ゆく年くる年バンエレちゃん前編「じょやのかね?」
バンの口から出た聞き慣れない単語にエレインは身を乗り出した。かね、というところになんとなく気を引かれたのだ。金なら不穏、でも鐘ならちょっと楽しそう。
「ほら、商店街の先の寺にデカい鐘があったろ? 」
「あっ、楽しそうな方の【かね】ね!」
「は? まぁいいや、あれをだな、みんなして交代でつくんだ、百八回。何だっけな、鐘をついて何かこう、年内にアレ的なヤツを祓って、来年からスッキリ行こうぜ、的なソレっぽい大晦日の風習だな♪」
「みんなって、お寺の皆で? 大変そうね」
アルバイトでも雇うのかしら、と寺の面子を思い浮かべる。確かあそこに住んでいるのは初老の住職とその家族だけだ。だがバンは首を横に振ってニヤッと笑った。
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