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    Qakimiya

    @Qakimiya

    よそのことうちのこ描いてます
    (圧倒的よそのこファンアート)

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    Qakimiya

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    データ飛ぶ恐れがあるのでここに置いていく

    前編

    エンディング ナチュラルエネミー─人類は人類の餌食であるように─


    ─人類は人類の天敵である─







    暗い部屋に煌々と光る小さなモニター。その画面に映る男女のやり取りを見ていた人物は面白いおもちゃを見つけたように広角を上げながら、録画終了のボタンを押した。


     
    ────


    オクサリスがオルカ旅団に入って1ヶ月くらいたった頃。オルカの本拠地である旧GA本社ビッグボックスではシミュレータを使い旅団内の格付け試合が行われていた。
    一機は目隠しの女性のエンブレムが印象的な逆間接のネクスト【リザ】と特徴的な腕部マシンガンを持つ、リンクスの顔に似せたエンブレムの【ストレイド】。砂漠ステージに高速で打ち込まれる弾丸が突き刺さると砂塵が舞って視界が悪くなった。オマケにレーダーの邪魔をし、まるでECMのようだ。
    それを回避するためにリザは100m上空へ飛び上がると砂塵で見えなくなった地面へミサイルを叩き込む。
    衝撃音で着弾を確信したリザはしばらく様子を伺おうとした─そのとき、晴れていく砂塵の中から三連ミサイルが連続発射され、油断していたリザを爆炎が包み込んだ。

    途端に画面中央に表示されるYOU LOSTの赤文字と警告音。

    それに驚き硬直していたリザのリンクスであるオールドキングはため息ひとつ溢してからシミュレータの接続をきった。
    コクーン型のシミュレータのハッチを開けると、隣に並んだもうひとつのシミュレータの人物に声をかけた。

    「やるじゃねえかお前。女だからってナメてたぜ」

    出て来たのは薄金色の髪を持った一見少女のような出で立ちのリンクス─オクサリス─は笑顔で応えながら右手を差し出した。

    「オールドさん、対戦ありがとうございました!キングさんとっても強かったです。…怖かった」

    差し出されたオクサリスの手を見て、オールドキングはズボンで軽く手の汗を拭ってから握手を交わした。

    「強い奴だけが生き残る。ここでは強さが全てだ。覚えとくんだな」

    「はい!誰よりも強くなってみます!ありがとうございます、頑張ります!」

    「ああ…………それと…」

    皮肉った言い方が通じず肩透かしにあったが、それでも現状オクサリスの強さを認めているオールドキングは柔らかな彼女の手をグッと引き寄せ、端から見れば抱き締めてるかのような態勢にもちこむとそっと耳元で囁いた。


    「団長とオペレーターは信じるな」


    オールドキングの突然の行動と囁かれた事に混乱したオクサリスはポカンと口開けたまま突っ立って動けなかった。
    口を開けた間抜けな様子のオクサリスに怪しく笑むとオールドキングは部屋を出て、鼻歌混じりに薄暗い廊下に消えていく。
    気がついたら一人になっていたオクサリスはよくわかってないままいそいそ退室すると廊下の向こうから見知った人物が歩いてくるのが見え、オクサリスは手を降った。

    「お姉さん!お疲れ様です」

    「ああ。オクサリス…おまえもお疲れ様、シミュレータで訓練でもしてたのか?」

    「いえ、オーダーマッチをしていました」

    お姉さん。オクサリスのオペレータであり彼女と共に最近オルカ旅団へ入団したセレン・ヘイズは「誰とだ?」と
    聞きながらオクサリスの横へ来た。「キングさんです!」オクサリスが返すとまるでUターンするようにセレンはオクサリスとともに来た道を引き返す。セレンの行動を不思議に思い質問すると、「見当たらなかったから探していた。勝手にいなくなったと思い心配した」と保護者のような発言にオクサリスはつい嬉しくなった。

    「オクサリス…」

    「ん、なんですか?」

    「あぁ、いや……何を言おうとしたか、忘れてしまった。すまない」

    「えぇ~お姉さんでもそんなことあるんですね。ちょっと可愛いかも」

    いつも完璧なセレンの珍しい姿につい可愛いと漏らしたが、セレンからは特に言われることもなく会話は続いた。

    「…ああ!思い出した飯いこう」

    「ふふ、そうですね。ご飯行きましょう!お腹ペコペコです」

    先ほどのオールドキングの言葉と、いつもより様子が違うセレンに不安な気持ちを持ちながらもその事は気にしないよう流して、オクサリスはセレンと共に食堂へ向かっていった。





    ───

    Prrrrprrrrr…

    よう首輪付き。オールドキングだ

    クレイドル03を襲撃する
    付き合わないか?

    ORCAの連中、温すぎる
    革命など結局は殺すしかないのさ
    だろう?

    …返事はすぐに聞かねぇよ

    ま、これでも見てくれ
    決心したら俺の部屋へ来い


    お前の為だ──待ってるぞ







    オールドキングからオクサリスへ可笑しな依頼が来た。それはORCA旅団が止めようとしてるクレイドルを襲撃しようというもの。一見旅団が目指す目的を達成するための依頼に聞こえるが、旅団はクレイドルそのものを破壊する気はなく、あくまでもクレイドルを活動停止に陥らせその支配態勢を終わらせること、天に人を立たせないこと、地上でもう一度やり直し共に宙を目指し星を見上げよう。というマクシミリアンの浪漫に溢れた夢が旅団の目指すところである。

    これはマクシミリアンの、ORCAの意向に反した依頼であることはすぐに理解できた。オクサリスは断ろうとしたが、添付されていた動画が気になり、怪しみながらも─好奇心に負け─動画を再生した。





    ─────



    二人、男と女が暗い廊下を歩いていた。カメラの端には一昨日の夜の日付が記載されている。
    二人は突き当たりの部屋に入ると、カメラが室内のものに切り替わった。

    室内のカメラは廊下のものより高性能なようで、男女の顔も声も鮮明に写し出している。
    女のほうは見知った顔、オクサリスのオペレータであるセレン・ヘイズ。
    男のほうも見知った顔である、旅団長でありオクサリスの想い人、マクシミリアン・テルミドール。

    セレンは入室するとマクシミリアンのいきなり胸ぐらを掴みかかり我鳴り立てた。

    「あの子に一体何をした…オッツダルヴァ!」

    「随分と積極的だな。セレン・ヘイズ。それとも霞 スミカと呼ぼうか?」


    オッツダルヴァ─マクシミリアンの偽名─は、オクサリスすら聞いたこともない名でセレン・ヘイズを呼んだ。霞スミカ…聞いただけでは有澤支配下のコロニーに由来するような名であろうか。オクサリスの胸に不安が揺らめきたつ。
    荒々しくマクシミリアンに問いただすセレンは焦っている様子だ。

    「貴様らのせいであの子が殺しを楽しむようになったんだぞ…!!」

    セレンの言うあの子が自分のことであると、そして自分がこの二人のやりとりの原因であると察し映像にますます食い入った。

    「彼女は傭兵だ。殺しに何を見いだすかは自由だろう。それともなんだ?私がやらせたとでも?いいや、私は“殺しを楽しめ”なんて指示は出していない」

    マクシミリアンの言い分は実に正しかった。オクサリスは任務を指示されただけで、殺しについては何も言われてないのである。
    全てはオクサリス個人によるマクシミリアンへの心酔がそうさせていた。

    そしてマクシミリアンは淡々と真実を述べる。

    「私はアレをORCAの道具としかみてないからな。忠実に任務を遂行してくれさえすればあとはどうでもいいさ」

    「あの子を騙したのか…糞詐欺師め」

    「騙される方が悪いだろう。お前はもう少しアレに情操教育を施しておくべきだったな。チョロかったぞ」

    セレンに首元を絞められたままでも余裕の表情を崩さないマクシミリアンは冷酷な眼差しを彼女の怒りに燃える瞳に突き刺した。

    「アレはもはやORCAだ。それに彼女を騙しているのは貴様の方だろう?霞スミカ」


    セレンは肩をゆらし明らかに動揺する。

    「図星だな。ならばこちらの番だ」

    マクシミリアンは胸ぐらを掴むセレンの腕を掴み返すと、素早く彼女の腕を捻り上げた。
    マクシミリアンのほうが体格が良いため、彼より小さいセレンは簡単に形勢逆転されてしまう。
    静かになったセレンにマクシミリアンは、はっきりした声で言い放つ。




    “オードリー・ノックス=サイラス”


    「彼女の真の名前だ」

    ────


    オクサリスの心臓は五月蝿いほど激しく打ち鳴り、それに合わせて呼吸も荒くなる。

    「オードリー・ノックス=サイラス…」

    震えながらに復唱する。
    遥か彼方で忘れていた自身の記憶が洪水のように溢れだし、その濁流が忘れていたものを連れてくる。


    幼子が誰かに抱き抱えられてどこかへ連れ出されている。
    父と母は手を降り、小さく小さくなっていく。
    誰かが幼子を車に乗せて走り出す。
    そして幼子の巨大な家が遠くなっていくと同時に真上をすれ違う薄桃色の巨人。

    オクサリスの人生が頭の中で逆流する。
    ORCA旅団、ラインアーク襲撃、リンクス養成所、全寮学校、孤児院…本当の家族。
    そしてその根幹居る、オードリー・ノックス=サイラスの人生を終わらせ、“オクサリス”の人生を始めさせた。

    セレン・ヘイズ

    ……否

    霞 スミカ



    映像は淡々と続き、さらに彼女を追い詰める。

    「国家解体戦争時、企業連合の一派として参加していたサイラスコンストラクションは戦勝後の巨大移動都市の建設を請け負っていた。だが時が経ちリンクス戦争へ突入すると企業同士の潰し合いによる戦闘の被害を受けてサイラスコンストラクションは壊滅。サイラスは全滅した──ただひとり幼い娘を残して」

    マクシミリアンはセレンに何かを投げつけると彼女はそれを見つめ動かなくなった…


    「貴様はオードリー・ノックス=サイラスの仇というわけだ」

    オクサリスはうつむき、もうそれを見ようとはしなかった。


    「推理するに、貴様はオードリー・ノックス=サイラスを探しだし、育て上げることで己の免罪────────



    彼女はそこで映像を止めた。
    もう見たくなかった。
    マクシミリアンの言葉とセレンヘイズの正体に混乱と怒りと悲しみがいっぺんに押し寄せ、飛沫を上げる。
    その飛沫はぱたぱたと彼女の心に返り
    暗く冷たく湿らせた。

    ゆらりと彼女の指がデバイスの電源を力なく切り落とす。


    「……………………」

    画面が暗くなると、オクサリスは黙って部屋を出た。


    ────────


    セレンはオクサリスとの食事を済ませると自室に戻り残っていた事務仕事を消化していた。
    ORCA旅団に来てからも、セレンの仕事はカラードに居たときとさほど変わらなかった。
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