「 ……ゲン君、よくそのお花使ってるね。お気に入り?」
タネの仕込み中にふいに問いかけられて、振り返る。
「 ああ、杠ちゃん。うん、そうお気に入りなの。イヌホオズキの花だよ」
花の名前を聞いて、杠は得心したような顔で笑った。
「 イヌホオズキ!……ゲン君にぴったりだね!」
……イヌホオズキの花言葉は『嘘つき』。たしかにこれ以上、自分にふさわしい花はないだろう。
しかし、詐術の対象ではない相手にまで無邪気に肯定されると、多少複雑な気持ちにはなる。
「 あはは、でっしょ〜?嘘つきの俺にぴったり」
おくびにも出さず笑い飛ばして見せるが、今度は杠が不思議そうに首を傾げた。
「 うーん?ひょっとしてゲン君が知ってるのと私が知ってる花言葉、違うのかも。
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