貰えなかった。

    ゆっくりと腰に回される腕。正面から抱かれ、触れる面積が段々と広くなっていく。
    力を入れて捕らえている訳では無いのに南方は判事の腕の中から動けなかった。その先をどうしても欲する自分を抑止出来なかった。

    「目は口ほどに物を言う。今そんな状態だぞ。」
    「判、事」
    「この後も表の仕事が残っているのだろ。忙しい合間の息抜きとしてここに来たのか。それとも、私に会いたかったのか?」
    「っ!」
    南方の眼が泳ぐ。
    判事はそれを肯定だと受け取った。
    「忙しい恋人を少し労おうか。」
    そういって判事は腕に力を入れ、南方を強く抱き寄せた。
    「お前が今一番して欲しいことをしてやる。どうして欲しい?」
    ん?と小首を傾げる歳上の恋人に胸のトキメキが止まらないがそれに伴って蓋をしてきた欲望が溢れ出てきた。だがまだ理性がそれを押さえつけ、なんとか保てていたが恋人の問いかけに答えれば、理性は欲望の波に押し流される事が明白だった為南方は口を開くことが出来なかった。

    威厳の欠けらも無い、助けを求めるような潤んだ瞳で此方を見つめる歳下の恋人の固く閉ざした唇に数度触れるだけのキスをする。リップクリームの力を借りてわざとらしく音を立ててやると控えめに背中に回された南方の手に力が入っていく。

    南方の唇を味わった後、今度は耳元までその口を運び幾度と混じり合う度に囁き、身体に覚えさせた甘く低い声で
    「恭次」と名前を呼べば
    「棟、耶、さん…」とベッドの上で縫い付けられ、揺さぶられている時と同じように鳴く。

    今日中に庁舎へ戻ることを南方は諦めた。
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